Uber出身の2人とケータリングの実業家、ステルスだったバーチャルキッチン会社を正式公開——a16zやBase10らから、累計1,700万米ドルを調達

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Virtual Kitchen Co の共同創業者(左から):Andro Radonich 氏、Ken Chong 氏、Matt Sawchuck 氏

急成長している「バーチャルキッチン」業界で11月14日、有名投資家から1,700万米ドルの出資を受け、新たな企業がステルスモードから11月14日に正式ローンチした。

サンフランシスコを本拠とする Virtual Kitchen Co は、多くの企業が参入している配送専用フードビジネスの一角に加わる。データ、オンデマンド配送インフラ、戦略的に配置されたキッチンを活用することで、レストランが最小限の先行投資でサービス提供範囲を拡大する手助けをする。

同社がこれまでに調達した金額は6月にクローズしたシリーズ A ラウンドの1,530万米ドルも含まれるが、Andreesen Horowitz と Base10 Partners が共同でリードしたことが11月14日、正式に発表された。ラウンドに参加したのは Uber Eats のプロダクトヘッド Stephen Chau 氏、Opendoor 共同設立者の JD Ross 氏、Maple VC の設立者 Andre Charoo 氏、前 Yelp のエンジニアリング担当 SVP の Michael Stoppelman 氏だった。昨年の設立後まもなく、Base10のほか、テック、フード、不動産業界の「戦略的なエンジェル投資家」から少額ながらシード資金も調達している。

Virtual Kitchen を設立したのは、かつて Uber でマーケットプレイスプロダクトチームの陣頭指揮を執っていた Ken Chong 氏と、Uber で初となる P2P 配車サービスの立ち上げに協力した後2016年に Uber Eats に転じた Matt Sawchuk 氏である。ベイエリアを拠点とする企業向けケータリングサービス Andro’s Rostilj を設立したシェフの Andro Radonich 氏を含めて、三頭体制が確立された。同社の業務としては、データを活用して配送に適したキッチンを設立する最適な場所を見つけて、これを借りるところにある。他方、レストランに対しては、新たな立地場所で迅速にスケールできるようオペレーションとテクノロジーの根幹にアクセスできるようにしている。

フルフィルメント(配送業務)を行うために、DoorDash、Caviar、Postmates、GrubHub、さらには設立メンバーの経歴から見てお分かりの通り UberEats といった有名企業と協業している。

Virtual Kitchen の CEO、Ken Chong 氏は VentureBeat にこう語った。

最小限の先行投資で配送サービスを提供することによって、レストランブランドを特定の場所から20ヶ所に増やすことができます。データを使って最適な配送拠点を見つけ、その場所を借ります。そして、レストランがフードデリバリ事業を拡大するのにすぐ使えるサービス拠点に変えていくのです。

バーチャルキッチン

Virtual Kitchen の設立者と出資者は、とりわけキッチン専用配送の業界では有名人ばかりである。Uber の共同設立者で前 CEO の Travis Kalanick 氏は、CloudKitchens という新たなベンチャーを立ち上げた。Virtual Kitchen で基本となる事業と似たようなサービスを提供するとしている。CloudKitchens は最近、4億米ドルの資金調達ラウンドをクローズし、時価総額50億米ドルとされる。Kalanick 氏は Uber では残念な結果となったが、事業拡大に向け Uber の役員を引き抜いている

Uber 事業の中で Eats の占める割合が大半を占めるようになったこともあり、将来有望な「バーチャルキッチン」の展開を推進している。だが通常は既存のレストランで配送のしやすい別のブランドや料理メニューを提供している。しかし Uber Eats はパリなどの都市で配送専用のキッチン施設を開設したが、現時点ではあまり認知されていない。

要するに、Virtual Kitchen と Uber には明らかにシナジーがある。設立者、投資家、ビジネスモデルに広がりがみられるため、Uber が今後、Virtual Kitchen に出資、さらには買収する決定を下したとしても特段驚くことではないだろう。

「ゴーストキッチン」、「ダークキッチン」と呼ばれることもあるバーチャルキッチンは、特に目新しいビジネスではない。Momofuku シェフの David Chang 氏が設立したニューヨークを本拠とする Ando は昨年 Uber に買収された。Uber Eats は Ando のデリバリパートナーでもある。それ以外のところでは、マンハッタンを拠点とする Maple も、2017年にイギリスのフードデリバリ大手 Deliveroo に買収される以前は、配送専用キッチンを運営していた。実際、Deliveroo はヨーロッパ最大のフードデリバリプラットフォームとして誕生し、最近になって Amazon がリードするラウンドで5億7,500万米ドルもの資金を調達した。Deliveroo は2017年以降、「エディションズ」という配送専用キッチンを運営している

フードデリバリ業界を概観すると、無数のスタートアップが同様のコンセプトでサービスを展開している。パサデナを本拠とする Kitchen United は、基本的に20の異なるレストランの料理の調理に対応できる「キッチンセンター」を立ち上げた。あまりにも魅力的な事業であったため、Alphabet の GV が昨年、1,000万米ドルの投資をリードしたほどだ。ロンドンとベルリンでそれぞれ同様のビジネスを展開している TasterKeatz も今年になって、VC から相当の資金を調達した。

こうした取り組みの多くで中でも特筆すべきは、「フードの起業家」がどこにキッチンを置くべきかが分かるだけでなく、どのようなサービスを提供すべきかを教えてくれる大量のデータの存在だ。ローカルな人口地理データを使うことで、特定の地域でどのようなフードの店舗ならうまくいくかが分かるほか、リアルタイムの消費者データや業務運行データを組み合わせることで、メニューの調整や新たな試みができるようになる。

リスク

サービス提供範囲を拡大したい既存のキッチンからすれば、従来からある来店型店舗を設立するのは費用がかかり、リスクの高い施策となる。繁華街で長期間リースするとなると費用が高くなり、ビジネスが軌道に乗る保証もない。バーチャルキッチンでは配送面にのみ気を配ればよいので、サービス提供地域が近いのであれば、概ね場所を問わず事業を開始できる。

投資銀行 UBS は昨年、「キッチンは死んだか?」というレポートを公表した。それによるとフードデリバリ業界の市場規模は2030年までに現在の10倍、350億米ドルになると予想されている。実際、バーチャルキッチンの台頭により調理コストが低下するので、消費者は自宅で調理するよりも出前を頼むケースが多くなる可能性があるという。

2030年までに、家庭料理の大半がネットでの注文に置き換わり、レストランやセントラルキッチンから配送されるようになるというシナリオもありえます。食品小売、食品製造、レストラン業界では予期せぬ結果がもたらされる可能性があるほか、不動産市場、家電、ロボティクスへの影響は無視できないでしょう。

いま私たちが目にしようとしているのは、レストラン事業全体がオンデマンド配送インフラとビッグデータを巡って進化していることであり、それによりレストランは注文を増やすのと同時に間接費を削減できる。こうした知見は、Virtual Kitchen の設立者が Uber で勤務していた頃に身につけたのだった。

お気に入りのレストランが Uber Eats を使って急成長するのを見るのは驚きですが、話をしてみると、既存の来店型店舗では利益を増やせなかったようです。消費者はフードデリバリアプリの利便性を気に入っており、需要の増加は今後も続くでしょう。フードの起業家に最高のプラットフォームを備えてもらい、フードデリバリエコノミーから最大限の成果を引き出してほしいと思います。(Chong 氏)

Chong 氏によると、1,700万米ドルの資金を調達したことで会社の資金が潤沢となり、新規採用、新たな施設購入、R&D に投資できるようになったという。Virtual Kitchen はすでに、サンフランシスコで複数のバーチャルキッチンの立ち上げに協力している 。現在のパートナーには Big Chef Tom’s Belly Burgers、Poki Time、インド料理アウトレットの DOSA などがある。

DOSA のオーナー兼エグゼクティブシェフの Anjan Mitra 氏は次のように話している。

今後数年は、よりカジュアルな料理や便利な配送サービスが多くの顧客の支持を集めるでしょう。費用増加、労働力不足、事業環境の変化が同時にみられる環境下、フルサービスのレストランという現状から DOSA のビジネスモデルを進化させていかなくてはなりません。

Virtual Kitchen によると、2020年初頭にベイエリア地域だけで十数ヶ所に拠点を設ける計画があるという。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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