クールジャパン機構、ワインのサブスクD2Cや卸売を展開するWincに1,000万米ドルを出資——米国で日本酒流通の拡大を狙う

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左から:Winc 共同創業者兼 プレジデントの Brian Smith 氏、CEO の Geoffrey McFarlane 氏、クールジャパン機構専務取締役 COO 兼 CIO の加藤有治氏
Image credit: Masaru Ikeda

Winc(旧称:Club W)は、ロサンゼルスを拠点にワインのサブスクリプション事業を展開するスタートアップだ。クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)と Winc は23日、都内で共同記者会見を行い、クールジャパン機構が Winc に約1,000万米ドルを出資したことを明らかにした。同社にとっては、2017年11月にクローズしたシリーズ B ラウンド(1,750万米ドルを調達)に続くもので、累積調達額は約4,260万米ドルに上る。

Winc にとって、アメリカ国外からの資金調達としては、中国の Shining Capital(尚心資本)からの出資に続くもの。ただし、Shining Capital からの調達は純粋なファイナンスであり、戦略的パートナーシップを前提とした国際的な資金調達は今回が初めてとなる。

今回の出資とあわせ、クールジャパン機構は Winc と日本酒メーカーによる日本酒新製品の共同開発、会員へのレコメンデーションによる購買促進支援、ロサンゼルスにオープンする予定のテイスティングルームを活用した日本酒の啓蒙イベント、SNS を通じた日本酒関連コンテンツの継続的な発信を推進する。

Winc は2012年の設立以来、ミレニアル世代を中心に約8万人の個人会員を獲得。Whole Foods Market を中心とした2,500店舗の小売店、1,800店舗のレストランの販売チャネルを構築。現在、取り扱っているワインについては、中間流通を省くことでボトル1本あたり小売価格13〜20米ドルでの提供を実現している。

Image credit: Masaru Ikeda

一般的に海外では、輸入した日本酒を販売する場合ワインより高価になりがちだが、Winc ではアメリカ現地の醸造施設からの商品調達や輸入後現地でのボトリングなどにより、価格帯は同じレベルを維持するとのことだ。また、常に新しい酒を求め続けるミレニアル世代を中心とする Winc の会員は、日本酒という新しい体験を受け入れてもらうには最適な消費者層であると CEO の Geoffrey McFarlane 氏は語った。

Winc の共同創業者でプレジデントの Brian Smith 氏によれば、当初は日本酒という新しい体験に関心を持ってもらうため、Winc の会員には小さいポーションの日本酒を複数入れたようなトライアルキットから販売を始めるという。また、共同での日本酒製品の開発については、すでにクールジャパン機構の協力のもと、複数の日本酒メーカーや醸造所と協議に入っているようだが、クールジャパン機構専務取締役 COO 兼 CIO の加藤有治氏は、具体的なメーカー名などについては名言を避けた。

クールジャパン機構は先月、中国での日本酒流通拡大を意図して、中国(香港・マカオを含む)でハイエンド向けワイン卸売事業を展開する「EMW(East Meets West)」の持株会社 Trio に約22億円を出資している。また、この分野では、日本酒醸造スタートアップの WAKAZE が先月、ヨーロッパ市場への進出を念頭にシリーズ A ラウンドを実施したのが記憶に新しい。

Winc のトップ3プロダクト。Winc がユーザへの D2C を通じて開発した最右の Summer Water は、Whole Food Market で販売されるロゼワインカテゴリで最も売れる商品となった。
Image credit: Masaru Ikeda

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