中国「Hongbao(紅包)」大戦争:Alipay(支付宝)がいつも本当のイノベーターである理由とは?

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本稿は、中国の市場調査会社 Daxue Consulting(博聖軒) のデジタルマーケティングマネージャー Federico Sferrazza 氏の執筆によるものだ。


Image credit: ddukang / 123RF

今年も負けてしまったが、Alipay(支付宝)には素晴らしいイノベーション能力があるおかげで、今でも今年の Hongbao(紅包)戦争の最終勝者を狙える位置にいる。

Hongbao とは、中国の旧正月にお祝いや挨拶として贈られる中国の伝統的なプレゼントである。2014年にTencent(騰訊)のメッセージアプリであるWeChat(微信)からデジタル Hongbao が初めてローンチされて以降、Alibaba(阿里巴巴)と Tencent の二大企業がしのぎを削る競争市場へと突入した。2017年の新年にも、Alibaba が運営する Alipay と Tencent が運営する QQ は巨額の投資を伴う激しい戦いを繰り広げていた。Tencent が運営する WeChat はこの戦いには参加しなかったが、Hongbao を送受信する慣習はまだ保持していた。しかし、データによると Alipay はまたしてもこの戦いに敗れたようだ。この連敗から Alipay の未来が占われてしまうのだろうか?

デジタル Hongbao は、WeChat のおかげで中国人の日常生活の一部になった。Tencent Holdingsの決済サービスであるTenpay(財付通)のジェネラルマネージャーである Zhiming Lai(Jim Lai)氏によると、毎日22億回のインタラクション(ユーザによる Hongbao の送受信)があるという。今年の戦いでも WeChat がトップだったことは疑う余地もない。WeixinPai(微信派)によると、今年の除夕(旧暦の大晦日=1月27日)だけでも142億件のデジタル Hongbao が送られ、深夜のピーク時には毎秒76万回の取引が記録された。Tencent は、今年の春節の6日間で計460億件の Hongbao が送られたことを明らかにした。しかも戦いに参加すらすることなく、である。

2017年、WeChat はこの戦いには参加しなかったものの、昨年のダークホースだった QQ を戦場に送り出した。今回 QQ は3,600万米ドルを投資し、一方の Alipay は3,000万米ドル投資し400万米ドルの現金クーポンを配布した。3億4,200万人が QQ の Hongbao ゲームに参加し、37億7,700万人民元(5億米ドル)の Hongbao が贈られた。これに対して Alipay は「ラッキーカード(福卡)を5枚集めよう」というキャンペーンを張り、一人あたり平均1.19人民元をプレゼントして、約1億6,800万人のユーザを集めた。

Alipay は過去3年の間デジタル Hongbao の数で明確に勝利したことはないが、掘り下げて調査してみると、彼らの創造性はよく練られた様々なキャンペーンで既に証明されていた。素晴らしいイノベーションと莫大なユーザ基盤(4億5,000万人以上)を基にして、WeChat や QQ と比較して現時点で最大の弱点であるソーシャル機能の強化という Alipay の目標が次第に達成されてきている。創造と革新の企業として、Alipay は2017年の Hongbao の勝者となるという最終目標のために今年さまざまな新戦略をとってくるはずだ。このテック大手企業が中国の Hongbao 競争で大成功すると見込まれる様々な理由の概要を以下に述べる。

Alipayがラッキーカード(福卡)チャレンジを復活させた驚くべき方法

WeChat のデジタル Hongbao 機能に対して、Alipay は「ラッキーカード(福卡)を5枚集めよう」という Hongbao のキャンペーンを2015年1月に開始した。除夕が終わるまでに5枚の「バーチャルラッキーカード」を集めることができれば、ユーザは総額2億人民元(2,900万米ドル)の現金(2~666人民元、0.3~約100米ドルの Hongbao)またはクーポンの山分けに参加できる。

Alipay の目的は、Alipay アプリを使った交流を促すことであり、その結果キャンペーン後には11億ペアのユーザが生まれた。2017年の春節前、全く新しいルールを発表することで Hongbao 戦争を変えた。2015年1月にキャンペーンを最初に発表した際と同様に、今年の Alipay のゲームの目標は5つの異なる「福」を集めるというものだった。5つの福はこれまでと同じく愛国福、富強福、和諧福、友善福、そして一番レアな敬業福だったが、今年は集め方が多様化した。昨年と同じく Hongbao を送り合うことで、拡張現実(AR)と位置情報サービスを使った「Ant Forest Game(螞蟻森林)」で遊んでラッキーカードを集めることもできる。

拡張現実と位置情報技術を使った「福」さがし

Alipay のAR Hongbao は2016年12月にローンチされた。プレイヤーは AR 技術を使って店舗などに置かれた様々な「福」をスキャンする。このルールによってプレイヤーを店舗に呼び込めると予想された。大多数のいたずらな中国人プレイヤーは簡単かつ迅速に「福」集めを終わらせるために、単に大多数の「福」が書かれた紙を送り合った。

今年一番のイノベーションは、ポケモンGoの拡張現実と位置情報技術にインスパイアされた、位置情報を利用した Alipay のAR Hongbao キャンペーン(AR 実景紅包)である。これによってユーザはスマートフォンのカメラを使って現地で対象物をスキャンすることで、Hongbao を隠したり集めたりできるようになった。

コカコーラ、KFC、P&G が Alipay のゲームプレイヤーに現金や割引券を提供することになった。2016年12月に AR Hongbao がローンチされたのに続いて、競合のテック大手企業である Tencent も、2017年1月に自らのメッセージアプリである QQ から位置情報と AR を組み合わせた Hongbao ゲームをリリースした。

Analysys International(易観国際)のアナリストであるWang Pengbo(王蓬博)氏はGlobal Timesに次のように語った。

若者をターゲットにするために、Alipay は Hongbao をプレゼントするという行動を今年はもっと面白いものにしたのです。しかし、QQ は90年代以降に生まれた世代に一番人気があるチャットアプリなので、QQ の方に軍配が上がりそうですね。

Global Times によると、QQ の AR を使ったマーケティングキャンペーンでは3億4,200万人を呼び込み、うち68%は90年代以降に生まれた世代だという。しかし、Ant Financial Servce Group(螞蟻金服集団)によると、AR Hongbao をローンチする本当の意図は、AR 技術を使って消費者と実店舗を繋げるための基盤づくりであり、これはゆくゆくは巨大なマーケットになると信じられている。Alipay のこういったイノベーションは、Alipay が最も熟達した分野である新しい実店舗購買メソッドを発展させる、という戦略的意図を表している。

ソーシャルモバイルゲーム「Ant Forest(螞蟻森林)」をプレイしてラッキーカードを集めよう

このソーシャルゲームは炭素排出量の削減に焦点を当てているが、これは革新的なコンセプトである。

Alipay のアプリを使って、地下鉄を使ったり歩いたり(Alipay に搭載された歩数計機能でこういった行動は記録できる)、公共料金の支払いを行ったり(水、ガス、電気)といった炭素消費を抑える行動をすると、ユーザのデジタルツリーを育てる栄養分として計算される。

Alipay はデジタルツリーが育つたびに本当に植林することを約束している。

Alipayは2016年8月にローンチされた Ant Forest Game と組み合わせ、Hongbao キャンペーンに「緑」タッチ機能を追加した。プレイヤーがラッキーカードをもらうには、友人のバーチャルツリーに水やりする必要がある(1日5~10回まで)。

国連開発計画の Environomist China Carbon Market Research 2017(2017年環維易為中国碳市場研究報告)によると、Alipay の Ant Forest ソーシャルゲームのプレイヤー数は2017年2月時点で2億人に達するまで飛躍的に伸びており、111万本の樹木が中国で植えられたという。

国連開発計画発表の2017年環維易為中国碳市場研究報告

友人やソーシャルネットワークを使って探しているラッキーカードを交換・提供しよう

キャンペーンの遊びやすさや友人間のやりとりを増やすために、友人とカードを交換したりもらったりするのを今年の3つ目のルールとした。

レアな敬業福カードをゲットするために WeChat グループに参加したり、探している1枚を他のカードと交換で譲ってもらえないか WeChat で友人にお願いする参加者も多かった。敬业福をゲットするのは非常に困難で、昨年カードを全種類コンプリートできたプレイヤーは0.79%しかいなかったため、Alipay に対し不満が募っており、ヘビープレイヤーの間には失望と落胆が広がった。今年はより多くの人がカードをコンプリートし見返りを受けられるようになった。

ユーザが自分の Moments(朋友圏)で、全部の福を取るべく、他の福と引き換えに友人に敬業福を贈ってくれるよう頼んでいる様子

2017年1月18日に Hongbao キャンペーン第2弾の新しいルールが発表されてから、900万人を超えるプレイヤーが初日のうちにカードをコンプリートし、1月21日にはその数は3,500万人に増加した(Alipay、2017年)。今年、プレイヤーはすぐにゲームに夢中になり、Alipay ユーザの37%(1億6,800万人)が除夕までにラッキーカードを5枚集め終えることができた。ほとんどのユーザは1~5人民元をもらい、当たる確率は低いが最高金額は666人民元相当であった。さらに、Alipay はさまざまなスポンサーから提供された3,000万枚の割引クーポンを配布した。

今年のバレンタインデーには斬新な恋愛保険を発売した。Alipay の Official Weibo(官方微博)によると、バレンタインデーに1万5,000契約を結んだという。保険料には14米ドル、43米ドル、72米ドルと、3つのグレードがある。カップルが保険契約をして定められた期限内(3年~13年)に結婚した場合、保険のグレードに応じてそれぞれ290米ドル、870米ドル、1,453米ドルの報奨金がもらえる。AR Hongbao はここでも使われており、カップルの一方がラッキーマネーを普段使いの場所に隠し、もう一方がそのアイテムをスキャンすることでそのお金をもらうことができる。Hongbao を隠すことと探すことを組み合わせることで、ユーザは愛情を示し、ゲームを楽しむことができる。

洗練されたイノベーション 力で Alipay はついに Hongbao 戦争の勝者になろうとしている

Alipay(支付宝)のバレンタインデー向け恋愛保険

Alibaba の金融機能には WeChat や QQ といったソーシャルツールはついていないが、何度も交流を促すような試みをしている。しかしこれは失敗に終わっており、Alipay のイノベーション能力をしっかり発揮しようとしていた。2014年にWeChat Payment(微信支付)が Hongbao 戦争を開始したときには、もう Alipay はソーシャル機能がないことが失敗の根本的原因になることに気付いていた。なので Alipay は WeChat を再度出し抜けるような新しい方法を探していた。2015年2月、Alipay はパスワード Hongbao (口令紅包)という、正しいキーワードを入力して Hongbao を受け取る新しい方法を発表し、同年12月には QQ が同じようなものを出してきた。

2015年の第2ラウンドでは、Alipay は「ラッキーカードコレクション(集五福活動)」というキャンペーンを張り、多くの人を熱狂させた。しかし、莫大な広告費とユーザの失望(昨年賞金を得られたユーザは1%未満だった)により、Alibaba はゲームに敗れた。

なので、Alipay はそのイノベーション精神で最新技術のARを加え、2017年には5枚のバーチャルラッキーカード(五福卡)キャンペーンを改善した。AR Hongbao は Alipay が2016年に発表したものだが、2017年にはまた QQ が追従してきた。QQ はさらに企業や有名人とコラボレーションした AR Hongbao など斬新なアイデアをいくつか追加した。Alipayがソーシャル能力の弱点を補うためのもう一つのイノベーションは Ant Forest だった。これは、中国の金融とテクノロジーを組み合わせた一人称炭素生成ゲームであり、今年の Hongbao 戦争で使われている。Alipay は新しい技術を使ったたくさんの素晴らしいアイデアを考え出すフロントランナーであり、QQ はどちらかといえばフォロワーである。

Hongbao を手に入れたり送ったりする楽しさを考えると、この技術はすぐにでも浸透するだろう。しかし、iiMedia Research(艾媒諮詢)によると、伝統的な Hongbao は利用者数の拡大のボトルネックに差し掛かってきており、WeChat の Hongbao 数の成長率は2016年の641.8%に対して今年75.50%だった。この時点で、伝統的な Hongbao の習慣は今後十分効果的ではなくなり、Alipay の卓越したイノベーション能力がソーシャル能力を強化するのに特に重要になる。結果としてラッキーマネー市場をリードするのだ。現在の中国人は中国のさまざまなお祭りの間いつも新しい娯楽を求めていることから、中国は誰もが楽しめる娯楽の時代に突入することが予想されている。

春節の Hongbao やバレンタインデーの恋愛保険とは別に、Alipay は2016年の端午節(こどもの日)にはユーザの名前の末尾に「宝宝(赤ちゃん)」とつけたり、2016年の中秋節には月をスキャンすると Hongbao がもらえるというように、他のお祭りでもキャンペーンを発表した。今年、Alipay はいろんなお祭りでもっと面白いキャンペーンを展開することが確実視されている。おそらく次の婦女節(女性の日:3月8日)が最初だろう。娯楽と技術を統合するトレンドの仕掛け人として、Alipay はユーザの評判を勝ち取るだけでなく2017年の Hongbao 戦争の勝者となる可能性は大いにある。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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