
会社を始めるには法的な書類をたくさん準備しなければならない。出資を集めているのならなおさらだ。今まさにスタートしようとしている会社にとっては、これは当然膨大な時間を要し、深刻な出費にもなる。
シンガポールに本拠を置く Legalese は、法的書類の作成を自動化することでこの悩みを解決しようとしている。弁護士を雇って Word のような従来のソフトを用いて契約書を一から作成するのに比べたら、速くてはるかに安価になる。
同社は本日(1月9日)、41万5,000米ドルを超える「エンジェル投資の確約」を、シンガポールの VC 企業 Walden International 主導のもとで確保したと発表した。
ボットが仕事をする
Legalese は遠大なプランを持っている。Rocket Lawyer や Dragon Law のように法的書類テンプレートの表面上のカスタマイズをするのではなく、Legalese はもっと根本に取り組んでいる。同社は、そもそも法的書類がどのように記述されるべきかを再定義しようとしている。そして、その技術をオープンソース化している。
同社が作成しているのは以下のものである。
- 法的な契約に特化されたプログラミング言語(ドメイン固有言語:DSL)「L4」
- コードをわかりやすい英語(または他の言語)で書かれた法的書類に変換する「コンパイラ」
- DSL で作成されたアプリと、多彩な法務シナリオ(ユースケース)に対応できるコンパイラ。同社の最初のアプリは Google スプレッドシートの形式で配布されており、アーリーステージのラウンドで資金調達を行うスタートアップに向けたものだ。
このアプリはどう使うのか?ユーザはスプレッドシートに書き込んでいけばよく、それで必要な契約書が生成される。
したがって、たとえばシードラウンドで資金を調達しているのであれば、自社の情報、取引している企業などを適切に記載し、資本化のテーブルに書き込めばよい。
そうすると、Legalese は契約書を生成する。同社によれば、自社のボットがこの契約書を PDF 化し、機密保持のためにボット側のファイルを消去するという。人間の操作の介入はない。
同社は e メールで Tech in Asia にこう述べている。
DSL の技術に基づいて Legalese アプリで生成した書類は、オートコンプリートで埋めたフィールドをつなぎ合わせただけの粗悪なテンプレートではなく、より優れたものになります。DSL は Legalese の顧客に、正式で、コンピュータでも読み取り可能な、当事者の意図を反映した書類を提供できます。
つまり、Legalese の書類は正当性や一貫性を内部でチェック可能で、また書類同士が連携することもできます。たとえば、コンバーチブルノート(転換社債)はシリーズ A ラウンドの書類を読んで、それをもとに変換できます。
コンピュータサイエンスと法務の融合がコンセプトの根底にある。そして Legalese はそれをなしえたとしている。Adobe は印刷物のカテゴリーでリーダー的存在だが、同社の最初の製品は Photoshop でも Illustrator でもなく、Postscript、つまり言語である。
弁護士との契約は不要
共同設立者の Ong Chiah Li 氏は次のように述べている。
法的なサービスが必要な小企業のうち3分の2が、弁護士を雇うことができず、自前でやっています。彼らは友人の書類をコピーし、契約書を自分で書いています。しかし、世の中にあるテンプレートを使うことにはリスクがあります。私たちのウェブアプリは機密を保ちながら自分で書類を作成することができます。条件を設定し、内容を確認し、当事者の細目をキャプチャして、PDF を生成します。書類に署名するよう要求することさえもできます。
Chiah Li 氏は以前、シンガポールの Expara-IDM Ventures、 同国最初のスタートアップアクセラレータ JFDI.Asia に勤務していた。
Legalese は JFDI.Asia のペットプロジェクトとして2013年にスタートしたが、2015年にスピンアウトした。
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Chiah 氏は次のように回想する。
Legalese のようなビジネスへのニーズは、私が JFDI に在席している間に顕在化してきました。ピーク時には1ヶ月に10を超える投資を行っていました。法律事務所からは高額の請求が来ていました!私たちはこの処理量をこなせるソフトウェアを探しましたが、見つけることはできませんでした。そこで、自前でソフトウェアを作成したのです。
それ以来、この製品は30を超えるスタートアップの書類作成を助け、調達額で言えば150万米ドルを超えた。Legalese は自社製品を使って、今回のエンジェルラウンドをクローズした。
シリコンバレーでいうところの「ドッグフーディング(自社技術を自社ビジネスに適用すること)」ですね。(Chiah氏)
何十億ドルもの市場
Chiah 氏は同社を、JFDI.Asia 創業者でコンピュータサイエンティストの Wong Meng Weng 氏、TSMP Law Corporation および Rajah & Tann というシンガポール最大手の法律事務所に勤務していた訴訟担当の Alexis Chun 氏とともに立ち上げた。
ハーバード大学のバークマン・センターでフェローに任命された後、Meng 氏はハーバード大やMITのポスドクおよび教授陣と、弁護士がコーディングするためのプログラミング言語について議論してきたと語っている。
私たちが今回のラウンドをクローズしてからも時計は進んでおり、私たちは借金状態です。今後12ヶ月の仕事は、製品を正式に販売して出資金を売上に変換することです。そして、私たちの競争優位の源泉であり、他の技術スタックを支えているコア IP をさらに強化することです。これは PhD(博士)たちと議論して進めるということです。
同スタートアップは今のところ収益モデルを見出していないが、署名単位で課金することを検討している。すなわち、契約書の起草のために弁護士を時給600米ドルで雇わなくても、Legalese ならどんな契約書でも署名ごとに一定の金額を支払うだけで済む。
私たちの実験販売が成功すれば、2017年後半にシードラウンドの資金を集めるのに有利になります。
Walden の執行役員 Yong Soo Ping 氏は、ビジネスチャンスは莫大だとした。
法務業界は年間で4,000億米ドルの規模があり、高価な手作業に依存しています。
彼女はこの市場サイズがグローバルかどうかについては触れなかったが、コンサルティング会社 Legal Transformation Institute によれば、この数字は米国の規模に相当するとのことだ。
Legalese の潜在力はさしおき、Alexis 氏はボットが弁護士の仕事を完全に置き換えるとは思っていない。
それは起こらないでしょう。元訴訟担当として、AI が裁判所で議論できるとは思いません。しかし、企業間契約についていえば、小企業は伝統的な法律事務所よりオンラインソリューションを選ぶでしょう。
【via Tech in Asia】 @TechinAsia
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