VRカラオケは、低迷するアジアのKTV業界の救世主となるか?

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Image credit: jimmyan8511 / 123RF

カラオケ機は1970年代に日本で誕生した。当時は単なる高価な流行りものと思われていたが、それから約50年が経ち、カラオケはアジアで KTV と呼ばれ人気の娯楽となり、中国ではすでにエンターテイメントの最新トレンド「VR(仮想現実)」を取り入れたものも現れている。

中国の都市部を中心に、VR を取り入れた娯楽施設が続々と登場している。その背景には、新しいテクノロジーが好きだという中国人の国民性の他にも理由があるようだ。

深圳に本社を置く VR Lounge(VR 客庁)の共同設立者 Monica Ge(戈亜)氏は次のように語っている。

中国における個室式の娯楽ビジネスには、全てに共通する秘訣があるんです。チェスルーム、麻雀ルーム、スパ、ホームパーティー用レンタルスペース、プライベートシアターなど色々ありますが、アジア人は社交的に振舞いたいけどくつろぎたくもある。そういう血が流れているのです。

VR Lounge はこの KTV スタイル(つまり個室式)のアプローチをVRエンターテイメントにも取り入れている。同社はユーザが人目を気にせず楽しめるように、リラックススペースに自社製VRコンソールを設けている。果たしてこうしたKTVモデルに未来はあるのだろうか?

深圳の VR Lounge(VR 客庁)
Image credit: VR Lounge(VR 客庁)

エンターテイメント市場の成熟やeコマース、賃料および人件費の上昇が要因となり、KTV の魅力が低下している。中国の不動産およびエンターテイメント巨大企業 Dalian Wanda Group(大連万達集団)は KTV 業界の有力プレイヤーであったが、2015年にカラオケ店の営業を終了し、カラオケ事業から撤退した。VR 施設もこれと同様の運命をたどりつつある。その市場は早くも飽和状態に達し、新規性は薄れている。なにより、様々な娯楽の選択肢が提供されている現在では、ユーザはすぐに飽きてしまうのだ。

衰退する KTV 事業に、より斬新なアプローチを試みる企業もある。椅子が2つにイヤホン、マイク、タッチスクリーンのみを備えた、電話ボックスより少し大きいぐらいの Mini KTV と呼ばれるブースが存在する。北京に本社を置くHaipi Lejing(嗨皮楽鏡)は、そんな Mini KTV を運営する企業のひとつである。同社は最近、設備としてVRゴーグルの提供を開始し、ユーザは窮屈なガラス張りの小部屋を飛び出して別世界を体感できるようになった。昨年から Mini KTV が投資家の注目を集めるようになり、Mini KTV 企業の Youchang M-bar(友唱 M-bar)はシリーズ A ラウンドで6,000万人民元を調達した

北京・西単のデパート「大悦城」にある Mini KR KTV
Image credit: TechNode(動点科技)

しかし、VR Mini KTV を実際に体験してみると、やや期待外れのようだ。 Amy と名乗るユーザは、ティーンエイジャーが言いがちな表現で「まあまあ」とそれを評価した。

曲数が少ないし、VR 映像も別に面白くないです。

VR KTV の最大のネックはコンテンツの問題だ。Mini KTV の VR ゴーグルで見ることができる30本の映像には韓国ポップスターの360度映像がいくつかあるのだが、それ以外はでたらめなものばかりのようだ。例えば、Adele の 「Rolling in the Deep」だと、すたれたカラオケバーの360度映像が映し出されたりなんかする。

我々の持つ Adele のイメージとはぜんぜん違う
Image credit: TechNode(動点科技)

もうひとつの問題はインタラクションである。カラオケ自体はソーシャルな体験であるはずだが、VR ゴーグルがユーザを隔離してしまう。 Oculus はこの問題を解決すべく、VRカラオケゲーム「SingSpace」を開発した。SingSpace では、プレイヤーはアバターを選んで他のユーザとコミュニケーションすることができる。残念ながら、Oculus の商品は中国では入手できない。

しかし、VR KTV が歴史のかなたに消えていくわけではない、と Monica 氏は考えている。

ここ10年間、KTV はお客様に様々な体験を提供するために多くのことを試みてきました。KTV チェーンは現在、部屋ごとに異なるデザインとテーマを用意しています。ここで想像してみてください。あなたとご友人が座っている空間が一瞬で変わるのです。部屋を出ることなく、ヒマラヤの頂上や宇宙、魚が泳ぐ海の中にだって行けるのです。

だが、上述したような問題があったとしても、ミュージシャンがVR業界から遠ざかることはない。U2 は最近、シングル曲 「Song for Someone」の360度ミュージックビデオを制作した。イギリスのバーチャルバンド Gorilla zは、 VR、AR(拡張現実)、360度映像を駆使することでファンがミュージックビデオの中に没入するだけでなく、メンバーのホームパーティーにも参加できるようにした。

結局のところ、音楽ファンの最大の夢は、自分がステージに立って好きな曲を歌い、1万人以上の観客から喝采を浴びる感覚を味わうことにある。VR では好きなアイドルになることだってできるのだ。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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