仮想通貨の資産管理プラットフォームを開発・運営するクリプタクト、3.3億円を資金調達——ジャフコ、マネーフォワード、D4Vなど6社から

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左から:共同創業者で取締役の増田俊介氏、共同創業者で CEO の Amin Azmoudeh 氏、エンジニアリング担当の Bjorn Stromberg 氏
Image credit: Masaru Ikeda

仮想通貨の資産管理プラットフォームを開発・運営するクリプタクトは26日、シードラウンドで3.3億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、ジャフコ(東証:8595)、マネーフォワード(東証:3994)、D4V、ベンチャーラボインベストメント、SV-FINTECH(VOYAGE GROUP と SV FRONTIER による運営)、スマートキャピタル。同社では、調達した資金を用いて、日本国内の仮想通貨資産管理マーケットをリードするほか、個人のフィンテック活用推進、仮想通貨の資産管理をはじめとした投資家支援を拡充するとしている。

クリプタクトは2018年1月、ゴールドマンサックスでヘッジファンドのマネージャーを務めていた Azmoudeh Amin 氏らにより設立。アミン氏をはじめコアメンバーの多くはゴールドマンサックス出身で、金融と IT のプロフェッショナルで構成されている。投資で運用する資産やポートフォリオに仮想通貨が組み入れられるようになる日はそう遠くないと確信した Amin 氏らは、2年ほど前から仮想通貨の資産管理プラットフォームの開発に着手した。

仮想通貨取引で生まれた利益についての税金の取扱については、まだルールが明確になっていない部分があり各国各様だ。しかしながら、仮想通貨の取引成長はとどまるところを知らず、その存在を無視できなくなったアメリカ・アジア・ヨーロッパの各国政府当局は、昨年夏くらいから確定申告への圧力を高め始めた。仮想通貨の取引に関わる課税は法定通貨に価値換算することになるが、このプロセスもまた各国各様であり計算には非常に煩雑なプロセスを経る。

昨年10月の開発に着手した当時は、自分たちのために作ったという感じで、積極的に一般ユーザに使ってもらおうというつもりはなかった。(各国の税務当局から)どんなガイドラインが出て来ても対応できるように、さまざまな機能をモジュール化して作ったのが特徴だ。(Amin 氏)

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Taxpro
Image credit: Cryptact

しかし、昨年12月1日に国税庁が仮想通貨の税務に関するガイドラインを公開、この内容は個人投資家には非常にハードルが高すぎて、誰もが専用ツールを使わないと対応できないことを改めて認識することとなった。クリプタクトのチームは当初の予定を前倒しし、クリスマスイブにプラットフォームを限定公開することとなる。少なくともこの時点で、仮想通貨の個人投資家が直面する問題を解決できそうなツールは、他にはなかったからだ。

特に告知もしなかったのに、Taxpro を公開してから1時間で1,000人からサインアップあった。それから3日間で3,000人。当初は(会計事務所などが顧客の税金計算のために利用する)二次利用を禁止していたが、仮想通貨の投資家から依頼を受けた会計事務所や税理士事務所からも多くの引き合いが来るようになったので、彼らにも公開するようにした。現在、30軒程度の会計事務所や税理士事務所と契約している。(Amin 氏)

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Portfolio
Image credit: Cryptact

確定申告の時期が過ぎても、ユーザエンゲージメントを高められるよう「Portfolio」も開発。正式公開前の段階でも、毎日数百人以上のユーザが恒常的に使っているという。今回のラウンドでの調達資金の使途は、これらTaxpro や Portfolio をはじめ、個人投資家だけでなく機関投資家でも使えるレベルの包括的な仮想通貨の投資支援プラットフォームを構築するためだ。Amin 氏らは当初ブートスラップ的なサービスの開発・運営を考えていたが、仮想通貨投資家からの圧倒的な需要に半ば背中を押される形で、グロースを加速させるために外部調達に踏み切ったという。

自分たちは、金融と IT のことしかわからない。取引所や交換所、金融機関などとうまく連携して、自分たちに足りないものを増やしていきたい。情報の正確性やデータの多さで他を圧倒するサービスに育てることが目標。

クリプタクトのプラットフォームは現在、世界の18の仮想通貨取引所のデータ出力フォーマットに対応しており、ファイルアップロードにより情報を反映することが可能。現在は日本語のインターフェイスのみだが、もともと開発を英語ベースで進めていたこともあり、英語インターフェイスは近日公開を予定している。各国の仮想通貨税制にも対応可能なので、グローバルな市場展開は時間の問題だ。

この分野では海外でドイツの CoinTracking、日本国内で Aerial Partners の「Guardian」などが先行するが、それぞれサービスの種類が異なるため、クリプタクトにとって直接的な競合にはならないという。同社では、日本国内だけでも300万人いるとされる〝仮想通貨人口〟のうち、当面の目標として1%(=3万人)に利用してもらえるサービスに育てたいとしている。

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