米国市場向けシードファンドを運用する〝Xoogler〟野津一樹氏、〝Pay Forward〟を超えた精神で起業家やコミュニティの架け橋を目指す

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2019.7.10

野津一樹氏

<編注> 本稿は7月9日に発出を試みた記事。初出時に記述内容の誤りが散見されたため、再編集の上、7月10日に再発出する。

大手企業の OB や OG がスタートアップ界で活躍する流れを総じて、◯◯ マフィアと呼ぶのは珍しくなくなった。おそらく Founders Fund の創設に深く関与した PayPal マフィアに源を発するのだろうが、CAV マフィア、DeNA マフィア、ピクスタマフィアなどなど、この種の呼称を流布させた責任の一端は、弊誌にもあるのかもしれない。

さて、Google 出身者 ex-Googler のことを縮めて〝Xoogler(ズーグラー)〟と呼ぶが、その Xoogler のコミュニティを活かしつつ、新たなファンドを運営する人物がいる。主にシリコンバレーを中心に活動する野津一樹氏だ。野津氏は京都大学を卒業後、電通や BCG などを経て、Google アメリカ本社で社内スタートアッププログラムなどに従事していた人物だ。

野津氏が投資家の道を志す上で大きな影響を与えたのは、D4V の創業メンバーの一人であり、個人投資家としても知られる谷家衛氏だ。パッションを持った人を支援するという谷家氏の生き方に影響を受け、シリコンバレーに活動の拠点を移すことを決意。そこで、小林清剛氏(Chomp 創業者)や内藤聡氏Anyplace 創業者)ら日本出身の起業家に会い、彼らのアドバイスを契機に少額のエンジェル投資を開始した。

当初は Google での本業に影響を及ぼさない範囲で、起業家とのネットワーク作りに主眼を置いていた活動だったが、次第に本業で費やす時間やエネルギーを起業家支援に向けられないかと考えるようになった野津氏。そこで、彼は大学時代の友人だったインキュベイトファンドの和田圭祐氏に相談、同 VC の中でも海外展開に深く従事する本間真彦氏を共同パートナーに迎え、ファンドを創設することになったという。

新ファンドは SaaS、HR、小売、マーケティング、マーケットプレイスなど「B2B × ソフトウェア」にフォーカスし、1ショットあたりのチケットサイズを50万〜100万米ドルに想定。アメリカを中心に、プレシード/シードステージのスタートアップへの出資を計画している。LP の名前は明らかになっていないが、元々はスタートアップで、近年上場を果たしたテック系の事業会社が多く含まれるようだ。

Xoogler コミュニティの存在

野津一樹氏

現在リードオーガナイザーを務める Chris Fong 氏らを中心に2015年に創設された Xoogler のコミュニティは、全世界で5,000人以上がアクティブに活動するネットワークで、年間300件以上のデモデイや勉強会を開催している。Google を卒業した Xoogler と現役 Googler との交流も盛んで、Xoogler が持つアイデアに Google の社内起業プログラム「Area 120」が Google 社内での実現を持ちかけるケースもあるのだとか。

野津氏はファンドを始めるにあたり、くだんの Fong 氏に連絡を取ったところ、次から次へとその後の活動に役立ちそうな人物を紹介してもらったという。そうした姿勢の根底には、もちろん Google というテック界をリードする組織に所属していた者同士という共通の価値観があるのだろうが、それに加え、いわゆる〝Pay Forward〟を超えた、「互いに惜しげも無く貢献できることは貢献していく、性善説に基づいた信頼と善意のサイクルが回っている(野津氏)」と感じたという。

野津氏もまた、Xoogler コミュニティと同じく、起業家やスタートアップコミュニティの架け橋になることを、ファンドを通じて実現したいことに掲げている。シリコンバレーにおいては、例えば、同じアジア勢だけで見ても、韓国系、中国系、インド系の投資家や起業家のコミュニティと比べ、日本系のそれはまだ影響力が弱い。今回、日本の企業主導ではなく、独立系でシリコンバレーにファンドが立ち上がることもまた、注目に値する理由の一つと言えるだろう。

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