
Photo credit: Hyperloop Transportation Technologies
地元のシンクタンクや国内トップの工業系教育機関、政府のイノベーション局の協力のもと、韓国でハイパーループ技術が導入されようとしている。
同国では、プレイヤー間でコンソーシアム協定が結ばれたことによって、近未来型輸送システムの開発、試験、建設を開始することが可能となった。
この協定は、米カリフォルニアの Hyperloop Transportation Technologies(HTT)と韓国政府の科学技術部・建設交通部との間で締結された。
Korea Institute of Civil Engineering and Building Technology(韓国土木研究所)という地元のシンクタンクと韓国でトップの工業系教育機関である漢陽大学もこの構想に参加している。
目標は、韓国を「フルスケールのハイパーループが試験運用可能なテストベッド」にすることだ。
今回の協定の最も興味深い点は、韓国側の利害関係者がライセンスを取得して HTT の専有技術を利用することにある。この専有技術には浮上推進技術に関するノウハウが含まれている。
また、協定には韓国側の人材と資源によるハイパーループの建設(例えば部品の製造や溶接など)のライセンスも含まれている。
そして、業界における安全基準と規制を共同で策定する旨が規定されている。
ハイパーループ技術開発におけるファーストムーバーとして、現在、新たな成長産業の標準化に取り組むことが私たちには求められています。
HTT の会長である Bibop Gresta 氏は声明の中でこのように語る。
3年以上の開発期間を経て、私たちは政府やコンソーシアムと直接協力して、国際的な標準化を行うことができるようになりました。
HyperTube Express
韓国がソウルとプサンを結ぶハイパーループをベースとした輸送システム「HyperTube Express(HTX)」の建設を推し進め、その結果、今回の協定を結ぶ運びとなった。
これが開通すれば、これまで3時間かかっていたソウル-プサン間をわずか20分で行けるようになる見込み。
この「列車」がいかに速いかと言うと、WIRED によれば、現在この2都市間を3時間で移動する韓国高速鉄道は時速320km(時速200マイル)で走行しているという。
また、公式プレスリリースの中で「世界初のフルスケールの乗客用ハイパーループカプセルの生産開始」も大々的に発表された。
この発表はかなり奇妙なものに思える。HTT はまだプロトタイプのテストをどこでも行っておらず、システムがきちんと機能するか誰も確認していないのだ。それは、宇宙機関が「火星に人類を移送するプロセスを開始した」と主張しているのと変わらない。
HTT は現在、乗客カプセルの初号機を製作中。
ハイパーループは2012年にイーロン・マスク氏が考案した技術。当時は SF 小説の中の存在にすぎなかった。しかし、ここ18ヶ月ほどの間にその技術は形になり始めている。
私も初めのうちはフルスケールの旅客システムの構築について冷ややかな見方をしていたが、ハイパーループが今後数十年のうちにインフラの一部になる可能性はゼロではないように思える。
2016年3月に、ハイパーループの開発センターになれるというユニークなチャンスがアジアに到来していることを記事に書いたが、アジアがこのチャンスに飛びつくとは思っていなかった。インド、インドネシア、そして今回の韓国(さらに各地域では民間のベンチャーキャピタルも)がハイパーループシステムの開発に投資し始めたことで、私が間違っていたことが分かった。
ハイパーループの大手は2社あり、1つが Hyperloop Transport Technologies で、もう1つが Hyperloop One である。
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