イノベーション都市としての京都〜パリクラブでの「エルメス賞」授賞式参加の模様から【ゲスト寄稿】

本稿は、「Monozukuri Hub Meetup」を主宰する Makers Boot Camp の CEO 牧野成将氏による寄稿である。

Makers Boot Camp は京都を拠点とするハードウェアに特化したスタートアップアクセラレータである。

今年2月には、20億円規模のファンドを組成している。


パリクラブのメンバーと京都市長の門川大作氏(右側)
Photo by Tugi Guenes

Club de Paris des Directeurs de l’Innovation(通称:パリクラブ)」が開催する「10th National Meeting of Innovation Directors」への招待を受け、京都市と Makers Boot Camp の取り組みを紹介するために参加してきました。

パリクラブはフランスの大企業や公的セクターの新規事業開発メンバー等が中心となって、テクノロジーや産学連携を通じてよりよい社会のあり方を啓蒙する団体であり、フランスのイノベーションを牽引する大きな影響力を持っています。

始まりは今年3月、パリクラブのメンバーが京都を視察訪問

パリクラブのメンバーと京都市長の門川大作氏(中央)そして筆者(後列右から5番目)
photo by Tugi Guenes

Makers Boot Camp とパリクラブとの関係は、3月に同団体のメンバーが京都に視察訪問をした際に、文化と革新的テクノロジーの2つの側面を持つ京都を体験するツアーをMakers Boot Campがオーガナイズしたことから始まりました。またMakers Boot Campの京都での活動をパリクラブに紹介してくれたのは、フランスのスタートアップをサポートする政府機関 La French Tech です。

京都でのツアーでは、京都市長と接見、京都試作ネットや酒造工場等の見学、更には和菓子作り体験等を企画しました。

パリクラブメンバーが京都試作ネットに参加するクロスエフェクトを視察
photo by Akari Murata
和菓子作りを楽しむパリクラブのメンバー
photo by Akari Murata

京都市がエルメス賞を受賞

今回の「10th National Meeting of Innovation Directors」で、各分野でイノベーティブな取り組みをする団体や都市を顕彰する「エルメス賞(Hermes Awards)」を京都市が受賞する運びとなりました。

エルメス賞は過去、ヘルシンキ(フィンランド、2010年)、バルセロナ(スペイン、2011年)、コペンハーゲン(デンマーク、2012年)、ウィーン(オーストリア、2013年)、クリチバ(ブラジル、2014年)、天津(中国、2015年)が受賞したこともある名誉ある賞です。京都市は過去の受賞都市と比較しても歴史がありながら挑戦を続ける都市であること、大企業やスタートアップの革新的な取り組み等が認められての受賞となったようです。

京都市が受賞したエルメス賞
Photo by Club de Paris

2017年5月15日におこなわれた会議の中では、「The renovation of large enterprises through innovation」をテーマに、Owens Corning(アメリカ・ガラスメーカー)、Bayer(ドイツ・製薬メーカー)、Michelin(フランス・タイヤメーカー)、Colas(フランス・道路建設)、Lectra(フランス・ソフトウェア)、また日本からは富士フイルム等の先進的な企業が各社のイノベーションの取り組み等をプレゼンテーションしました。

富士フィルムのプレゼンの様子
Photo by Narimasa Makino

受賞にあたっては、京都市長の門川大作氏の代理として日本大使館の平田吉男氏が、市長の謝辞をフランス語でを読み上げられた後、日本語版謝辞と共にパリクラブ会長の Marc Giget 氏に譲渡されました。エルメスの形をした胸像トロフィーと賞状を Giget 氏より代理として受けとられました。

門川市長の代理として日本大使館の平田吉男氏が受賞スピーチをおこなってくださいました
Photo by Club de Paris

Giget 氏の京都市の紹介スピーチでは、門川市長との面談、京都リサーチパークや京都市産業技術研究所に関しても触れられており、産学官が一体となったイノベーション創出に取り組んでいる部分が評価され、受賞に至ったようでした。また京都での着物パスやマンガミュージアムなどソフト面も評価されており、ハードとソフトを組み合わせることを「Monozukuri」と表現しており、ここにイノベーションの源泉があるとまとめられていました。「Monozukuri」の新しい概念を教えていただいたようで、改めてすごくよい言葉だなと感じました。

日本大使館の平田吉男氏(中央)とパリクラブ会長の Marc Giget 氏(右)
Photo by Club de Paris
Marc Giget 氏によるエルメス賞の説明
Photo by Narimasa Makino

私は「Monozukuri」をテーマに京都の伝統産業や大企業の紹介、また中小企業のネットワークを活用してモノづくりスタートアップを支援するMakers Boot Campが生まれた経緯に関してのプレゼンテーションをおこないました。フランス人は京都/日本に非常に親しみを感じてくれているようで、日本で働いたことがあるよ、日本と何か一緒にしたいんだと数多くの担当者から声をかけてもいました。フランスでもキーワードは「イノベーション」、そしてそのイノベーションを生むために必要な要素は何か? という探求を今回受賞したすべての企業が求めており、革新的な未来へ向かって進んでいくことをポジティブに捉えた会議でありました。

京都のモノづくりエコシステムを紹介する筆者
Photo by Club de Paris

受賞企業の取り組みを参考にして、京都をこれまでにない概念のイノベーションが生み出される街にしたいと強く感じました。この実現のためにも京都市や大学、地元企業とのこれまで以上の協力関係を深め「京都をモノづくりの都」とするため一層の努力を重ねていくつもりです。

受賞会場の様子
photo by Club de Paris

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