組織を強くする「メッセージヴィークル」とはーーサイバーエージェントに学ぶ組織論【対談・前半】渡邊大介×諸戸友

by ゲストライター ゲストライター on 2019.7.9

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ヒューマンキャピタルテクノロジー取締役、渡邊大介さん

企業の命運を握る「事業成長」。

これを支える「組織」についてはここ数年、OKRなどのフレームワークやテクノロジーを活用した可視化が進み、より効率的な構築が可能になりました。その一方、振れ幅の大きい人間性を完全にコントロールすることはできません。

では、過去に大きくなってきた企業はどのようなストーリーを経て巨大組織を作ったのでしょうか?

ということで本稿では、グループ社員数5,000人もの巨大企業に成長したサイバーエージェントにてその組織づくりの中心にいた渡邊大介さんに「組織の観点から伸びる会社」についてヒントをもらいたいと思います。

対談者プロフィール

渡邊大介さん:リクルートとサイバーエージェントのジョイントベンチャー(株)ヒューマンキャピタルテクノロジー取締役。青山学院大学国際政経卒業、サイバーエージェントに入社。広告営業→プランニング部隊立ち上げ→新規事業立ち上げを経て人事採用責任者→2017年7月より現職。トレイルランニングが好物、房総半島2018準優勝、フルマラソンは2時間43分。

聞き手・諸戸友さん:1980年生まれ。2003年に新卒でリクルートの代理店に入社、2007年にベンチャー企業に特化した採用コンサルティングを行うアイ・パッションの立ち上げに創業メンバーとして参画、1,000人以上の起業家との出会いを経て、2012年クルーズ株式会社に入社後、執行役員に就任し、社長室、広報、ブランディング、新卒採用などを担当。現在は最高広報責任者CBOとしてグループのPR/IRを担当する。

諸戸:サイバーエージェントはこれまで多くの採用や組織作りの仕組みを作ってきた会社なので、その中でうまくいったものもあればそうでなかったものがあると思いますが、それらをヒントに「スタートアップから作っておいた方がいい仕組みや考え方、文化」などをお聞きしたいと思います。

渡邊:そうですね、僕がサイバーに入社した時って「サイバーはとにかく優秀な人材を採用しています。なので、何をやっても儲かります」とずっと言っていて、ビジネスモデルにあまり囚われてなかったんですよ。

会社という枠組みをよくするということを常に言っていて、究極うどん屋やっても儲かる、みたいな。当初、経営学を大学在学中にたくさん学んでいた僕は、それはダメなんじゃないかと否定的だったんですよね。

ですが、最近はそれが良かったのかなと思っていますね。

最近ではメルカリの小泉(文明)さんも何かのインタビューで、組織づくりの重要性について語っていましたが、やっぱり当時のサイバーもネット広告事業しか柱がなく、新しいものを生み出すためには今でいうピボットをたくさんしなければならない。

そういう意味では「何やっても儲かるよね」というような事業に縛られないマインドセットが必要だったんだと思います。当時藤田さんはそう言い続けていたし、ブログにも書き続けていた。それは当時違和感でしたけど、今は凄い腹に落ちています。

諸戸:それってどこまでそうなんですかね?僕も組織作りってとっても大事だと思っていますが、でも事業がないと何も始まらないじゃないですか。人だけ集めてみんなで仲良しこよしで事業が生まれればいいですけどやっぱり最初は事業があってからっていう話もあると思うのですが、こういうのって徐々に段階を踏んでそうなっていくんですかね?

渡邊:メルカリ風なものってサイバーも作っていたんですね。ヤフオクのスマホ版みたいなもの。要は、アイデアって似通っていると思うんですよ。例えばTwitterやSnapchatみたいなものは、アイデア先行で作ってから世の中に認められるみたいな感じだと思うんです。

一方で、今のD2CやHRテックとか比較的誰でも思いつくようなものは、先にマーケットシェアを取った方が勝つというか、結局アイデアのエクセレンス度合いよりも組織的な強みが事業の勢威を決めたりする。だからどっちが重要かと言われると難しいですが、言い方変えると同じアイデアでもチームがよくないと脅威ではないということが言えると思いますね。

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最高広報責任者CBO、諸戸友さん

諸戸:なるほど、逆にそうすると例えば同じようなサービスを持っていて、後発だったとしても凄くチームに良い人が揃っていて、若い人たちで、うまくプロモーションもマーケティングもできてみたいなスタートアップが出てくるとやばいなみたいな・・・

渡邊:やばいなと思いますね。昔ネット広告業界の覇権戦争のさなかにいたんですが、その中において恐らく組織コンディションはサイバーが一番よかったんですよね。ビジネスモデルや戦略性でそんなに大きな差がついたと思っていなくて、やはり一番モチベーション高く、平均年齢も一番若く、決して一人ひとりの能力が飛びぬけて高かったわけではなく、ただただサイバーが一番コンディションの良い組織作りができていたからだと思うんですよね。

諸戸:藤田さんにとって組織作りというのは昔から大きなマインドシェアを持っていたということですか?

渡邊:そうだと思いますね。発言量としてはビジネスモデルの話より採用や組織関連の話のほうが断然多かったと思います。

諸戸:つまり、サイバーの強みって組織作りを重要視してきたのが最大の強みですか?

渡邊:というよりは「その自己認識がみんなにある」というのが強みかもしれないですね。

諸戸:自己認識・・・

渡邊:社員たちがサイバーはそういうもの(組織作り)を大事にしている会社だよねと認識しているということです。

諸戸:なるほど、そういうのって究極のブランディングですよね。どんなビジョンブック作るよりも社員が勝手にうちってこういう会社だからというのが自然に出てくるのが最強。

渡邊:そうですね、サイバーがそれができたのには僕の中に明確に答えがあって、今は多分ヴィークル(※)が違うと思うのですが、当時の時代的には藤田さんはブログで常に自身の考えを発信していました。当時はまだ社長のコミュニケーションツールがあまりないんですよね。全社集会とか動画でメッセージを流すとか大きいものになってしまって、毎日情報がはいってくるみたいなメッセージヴィークルがなくて。

藤田さんはあの頃からブログマネージメントについて書いているんですけど、とにかく率先してブログを使って発信し続けました。社長のブログにちゃんと社員がアクセスしていて、今の社長の関心ってこれだよねって常に分かっていたのが結構デカいと思います。

*ヴィークル(vehicle)とは伝達手段のこと。広告業界では特定の媒体という意味を持つ

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諸戸:それをもっと落とすと何がよかったのか?常に言い続けて認識させるという洗脳的に良かったのか、社員からすると常に藤田さんの考えていることを知ることができる安心感なのか。何が一番良かったんですかね?

渡邊:それは両方だと思いますね。経営者への理解度って、真逆に振れると凄くエンゲージメントが下がると言われていて、トップが何を考えているのか分からない、危機的状況に対して何もしていない、とかがあると反逆になってしまうんです。

ですが藤田さんは全部あけっぴろげに、しかも頻度高く投稿されていて、それは(藤田社長の経営哲学やビジョンの組織に対する)浸透圧が非常に高かったなと。まあ、サイバーの場合はブログサービス会社でもあったので、みんなブログをやっていて藤田さんが更新するとダッシュボードに出て自然と見ることになる、というのも大きかったですけどね。

諸戸:今はどうしたらいいんですかね?業務ではChatworkやSlack使ってるところが多いと思うのですが。

渡邊:そうですね、結構、伝達手段として何を使うかっていうのは大事だと思いますよ。ちょっと前だったら就活生に訴えかけたかったら、リクナビを使えばメッセージの浸透圧かけられたり、今だったら例えば10代に対してまとめて伝達したければTikTokだよねとか。要はある一つのクラスターに対して何かをガっと流行らせるんだったらこれだよね、っていうのはメディア論的にはあると思っています。

つまり何が言いたいかというと、世代が一緒とか、見ているメディアが一緒なので価値観が一緒(あるいは近しい)、ということは結構あると思っていて。

今のスタートアップは集まってくるメンバーはだいたい若い人たちだと思うのでSlackとかでやるのは代案としてはいいと思うんですけど、公私絡めてその人の価値観みたいなもの知れるTwitterとかは強いと思うし、繰り返しになりますけど同じメディア使ってるっていうのは価値観共有しやすいと思うんです。

今自分がもう一度スタートアップやるならTwitterとかでバンバン募集して、あいまいな感じを許容するメンバーを集めると思うし、若いメンバー集めるのには適切なヴィークルだと思います。

諸戸:なるほど、そういった手段としてはリアルな対話もありますよね?

渡邊:確かに、地味に飲み会なんかもメッセージ伝達手段として機能してましたね。懇親会費用みたいなのがあって、激論する場みたいなのが意図的に作られていました。

最初の頃とかは2次会3次会までバンバンあったんですよね。そこに要職者もちゃんと残っててそこで徹底的に事業や会社のことを語り合う。

リクルートでいうと「よもやま」、ホンダでいうと「ワイガヤ」がそれにあたると思うのですが、いい会社って熱弁を語り合う場がちゃんと作られていて、制度というより文化として根付いていてると思うんですよね。サイバーにもそういうのが各所にあって、飲み会で仕事の話をして熱量を高めるっていうのが結構あったりします。

諸戸:最近のスタートアップってなさそうじゃない?

渡邊:そうですよね。スタートアップって大企業にできないことをもっとすればいいと思っているんですけどね。働き方の改善や価値観の多様化などもあって、今の大企業において朝まで飲んで激論交わしてってなかなか難しいと思うんですよ。別にお酒飲まなくてもいいんだけど、そういうことってスタートアップのほうがやりやすいと思うんですよね。

他のでかい会社やスマートなベンチャー企業ができないようなことを、スタートアップでガンガンやっちゃう艦隊が現れたら怖いなって思いますね。今でもサイバーはそういうのがあって、若い子もそれを許容している。Geppoの結果とか見ても仕事の満足度よりも人間関係の満足度のほうが高くて、人間関係でエンゲージしている感じがある。

諸戸:飲みにいけというよりは激論を交わす場が日常的にあればいいんだけど、ないんだったら、何か仕掛けを作ってでもやった方がいいよね。

渡邊:ですね。サイバーの役員とかって昔からよく合宿とかしてますよね。最近ほんとそういう場での会話量って大事だなって思ってますね。(後半につづく)

お知らせ:諸戸さん・渡邊さんは7月10日のイベント「ソフトバンク、サイバーエージェント、DeNAから学ぶ組織論」に登壇予定です。すでに定員オーバーなので、どうしても参加したい方は主催者やパネラーに直接お尋ねください

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