
IMG_2135 via Flickr by Thomas Cloer
Amazon Web Services(AWS)は本日(6月7日)、Greengrass の公式ローンチにより IoT サービスの取り組みを強めた。新たなサービスによってエッジデバイス上でのデータ処理と、デバイスからクラウドへの通信が容易に行えるようになる。
Greengrass では、カスタマーは必要な機能を記述し、それを互換性のあるデバイスにデプロイすることができる。デプロイした機能はローカルハードウェアまたは AWS クラウドからのトリガーに対応して動作する。この機能を用いると、IoT デバイスの鍵であるネットワーク接続なしでのデータ処理が可能だ。また、Greengrass が組み込まれたハードウェアと Amazon クラウド間で安全な通信を行い、カスタマーはクラウドとデバイス間でデータをやり取りできる。
このサービスは AWS が昨年ラスベガスで開催した re:Invent カンファレンスで発表したものであり、クラウドプロバイダが市場で他社と競合する上で力強い戦力となる。大手クラウドプロバイダは通常何らかの IoT サービスのセットを有し、企業がコネクテッドデバイスを活用できるようにしているが、AWS が今回のローンチで最初にファーストパーティとしてエッジデバイスでのデータ処理(エッジプロセッシング)を一般向けに提供することになり、これはカスタマーやハードウェア設計製造パートナーにとっては大きな魅力となるだろう。
MachNation の共同設立者で CTO の Dima Tokar 氏によると、とりわけ Greengrass は Microsoft の Azure IoT Edge サービスに比べると手に入りやすく、Amazon にとっては有利に働くという。
彼は e メールで次のように述べている。
クラウドプラットフォームを評価している将来の顧客に対して、Greengrass が一般に入手可能なことにより AWS は一時的に優位に立つでしょう。同製品は量産導入が可能なエッジデバイスの機能セットを備えていますから。クラウドプラットフォームを評価するハードウェアベンダーにとって、Greengrass を提供する Amazon の存在は、クラウドベンダーのトップ企業が一般利用可能なクラウド製品を提供し、ハードウェアベンダーはそれを購入して自社ハードに組み込めることを意味しています。
Greengrass のもう一つの鍵となる利点は、ユーザがエッジデバイスで実行する機能は同社の「サーバーレス」プロセシングサービス AWS Lambda を使ってビルドできることだ。理論的には、開発者は Amazon のクラウドでもエッジデバイスでも動作する Lambda 機能を記述することができる。
同社の IoT 担当 VP である Dirk Didascalou氏によれば、AWS のエッジコンピューティング機能の構築には3つの「法則」があるという。
まず、データを物理の法則よりも早く転送することはできず、また、データをネットワーク越しに送るのは一部のアプリケーションでは速度が足りていない。現行法ではあるレベルのセキュリティとプライバシー保護が必要で、これがクラウドや IoT をうまく使いこなすのを難しくしてしまっている。また、経済の法則から見るとエッジデバイスからクラウドまで大量のデータを低価格で送ることはできない。AWS Greengrass が狙うのは、これらの問題の解決だ。
ローンチにあたり Intel は、ハードウェア製造会社や企業がこの新サービスを導入しやすくできるよう新たな IoT 開発キットと Greengrass 対応のゲートウェイを発表した。Qualcomm もまた、同社の DragonBoard 410C 開発キットが Greengrass をサポートするとし、この新サービスが組み込まれたカスタマのハードウェアを公開した。
火曜日(6月13日)以降、Greengrass クラウドサービスは AWS の北バージニアとオレゴンのデータセンターで一般利用可能になる予定。そして今後数週間のうちにフランクフルトとシドニー地域でも利用可能になると Didascalou 氏は述べている。Greengrass 対応デバイスは世界中でデプロイ可能だ。
太平洋時間12時35分、Dima Tokar 氏のコメントを更新。
2017年6月7日訂正:記事には当初 DragonBoard 410C は新規と記載していたが、実際は異なる。DragonBoard 410C は2015年3月にリリースされている。記事はすでに訂正済み。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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