AmazonにとってのAWS同様「KDDIにとってのソラコム」でありたいーーKDDI 連結子会社化の道を選んだソラコム玉川氏インタビュー

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ソラコム代表取締役の玉川憲氏

今朝お伝えした通り、KDDIはIoT通信プラットフォーム「ソラコム」の株式を取得して連結子会社化する。ソラコム広報部に確認したところ、譲渡する株式は全てではなく過半数をKDDIが取得して連結子会社化するというのが正しい。また、その取得金額について報道では200億円という金額が出ており、この金額が全株式取得時のものなのかどうかについてはノーコメントということだった。

国内でメルカリと並び、ユニコーン(1000億円の企業評価)の可能性が高いとの呼び声高かったソラコムにどのような決断があったのか。ユーザーへの影響、今後のビジネス展開を含め、代表取締役の玉川憲氏に話を聞いた(太字の質問は筆者。回答は全て玉川氏)。

買収について

KDDIからも公式発表がありました。まずは経緯から。どのタイミングでお話が始まり、具体的な打診、その後の決定まで時間軸で話せる範囲を教えてください。

まず、今回の報道内容についてはKDDIから公式発表があったのが正しい情報です。一部報道では全株式をKDDIが取得としていましたが、実際のところは過半数を持ってもらい、連結子会社化するというのが正しい内容になります。また、この件については後日にKDDIと共同で発表会を開催しますので、今回は私たちソラコムとして回答できる範囲になります。

その上で、去年からKDDIとは独自の回線サービスでコアを提供していた経緯もあって付き合いは長く、一昨年のサービス開始以降、企業間の関係としては密だったんです。

私たちもグローバル展開の際に必要となる資金やさらなる成長について継続的に考えていたので「世界中の人とモノを繋げる」というビジョンを実現するためにはIPOがいいのかM&Aがいいのか常に検討していました。今回はそのタイミングがきた、ということです。

200億円という評価について、これまでの調達額(7.3億円と30億円の調達で現在の同社資本金は37億)から考えると妥当かなとも思うのですが、一方で想定している世界観(全てがつながる世界)や順調なクライアントワークをみるともう少し強気な評価があってもよかったのではと思うのですが?

この件についてはノーコメントとさせてください。

2014年11月設立、2015年3月の本格創業から数えて約2年半で、大資本の傘下に入る意味・メリットをどう考えて判断されたでしょうか

本当にここはエントランスと考えていて、今後の展開でひとつハードルがあったんです。それがこれから始まるであろう5Gへの取り組みでした。現在、セルラー網とLPWAでネットワークを提供していますが、新規格となるNB-IoTへの取り組みはまた新たにキャリアと交渉が必要だったんです。

なるほど。ソラコムのサービスインにMVNOの契約が必要だったように新たな規格でもまたその交渉が必要だったと

5Gは高速な通信を可能にするのと同時に、低消費電力を実現するNB-IoTという規格があります。自分たちがMNNOでいる限りいずれかのキャリアと契約しなければならず、これがボトルネックでした。さらにキャリアはこういった新しい規格をすぐにMVNOみたいに開放するとは限りません。

今回の座組みによってハードルが下がったと

LPWAがどう広がるかは想像できませんしLoRaWANやSigfoxなどのそれぞれの規格にメリット・デメリットがあります。NB-IoTの良いのは既存のセルラー基地局を使えるところでカバー率がやはり違います。

報道されている金額が事実であれば大型買収です。今後のKDDIグループでの役割が気になりますが何かそういうお話はありますか?

こちらも詳しい話は発表会で。ただ創業して短い期間で大企業がテクノロジー系のスタートアップを高く評価してくれたというのはあります。

私たちとしては「Amazonの中のAWS」と同様に「KDDIの中のソラコム」でありたいと思っています。ある時はビッグカスタマーであり、ある時はおしみない協力者でもある、そしてそこで得た力をプラットフォームとして他社に提供する。

これは完全に私見で何も調整していませんが、ソラコムは自分たちで開発し、自分たちで運用してきました。これはエンジニアにとって本当にいい環境だと考えています。今後、KDDIグループ入りしてもし機会があればエンジニアでやる気のある方々にそういう環境を提供したいですね。そういう意味でもグローバルベンダー(の傘下に入る選択肢)もあったんですが、やはり日本発グローバルと言うのはこの方法しかないと。

プラットフォームとしてのポジショニングについて

KDDIはAmazon Web Services(AWS)の導入支援などを手がけていたアイレットを買収するなど、クラウド・IoT方面にはオープンなイメージがあります。一方でソラコムはMVNOで初期にドコモ回線を活用していました。またグローバルでも特定キャリアへの依存などはなかったわけですが、今後、KDDIと一体化することで全方位プラットフォームとしての戦略にどのような影響があるでしょうか

まず、ドコモ回線のMVNOについてはそのまま継続します。これはビッグローブ買収で彼らが提供するMVNO回線が実はドコモだったりしていたので前例はあるんです。また、おっしゃられる通りKDDIさんはアイレットさんの買収などに見られるようにクラウドについてはオープンな考え方でここは私たちと近い部分があります。

より具体的にはKDDIとはコアを開放してOEM的なサービスを提供していました。今後、国内の他キャリアに同様のスキームは提供されないのでしょうか?

国内についてはドコモさんの回線を使ったMVNOとしてソラコムはサービス提供をしていますし、KDDIさんはソラコムのコアネットワーク「SORACOM vConnec Core」を用いた独自のサービスを展開中です。海外は手付かずですからより加速させていきます。

ユーザーに対しての影響

KDDIと一体化することで利用ユーザーに対してどういうメリット・デメリットが想定されるか教えてください。(価格、サービス、提携など)特に価格については特に今後のIoTサービス拡大に向けて重要なポイントになります。KDDIとの間で戦略的な価格設定など具体的な話などありますでしょうか。

これについても発表会をお待ちいただければ。

ソラコムはパートナー企業とエコシステムを構築していました。何か変化はありますか?

特に変わりはありません。ソラコムのユニークなモデルはクラウドからAPIを通じてモバイル通信をコントロールできるので、これを使えるデバイス、ソリューション、インテグレーションのパートナーのみなさんが必要になります。グループ入りしてもブランドや開発陣など全て今まで通り展開します。今後にこのエコシステムを海外展開していくのもこれまで通り同じです。

グローバル展開について

グローバル展開は当初から一件あたりの利幅が薄いビジネスモデルのソラコムにとって最重要課題であるとみていました。今回の一手でどのような未来が待っているのか、考えを教えてください

発表会での内容をお待ちいただきたいのですが、現時点で7000ある契約者数アカウントの内、800アカウントが海外なのですね。これをひっくり返したいですね。

今回のグループ入りでセルラー網も手に入れた。クラウドは全方位で連携している。「あらゆるものが繋がる」世界観に足りないピースは?

これで通信網とクラウドのありとあらゆる組み合わせを提供できるようになりました。しかし今もまだ顧客からのフィードバックは多く、私達はこれらのフィードバックをベースに、何をどう共通基盤に組み込むか、優先順位を付けてサービス開発しています。そういった観点では、データの交換やディープラーニングの提供などの技術要素についてはよく話題になるのですが、どういう形で共通基盤として提供するかが重要だと思っています。引き続きスピードを落とすことなく、SORACOMプラットフォームでの新サービスを提供開始し、お客様に喜んでいただきたいです。

ありがとうございました。

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