5年後の市場規模は663億ドル「大麻業界」、ゴールドラッシュのツルハシ目指す“Flowhub”とは

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credit:Flowhub HP

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ニュースサマリ:10月15日、大麻薬局向けの小売管理ソリューションを提供する「Flowhub」はシリーズAで2,300万ドルの資金調達を実施した。同ラウンドのリードはEvolv Venturesが担当し、e.ventures、9Yards Capital、元NBAコミッショナーのDavid Stern、Venmo共同設立者兼元CEOのIqram Magdon-Ismail、Poseidon Asset Managementが出資している。

Flowhubは合法大麻企業向けに各州の規制に対応した販売、管理、分析、および拡大する方法を提供している。具体的には規制順守、販売時点管理、在庫管理、API接続を保証するツールが挙げられる。

調達資金は生産フロー革新の加速、技術人材の採用、オープンAIアプローチを用いた技術統合とコラボレーションによるパートナーシップエコシステムの拡大に使用される。

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話題のポイント:成長著しい合法大麻市場。市場規模は2025年末までに663億ドルになるとされ、年平均成長率は23.9%と物凄い加速度で成長するとみられます。

日本では「依存性」を懸念して否定的な意見が多い印象ですが、世界の見方は少し違います。なかでも医療用大麻においてはその有用性が主張されつつあるため肯定的な意見が増えています。実際、2018年4月時点では大麻由来の製品を承認している国は49ヶ国存在します。

世界の中でも医療用大麻業界のパイオニアとされる米国。Flowhubは米国で欠かせない存在になりつつあります。その背景として2つの需要が挙げられます。

1つ目が、急拡大する市場需要です。1996年のカリフォルニア州から始まり14の州が住民投票によって医療用大麻が合法化されました。

アルツハイマー病などの神経性疾患、がんの化学療法やHIV/AIDS関連の副作用など消化管などの病気に対する効果があることが認められつつあります。これを受けて、医師と患者から規制緩和の声が大きくなっているのです。

加えて、違法に関わらず生産、流通、販売を行う反社会勢グループの資金源になっていることを問題視する声が上がっています。違法の状態でも犯罪件数が減る傾向が見られないため、合法化して国が管理することである程度の制御をする需要が高まりつつあります。

2つ目が、税収増加による公共政策目的です。大麻草と派生品に課税をすることで税収を得ることができます。さらに企業利益の増加が州税収を増加させます。

2004年のバーモンド州から始まり15の州が立法プロセスによって税収政策が可決されました。これらを学校資金、薬物依存防止・治療など社会的利益に配分しているのです。

以上の2つの要望を踏まえて、国民主導による市場健全性を優先するような合法化の動きと、産業による税収創出を目指した制度化に突き動かされているのが米国の現状です。

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credit:Flowhub HP

一方、医療用大麻は国連の薬物統制条約で禁止されている(2020年3月までに規制見直し予定)ため、地域ごとのリテラシーに差があり、規制制度の足並みを揃えることができない状況です。州ごとにコントロールできる税の最適解も模索中であることもあり、規制制度は混乱の真っ只中にあるといえます。

こうした環境に柔軟に適用できるからこそ、Flowhubの存在価値が大きくなることは想像しやすいでしょう。規制対応を外部に任せられるため、利用企業はサプライチェーンのサービス拡大に集中できます。

改めて、米国の善意に任せない「仕組み化」の能力の高さに驚かされます。良いと判断すれば潮流に逆らってでも実現する国民性と仕組み化で業界を牽引してきます。

日本においても、今年5月に厚生労働省が「海外で承認前の薬であっても、安全性が確認できれば医療機関が治験で使うことを認める」と発表し、医療用大麻に前向きな動きを見せています。日本市場でFlowhubのような立ち回りがベストかどうかはわかりませんが、サプライチェーンに食い込むなら今から準備が必要となりそうです。

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