
編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。
子供の「なりたい職業」でも上位にくるようになったYouTuber。そのYouTuberの活動をサポートするプラットフォーム『BitStar』を運営するBizcastに正社員第一号として参画し、代表の渡邉拓氏と事業を作り上げ、現在はインフルエンサーチームを統括する石井貴幸氏にお話を聞いてきました。入社当時は社長しかいなく、事業もピボットを模索しているタイミングで入社した話など、リアルなスタートアップの光景をいろいろとお伺いできました。
大柴:ご無沙汰してます。最近オフィス移転されたそうで。ついこの間までEast Venturesのシェアオフィスにいたような気がしますが、好調そうで何よりです。今日はよろしくお願いします。(※編集部から情報開示:インタビュアーの大柴氏がフェローとして参加するEast VenturesはBizcastの株主でもあります)
石井:よろしくお願いします。私がBizcastに参画したときは渋谷のEVオフィスでしたね。このオフィスは2カ月前に移転しました。
大柴:シェアオフィス出てから3カ所目ですね。成長を感じます。石井さんがBizcastに入ったのっていつですか?
石井:2015年2月です。当時卒業を控えた大学生でまずはインターンとして入りました。大学時代は英語部の活動に没頭してて、いわゆるスタートアップの世界とは無縁の生活を送っていました。でもずっといつかは起業したいなとは思ってて。
就職活動はほとんどしていなかったんですが、友人の紹介でインターネット広告代理店に内定はもらっていました。その会社には紹介制度みたいのがあって、それを利用して内定をもらったんです。ただ内定も決まったけど自分は起業をしたいし、事業の立ち上げや会社の成長を経験したくて。それでそういうことができそうなスタートアップを経験してみたいなと思い、友達を介してイベントや飲み会に顔を出すようにしました。結構当時の自分はいろいろと迷って悩んでいました。そんな中で友達が渡邉を紹介してくれたんです。
大柴:そういう流れだったんですね。
石井:友達と普通に道玄坂のケンタッキーで食事をしながら話をしてたんです。その中で彼がBizcastを手伝ってるという話になり、ケンタッキー向かいのオフィスにいた渡邉を呼んでくれたんです。
大柴:なるほど。
石井:ジャージにTシャツで、髪もボサボサな渡邉がやってきて(笑)。
大柴:あの頃は渡邉さん、いつもそんな格好でしたね(笑)。
石井:はい。第一印象は「暗そうだな」と感じたんですが、自分がイメージする「スタートアップ」と同じだったので、特に違和感などは感じませんでした。ちょうど現在の主力事業である「bitstar」の構想を渡邉が話してくれて、とても魅力的な事業構想だったのでBizcastでインターンをすることにしました。
大柴:動画メディア事業からのピボットのタイミングですね。
石井:はい。YouTuber事業の構想はあってもそれ以外何もないので、渡邉と二人で立ち上げを頑張りました。シェアオフィスだったので電話がしにくくて、オフィスの端っこにある謎の個室(物置)にこもって電話したりしてました。物置だけあって空気が悪くて(笑)。あとはケンタッキーでもよく仕事してましたね(笑)。
大柴:あれ、内定先はどうしたんですか?
石井:Bizcastで毎日朝から晩まで働いているうちに「ここでやっていこう」という気持ちになり、内定先に辞退を申し出ました。担当の役員の方から「やりたいことが見つかって良かったな!」と応援してもらえて嬉しかったです。その会社を紹介してくれた友達からも応援してもらえて良かったです。でも親にはこの事実を言ってなくて…。
大柴:そうなんだ。
石井:内定もらってた会社は上場企業なので、親も喜んでたんですが、いきなり「自分と社長の二人しかいない会社に行く」とは言えなくて(笑)。
大柴:まぁわかります。僕らが昔上場目指してた時の理由の一つに「親に言えるようになる」というのがありました(笑)。
石井:入社4日目の朝、寝ぼけて「○○(内定もらってた会社)は辞めたよ」って言っちゃって。その日は遅刻しました(笑)。
大柴:(笑)
石井:まぁ全然理解してくれたんですけどね。やっぱり驚いたみたいで。
大柴:なるほど。
石井:そこからは一層仕事に向き合いました。夏くらいまでシェアオフィスにいたんですが、その頃が一番キツかったです。よくわからない市場だったので手探りで。手当たり次第アポ取って、クライアント開拓をしました。シェアオフィスを出たあたりから「伸びてる感」を感じるようになりました。高揚感というかワクワク感というか。
大柴:最初のオフィス移転の頃ってそういうのありますよね。
石井:その頃に徐々に人が入ってきました。ずっと二人だったけど、エンジニアが入ったり、同じ歳の人が入ったり。前からたまに手伝ってくれてた原田(直)さん(現Bizcast取締役)が正式に参画してくれるって知った時はビックリしました。その後に山下(雄太)さん(現Bizcast取締役)も入ってきて。
大柴:原田さんは大企業、山下さんはメガベンチャーからの参画なわけで、人員がそろってきた感ありますね。
石井:はい。シェアオフィスの頃は「このままウチの会社は人が増えないんじゃないか?」と思ったこともありました。シェアオフィスで向かいの席にいたCandle(後にCROOZが買収)やGoroo(後にユナイテッドが買収)がガンガン人員が増えていってて。それを見ながら多少の不安と焦りはありました。でもようやく自分たちも人員がそろってきましたし、その他にも実績ある人がたくさん入社しました。
大柴:ちょっと聞きたいんですが、どんどん上司というか、上に人が入ってきたじゃないですか。そういうのってどう思いました?
石井:いや、特にネガティブな気持ちはなかったです。むしろ実績のある人から学べる機会が増えるのでプラスでした。仕事で成果を出すだけなので。
大柴:なるほど。ありがとうございます。初の独立オフィスから一年経たずにまた移転しましたね。
石井:はい。去年の春くらいですかね。今のオフィスの向かい側あたりに移転しました。その頃くらいですかね。自分の仕事に手応えを感じ始めたんです。その頃はいろんなジャンルのクライアントを持っていたのですが、ゲームジャンルにしぼりました。他のジャンルはメンバーに任せて、自分はゲームジャンルで勝負をかけました。結果、企画も提案も全部できるようになりましたし、おそらく売上も社内で1番になったと思います。
大柴:おぉ、すごい。
石井:ある程度ゲームのチームもできたので、今は別の部門を見ています。ゲームもそうだったのですが、今の部門も元々は渡邉が担当してた部門だったんです。でも渡邉にはもっと社長としての仕事に専念してもらいたいなと思ってるので、どんどん仕事を引継いでいっています。
大柴:ではいったんここで社長の渡邉さんについて聞いてみようかと。まぁ最初に会った時は「髪ボサボサでジャージ姿で暗い人」って感じだったじゃないですか(笑)。
石井:そうですね、身なりでいうと、最近良い服を着るようになりましたね(笑)。意識してるのかもしれません。社長感が出てきたように思います。渡邉を一言で言うと「ストイック」ですかね。めちゃめちゃ働くんです。現場の細かいこともやっていた。でも最近は先ほどお話したように、だいぶ僕らに引継いだので、最近は社長業をやり始めています。他の取締役も「取締役感」が出てきたように見えます。
大柴:徐々にステージが上がってる感じですね。原田さん、山下さんはどんな方ですか?
石井:原田は渡邉とすごく仲が良く、ムードメーカー的な存在です。一番難しいポジションだと思うのですが、最近急に頼りがいが出てきた気がします。山下は元々オーラがありましたね。困ったときに頼りになる存在です。
大柴:なるほどなるほど。では最後に石井さんの今後の抱負などを。
石井:そうですね。元々起業をしたいと思ってたし、それに近い経験をしているなと思います。誰もがやったことがないことをやったり、毎日チャレンジしています。会社もまだまだ道半ばですし、これからも事業を伸ばしていきたいと思っています。
大柴:なるほど。
石井:あとは、みんなが楽しく過ごせて、チャレンジできる会社にもっとしていきたいです。人生において仕事をしている時間ってとても長いじゃないですか。長い時間やるならば楽しくないと辛いし、そういう働きやすい環境を作っていきたいですね。仕事以外でも楽しく過ごすことにおいて今携わってる「エンタメ」領域ってとても重要だと思うんです。生きる活力になると思う。なので演じる側のやりたいことを実現してあげて、より良い「エンタメ」を作っていきたいなと思います。
大柴:子供の「将来なりたい職業」の上位にYoutuberがあがる時代ですからね。今日はありがとうございました。頑張ってください!
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