〝Ethereumキラー〟の異名を持つ分散型アプリエコシステム「EOS」、「ガバナンス問題に取り組まなければユーザを失う恐れがある」と専門家

by Tech in Asia Tech in Asia on 2018.7.14

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Photo Credit: Oracle Times

6月14日に EOS ブロックチェーンがメインネットを作動させてからほんの数日後、ユーザから資金を盗む泥棒行為に加担しているとして7つのアカウントが凍結された

そのニュースの騒ぎが落ち着かないうちに、ブロックチェーンを維持する人々(ブロックプロデューサーと呼ばれる人々)はさらに27のアカウントを6月22日に停止し、声明の中で「この処分についての論拠は、後日お知らせします」と述べた。香港を拠点とする EOS は Ethereum の強力なライバルであり、「Ethereum キラー」と呼ぶ者もいる。

きちんとした説明もなしにアカウントを止めたこの動きは、仮想通貨コミュニティからの抗議の声を巻き起こした。

ブロックチェーンの分散的な性質に反していると指摘する者もいる。だが、この動きを「実用的」と呼び、ブロックチェーンのセキュリティのための小さな犠牲であると考える楽天的な者も少数いる

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EOS ブロックチェーンに対する皮肉を込めたツイート(EOS では、自分のお金だと思っているものを一握りの赤の他人が凍結することができてしまう。EOS プロトコルの下では、今後も決して知り得ないような人々から成る「構造上の」組織をユーザは信用しなければならない。EOS の「構造」は、社会的にスケールできるものではないし、セキュリティホールの1つである。/ニック・スザボ氏)

このアカウント停止は EOS 仮想通貨の大規模な売りにつながり、ブロックチェーンが動き出す前のイニシャルコインオファリング(ICO)に参加した投資家が損をすることとなった。

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EOS の過去1ヶ月間の価格変動
Image credit: Coinmarketcap

ガバナンスのやり方に対する監視の強化に直面している今、EOS ブロックチェーンが約束した通りのことをできるのかどうか疑う者もいる。

EOS ブロックチェーンは分散型アプリケーション(dApp)のためのシステムという売り文句のスマートコントラクトプラットフォームである。それを支える技術はブロックチェーン業界を一変させるものであると言われている。よりスケーラビリティに富むネットワークの構築を目指し、Ethereum プラットフォームが毎秒6件までのトランザクションなのに対して、毎秒6,000件までのトランザクションのスループットを提供している。

EOS のプロトコルは2017年に Block.one によって開発された。同社が新記録を打ち立てた ICO ではおよそ40億米ドルを調達し、急速に成長した EOS 仮想通貨は時価総額で第5位となった

構造的な混乱

EOS ブロックチェーンの問題は、その「ステークホルダー」の指示系統を取り巻く不確かさに由来する。このように、きちんとしたガバナンスのプロセスが欠けていることが、構造的な混乱を作り出しているのだ。

EOS ブロックチェーンにおいて決定権を有する別のグループも複数存在する。21人の選ばれたブロックプロデューサーがプラットフォームを動かし、EOS Core Arbitration Forum(ECAF)と呼ばれる運営組織が揉め事を解決する任務に就いている。

問題が起きたのは、ブロックチェーンプロデューサーが最初に ECAF のゴーサインを得ることなく、全会一致で7つのアカウント凍結を行ったときであった。

数日後、逆のことが起きた。ブロックプロデューサーが追加の27のアカウントを処理することを、その論理的根拠を直ちに明確にしないまま、ECAF は禁じたのである。

Block.one は ECAF を誤りとし、既存のルールを削除して新たなガバナンスの枠組みに変更したいとしており、CTO の Dan Larimer 氏は EOS 構造のバージョン2.0を提案している。

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Image credit: Pixabay

変更を実施しプラットフォームのインテグリティとポテンシャルを維持するために、Block.one はブロックチェーンにおける10%の持分を使うと述べた。

しかし、仮想通貨コミュニティ内でトークンの評価がさらなるダメージを受ける前に、チームは素早く動かねばならない。

説明のない決定は失敗を導く

こういった枠組みは、全員がルールに同意している場合に限り有効だと、シンガポールマネージメント大学大学院ビジネス IT 修士課程の学長 Paul Griffin 氏は言う。

そしてこれらのルールは公表されネットワークにいる者に共有されなければならない。いかなる変更も、実施される前に全員の承認を得なければならない。

同氏は次のように警告する。

説明されていないルールや懲戒があまりに多い場合、人々は EOS 仮想通貨の購入を止めることでしょう。おそらく、かなり迅速に。

仮想通貨データのウェブサイト CoinGecko の共同設立者 Bobby Ong 氏は、EOS ブロックチェーンは早く問題を解決し可能な限り透明なプロセスを作り上げる必要があり、さもなければユーザを失う危険性があると言う。

適切な権限なしにアカウントを凍結することは「心配のタネだ」と Griffin 氏は表現する。なぜなら「仮想通貨を買っている人は、どういう状況下でアカウントがブロックされ得るのかを知りたい」からだ。同氏は今回のシナリオを、PayPal があらゆる疑わしい活動を調査する間アカウントを停止しユーザを苛立たせたことになぞらえている。

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Image credit: Pixabay

ブロックチェーンは中央集権的なやり方で動かすこともできるが、Griffin 氏は次のように強く主張している。

みんなが中央の管理者を信用しなければならないのでは意味がありません。ブロックチェーンの代わりに他の技術を使ってもいいのですから。

同氏はこう続ける。

みんながブロックチェーンを使うには信頼がなければなりません。つまり、ブロックチェーンのガバナンスが明確かつ強固でなければならないのです。信頼の置き場所を間違えたかどうかは、時間が経てば分かります。そしてもちろん、信頼が失われれば仮想通貨の価値も失われるのです。

だが Ong 氏は、EOS ブロックチェーンへの参加に同意することで、参加者は既にそのルールを受け入れていることになるという点を指摘する。

もし同意できないのであれば、他のブロックチェーンやトークンを使うこともできるのです。EOS ブロックチェーンはそれ自体が政治的なシステムであり、その理想は自身の構造に深く根付いています。(中略)本質的に非常に政治的であり、将来的にこういった状況はもっと起こることでしょう。

EOS はまだポテンシャルを秘めている

EOS ブロックチェーンのポテンシャルを考えて、まだ諦めようとしない支持者もいる。彼らはローンチ後の数週間をテスト段階だと見ている。

シンガポールを拠点とする分散型プラットフォーム企業 Linfinity の CEO である Anndy Lian 氏は、EOS ブロックチェーンによるアカウント停止の決定は、結局のところユーザの安寧を思ってなされたのだと考えている。

EOS が「犯罪的なアカウント」を凍結したのは人々の財産を保全および保護するためでした。(中略)私は EOS が正しいことをしていると信じています。

仲裁プロセスを定めることで、疑わしい活動に対して行動を起こせるようになると Ong 氏は述べる。

つまり、泥棒がシステムをハッキングして数百万ドルや数十億ドルを持ち逃げすることができなくなるだろうということです。

同氏は次のようにまとめた。

EOS は分散化の代償としてのスケーラビリティを解決することを目指しています。より中央集権的な必要性と共に成長していく一部のアプリもあると思います。EOS ブロックチェーン上の口コミで広まる dApp は1つあればよく、人々の意見は非常に素早く変わることでしょう。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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