経営陣を鍛える「あした会議」の秘密ーーサイバーエージェントに学ぶ組織論【対談・後半】渡邊大介×諸戸友

by ゲストライター ゲストライター on 2019.7.10

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前半からの続き。企業を強くする組織はどのようにして生まれたのか。サイバーエージェントの組織づくりに学ぶ対談後半です。

対談者プロフィール

渡邊大介さん:リクルートとサイバーエージェントのジョイントベンチャー(株)ヒューマンキャピタルテクノロジー取締役。青山学院大学国際政経卒業、サイバーエージェントに入社。広告営業→プランニング部隊立ち上げ→新規事業立ち上げを経て人事採用責任者→2017年7月より現職。トレイルランニングが好物、房総半島2018準優勝、フルマラソンは2時間43分。

聞き手・諸戸友さん:1980年生まれ。2003年に新卒でリクルートの代理店に入社、2007年にベンチャー企業に特化した採用コンサルティングを行うアイ・パッションの立ち上げに創業メンバーとして参画、1,000人以上の起業家との出会いを経て、2012年クルーズ株式会社に入社後、執行役員に就任し、社長室、広報、ブランディング、新卒採用などを担当。現在は最高広報責任者CBOとしてグループのPR/IRを担当する。

諸戸:サイバーの合宿の中でも特に有名なのがあした会議ですよね?

渡邊:そうですね、あした会議は特に秀逸だと思いますね。あした会議を外から見てると、この会議体を成立させてるのは「役員のコミットメント」が第一。そして、これは完全に僕の解釈なんですが、藤田晋という人間が判断基準になっているというのが大きいと思います。これが二つ目。

現在のあした会議は、藤田晋を抜いた残りの役員がリーダーになり、サイバーエージェントグループ全社員から5名ずつをドラフト制で指名してチームを組閣し、サイバーエージェントの未来を作るための戦略案、事業案、人事案などを3つずつ提案する、提案バトル合宿です。

このバトルを役員が本気でコミットするものだから、アサインされた社員はもっと頑張るっていう好循環を生んでいます。

諸戸:役員はなぜそこまでにコミットできるんですか?

渡邊:これも完全に推測になるんですが、サイバーエージェントは上に行けば行くほど「よく働く」会社なんですよね。これは藤田社長もそこかしこで公言している。すなわちカルチャーですね。このカルチャーに仕掛けが乗っかっている。
この提案バトルは、それぞれの提案に点数がつけられて、ランキングされるんです。明確に勝敗が社内で公開されるので、そういうゲーミフィケーションがきいてる部分も多少はあると思いますね。

あとは大きい意思決定とか大きい人事異動とかが本当にその場で決まるので、決めたいやつからすると実利があるというか。

僕も自分が何かやりたいと思ったときにはアサインされたいので、個別に「アサインして下さい」ってメール送ったりしてました。意思決定機関であることが結構大事だと思うんですけど、あとは要人が集まっているので、決定だけじゃなくて、あの人を自チームに異動できますか、とか人員調整もできるのが良かったと思いますね。

諸戸:なるほど、これ面白いな。

渡邊:あと、今の規模になってあした会議のやり方で意味深いものが、藤田さんが判断しているところだと思っています。

諸戸:何が良いんですか?藤田さんが判断することの。

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渡邊:普通こういう会議体ってみんなの合議にしたり、多数決で点数化したりする。あした会議も昔はそうだったんですが、今は藤田社長が一人で審査する。一見「?」なんですけど、これがとても重要だな、と。

簡単に言うと、僕ら一般社員は「あした会議」を通して、藤田社長の判断軸をトレースすることができるんですよ。提案活動を通して「あ、今の藤田社長の課題意識ってここなんだな」とか「そんなところまで考えてるのか」ということがわかる。

単純に社長スピーチでそれを伝えるより、提案活動に対するフィードバックでそれを伝えられたほうが明らかに浸透圧が高い。しかも、あした会議に集まっているのは、その時その時のエース社員ばかり。彼らがあした会議を通して、社長の思考=OSをインストールして帰るもんだから、これはワークしますよね。

諸戸:確かに俺の言うことを聞けとか、一生懸命何を言っても浸透しないじゃないですか。でもこのやり方は、一石二鳥、三鳥あって、自分も意思決定したいから会議に出すのが一番いいわけで、それを決めるのが藤田さんだから、結果的に藤田さんの思考に寄っていく、これ、藤田さんは意図的に途中から考えてこうやってたんですかね。

渡邊:意図的なんじゃないかなって思いますけどね。あまりにもうまくいきすぎてて。

諸戸:藤田さんからするとあした会議ってひょっとしたら、そこで何か事業が生まれることよりも育成かもしれないですね。育成というか浸透というか。

渡邊:メッセージ伝達機会の側面はあると思いますよ、やっぱり。これ、めちゃくちゃ浸透率高いですよ。会議というか提案合戦なんですけど、終わった後に凄く手厚くフィードバックをしてくれる。20案以上出てきてそれを一個一個細かくフィードバックするんですよ。

そのフィードバックって、藤田晋経営学の叡智、みたいなもので、参加者はめちゃめちゃメモるわけですよね。そうして、社内にはオープンにされていない秘蔵の情報みたいなのをその場で共有されるんですけど、集まっているのはエース社員ばっかりなので、自ずと何らかの形で広まっていくんですよね。

一度出ると、この情報があるとないとで全然違うねってなって、次も呼ばれたいし、次も呼ばれるためにもバリュー出さないといけないのでみんなコミットするんですよ。役員というより社員が凄く頑張っているというのもあると思いますね。

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諸戸:でもこれってうまくいってるところって少なくないですか?

渡邊:それ系でうまくいってるのってあまり聞いたことないですね。やはり明確な判断基準になる人がいた方がうまくいくんでしょうね。

諸戸:それでいて独裁感がないもんね、これって。

渡邊:そうですね、オーナーシップはお前ね、みたいな。この会議はそれでいい気がするんです。サイバーエージェントの意思決定はあした会議だけで行われているわけではないから。だからこそあした会議に関してはそれでいいと思っていて。それこそ組織が大きくなり、藤田さんとの接点が遠くなっていくと、ここでの接点が大事になってくると思うし。

諸戸:他にメッセージ伝達手段になっているんじゃないかっていうものはありますか?

渡邊:意外にやったら良かったと思うのが二駅ルールだと思います。あれはなくさないんじゃないかな。

諸戸:何が良かったのですか?

渡邊:一緒に帰る人が出始めるんですよ(笑。途中で飲んで帰るとか、帰りのバス一緒みたいな。これが結構大事で、リアルソーシャルネットワークなんです。何が起こるかっていうと、三茶会とか恵比寿会とか勝手にできるんです。

組織にいる人たちの共通項ってたくさんあったほうが良くて、例えば、青学出身とか、趣味がこれとか、色々なネットワークがあればあるほど色んなことが伝達されやすいと思うんですね。中でもエリアって凄く大きくて、物理的に会っちゃうと話すみたいなのは最強のメッセージ伝達ヴィークルだと思っていて。

三茶に住んでいるってだけでお偉いさんもいればメンバークラスもいるわけですよ。なのでここには階層がなくて、部活動とかやるくらいだったら、家賃補助出して、会社の近くに住まわせて、土日も一緒に遊ぶようになって。価値観が近いんで、部署もグレードも関係なく、いろいろな情報共有の場になっていてよかったですね。

諸戸:なるほどね。これもただの社員満足度向上のための制度ではなくて、メッセージ伝達ヴィークルになっていたわけですね。まだまだそういうのがいっぱい出てきそうですね。

お知らせ:諸戸さん・渡邊さんは7月10日のイベント「ソフトバンク、サイバーエージェント、DeNAから学ぶ組織論」に登壇予定です。すでに定員オーバーなので、どうしても参加したい方は主催者やパネラーに直接お尋ねください

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