在タイ日本大使館、日系企業と現地スタートアップの協業支援イベント「BLEND」のデモデイ開催——トラベルテック特化の第2期に16社が集結

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宮田直栄氏

本稿は、バンコクを拠点に活動するイノベーションコンサルタントの宮田直栄氏による寄稿。

宮田氏は、旅行者が残った釣り銭を匿名寄付できるサービス「Coin⇆Back」をバンコクで共同設立。ローカルオンデマンドサービス「ServisHero」のタイにおけるオペレーションや人材獲得を統括した。現在は、世界を目指すスタートアップを後押しするプログラム「JETRO Innovation Program(JIP)」のタイにおけるメンターを務める。

チュラロンコン大学サシン経営大学院で MBA を取得。


在タイ日本大使館は23日、Digital Economy Promotion Agency(DEPA)とタイ国政府観光庁(TAT)の協力を得て、在タイ大手日系企業、タイ大手企業、タイのスタートアップ企業による協業を支援するためのイベント「BLEND」の第2期デモデイを開催した。

本イベントは、日本とタイの革新的スタートアップと両国の企業の戦略的提携を促す「Open Innovation Columbus(OIC)」という活動の一部であり、今年10月に開催された第1期の電子・機械製造部門(FactoryTech、LogiTech、HRTech)に続いて2回目の開催。今回は旅行産業(TravelTech) を対象にしている。

周知の通り、タイへの旅行客は年々右肩上がりに上昇しており、世界の人気観光地ランキングでは常に上位に位置し、海外旅行収入額ランキングでもアジアで1位だ。多くの企業がこのチャンスをビジネスに活かそうと集まっているが、近年では特に Airbnb や Grab などのシェアリングサービスの普及が消費者の購買行動を大きく変えたと言えるだろう。今後、日本の企業がインバウンドとアウトバウンド市場を制するには、現地市場への深い理解に基づくオープンイノベーションが必要不可欠となる。

こうした環境を背景に、現地の市場や消費者ニーズを熟知している現地トラベル系スタートアップと資金、人材、技術的蓄積、営業ネットワーク、顧客データなどの多大なるリソースを保有する観光系大手日系企業の戦略的提携を促すことで、オープンイノベーションを起こそうというのが OIC の狙いである。

今回のイベントには、観光系大手日系企業との協業に関心を持つタイのトラベル系スタートアップ16社が集まり、在タイ日系企業とタイ企業幹部関係者約140名を前に自社サービスの PR を目的としたピッチを行った。日本から JAL、ANA、JTB、HIS のほか、タイ航空やバンコクなどに拠点を置くAgoda(2003年にタイのプーケットで設立、2007年にアメリカの Booking.com が買収)が参加した。

開会挨拶では、着任後初の参加となる在タイ日本国大使館の梨田和也大使より OIC の目的や意図、タイと日本にとって今後オープンイノベーションがいかに重要となるかが語られた。

イベントには、DEPA の Executive Vice President である Chinawut Chinaprayoon 氏、GDS 大手である Amadeus の Community Manager であるStephanie Strunk 氏、TakeMeTour 創業者で COO とCMO を務めるNoppon Anukunwithaya 氏を招き、政府、旅行 IT ソリューション、スタートアップの3つの観点から、今後のトレンドや課題などついてのパネルディスカッションが行われた。

以下、参加したタイのスタートアップ企業と発表内容を紹介する(紹介順はピッチ登壇順)。タイのトラベル系スタートアップが現地観光系大手日系企業と出会える機会は限られており、今回のイベントが今後の協業につながることを期待したい。

<General / Specialized Booking & Search>

Deetrip

CEO Christophe Secher 氏

Deetrip は、タイ人向けホテルサービス1日利用券予約サイトである。4つ星や5つ星ホテルは設備が整っているのにもかかわらず、利用率の低い施設(ジム、スパ、プール、レッスンなど)が多数ある。これらの施設を1日利用券として販売し、ホテルに新たな収益源を提供している。タイ国内で既に250以上のホテルと提携しており、現在は資金調達中。競合の Resort Pass(アメリカ)は1,170万米ドルの資金調達に成功している

Socialgiver

共同創業者 Aliza Napartivaumnuay 氏

Socialgiver は、観光やライフスタイルを通じて社会貢献したい観光客と CSR(企業の社会的責任)活動に取り組む企業を繋ぐオンラインサービスである。タイでは毎年全体の約半数に上る約45%(約4兆円)ものサービスが利用されないままとなっている。これらのサービスには、ホテルの空き部屋や飲食店などの空席、売れ残りチケットなどが含まれ、当日売れなければ価値を失い、提供する企業にとっては機会損失となる。

そこで企業は CSR 活動の一環として、これらの商品を Socialgiver のプラットフォームで売り出すことにより新しい価値を生み出し、消費者は安い価格で購入できる。CSR 活動を目的として、企業は興味のある NGO にその売上を募金できる仕組みだ。消費者・企業・NGO 間の WIN-WIN-WIN を目指す。現在300を超える企業がパートナーとなっており、日系企業との協業でさらなる拡大に取り組む。

Golfdigg

CEO Thera Siricharoen 氏

Golfdigg は、ゴルフ場予約アプリである。150コース以上のゴルフ場から、条件にあったゴルフ場の検索や空き状況が確認でき、予約は6ヶ月前〜当日まで可能。タイには日本人駐在員3万人を含む、30万人もの日本人インバウンドゴルフ客がいる。予約時の言語問題解決のため、タイ、英、日、韓の4ヶ国語に対応言語を増やし、タイに加えベトナム、台湾、マレーシアにも進出する予定。

MuayThaiOK

CEO Thanont Manorotkul 氏

MuayThaiOK は、ムエタイ教室やムエタイ観戦チケットの販売サイトである。タイの国技であるムエタイは世界中でも人気があり、グローバルの市場規模は3,000億円に上るといわれている。しかし、言語サポートやマーケティング力が弱いため、タイへの観光需要を取り込めていない。そこで見込み顧客を獲得するため、ムエタイのマーケティング戦略と実行に注力する。

世界10都市のジムやタイの地方のジムとパートナーを組み、集客面のサポートを行っている。MuayThaiOK のサイトでは、ムエタイ観戦チケットやプロから指導を受けられるグループレッスン、パーソナルレッスンの購入を行うことができる。今後資金調達を経て、ムエタイグッズの販売やスポーツツーリズムの拡大に取り組む。

<Home Sharing & Rentals>

FlexStay

CEO Mario Peng 氏

FlexStay は、中期滞在民泊予約サイトである。タイ国内にも日本同様にホテル関連の法律が設備されており、許可を持たない者の30日以下の賃貸は違法になる。しかし、長期賃貸となると1年以上の契約となるのが一般的。そこで同社では、1ヶ月〜12ヶ月の中期滞在を目的とした旅行者、学生、インターン生、フリーランサー、高齢者に着目した。3D の間取り図と標準化された部屋の詳細情報が提供されているため、非常に分かりやすい。今後借家人のマネージメント・オペレーターとしても取り組む。

<Car & Ride Sharing / Transit Navigation>

Drivemate

CEO Silratth Sukwatthanasiri 氏

Drivemate は、ピアツーピア(P2P)のカーシェアリングサービスである。タイの新車はメーカー国価格と比べて1.5〜3倍と高額であり、その上多くの車は使用されていない時間が1日のうちの95%を占めるとのこと。Drivemateでは、アプリで自分の周辺にある最適な車の予約を数分で完了できる。このサービスには、保険やメンテナンスなども含まれている。今後資金調達を経て、空港乗捨てサービスやサブスクリプションサービスの導入をしていく予定。交通渋滞に苦しむ東南アジアにとってカーシェアリングは切り札となるか。

Tuk Tuk Hop

CEO Chayakarn Sukruay 氏

Tuk Tuk Hop は、オンデマンドのトゥクトゥク専用配車アプリである。トゥクトゥクは観光客に人気が高く、観光エリアでは主要交通機関のひとつになっている。アプリの利用で外国人利用者は目的地や値段交渉など通訳が必要な場面でのコミュニケーションの難しさも解消。アプリを使うことで目的地や値段交渉の必要がなくなる。既にホテルや旅行代理店と協業しており、今後1日乗り放題サービス(399バーツ〜、1,450円以上相当)や自社の電気トゥクトゥクを展開する予定。

Viabus

CEO Intouch Marsvongpragorn 氏

Viabus は、リアルタイム公共交通機関運行状況アプリである。発展途上国の公共交通機関は複雑な上、時間通りに運行されてない場合が多い。そこで同社は、リアルタイムでの交通機関状況や渋滞状況、路線情報、ルート案内などが一目でわかるアプリを開発。アプリには、電車、バス、商用車、ミニバス、ボート、バン、ローカルバスなどの公共交通機関の情報が全て掲載されている。既にユーザ数は100万人を突破しており、現在はタイ人だけでなく旅行客ユーザの獲得にも注力している。

<Personalized Travel>

SNEAK

CEO Thunyathorn Penbumrungvong 氏

SNEAK は、ビジュアル検索旅行計画サイトである。旅行の計画には時間や手間がかる。また最近では、Instagram や Pinterest 等の画像コンテンツを元に旅行プランを作成する若い層も増えてきている。同社では、画像をベースに自分の好み通りに目的地が選択でき、ルート案内や旅行計画、チケットの購入までモバイルサイト内で簡単に完結できるサービスを開発した。来年はアプリ開発、そして2020年東京オリンピックに向けて、パートナーシップ・顧客獲得に注力していく。

<Hotel Management>

Newlegacy Hospitality

CEO 松田励氏

Newlegacy Hospitality は、自社ブランド「Kokotel」を展開するホテルオペレータである。小規模ホテルのバックオフィス業務等を集約することで、質の高いサービスを安定した低いコストで提供している。コンセプトは「家族や友達と共に、安価で快適な宿泊」であり、広いロビースペースやカフェ、子ども向けのスペースを配置している。現在約15店舗のホテルを運営しており、さらなる拡大を目指す。

HandiGo

CEO Sakdidet Poolsawad 氏

HandiGo は、ホスピタリティ向けコンシェルジュアプリである。外国人観光客を受け入れる際に生じる言語の問題は多く、ホテル側の受け入れ体制は十分でないことがほとんどだ。同社では、そのようなホテル側のカスタマーエンゲージメントの課題解決をするため、ホテルの情報提供、ルームサービス、 広告、ライブチャットでのカスタマーサービスなどを多言語表示するサブスクリプションサービスを提供している。今後はホテルのみならず、アクティビティや体験ツアー領域にもサービス展開を予定している。

<Activities, Touring & Info>

TakeMeTour

COO & CMO Noppon Anukunwithaya 氏

TakeMeTour は、ピアーツーピア(P2P)のローカル体験サイトである。地元との共存共栄を目的とし、東南アジアのローカルアクティビティが体験できる。すでに世界65都市で25,000もの体験を提供している。地元ツアー提供者のバックグラウンド調査をしっかり行うことで、顧客満足度98%を獲得。現在タイ国政府観光庁と協業しており、今後「Local Table」として地元限定グルメサービスなどに事業領域を広げていく。

Local Alike

シニアマーケティングディレクター Jakrapol Baesuvan 氏

Localalike は、地域活性化に特化したローカル体験サイトである。同社では、貧困に悩む地域問題の解決を目的に、これまで7年間で培ったテクノロジーやマーケティング、ビジネス経験やノウハウを活かし、地域自らがローカル体験やアクティビティを生み出すサービスを提供している。その地域ならではの自然や歴史・文化、食育などを取り入れたユニークな体験プランが特徴。すでに5,400万バーツ(約1億9,600万円)の収益を上げており、タイ国内の42地域で貢献している。引き続き、サステイナブルなコミュニティビルダーとして政府や企業と協業しながら市場拡大に向け展開する。

Tourkrub

CEO Jakapan Leeathiwat 氏

TourKrub は、タイ発のアウトバウンド向けオンライントラベルエージェンシー(OTA)である。24時間いつでも膨大な数の商品(民泊、空港券、ツアーパッケージなど)を閲覧、購入できる。現在シリーズ B 資金調達中で、今後は東南アジア全域にサービス拡大を予定。

Infinite FREAK Lab

Active Principle Investigator の Sornchai Chatwiriyachai 氏

Infinite FREAK Lab は、最先端ARを活用した観光・歴史コンテンツプロバイダである。空間と CG などで作られたオリジナルキャラクターを融合させた新たなガイドサービスを提供している。ガイド不足や通訳不足の解決策として、地域活発化に貢献している。その他にも美術館やエンターテイメント分野に進出する予定で、現在ビジョンを共有できるパートナー募集中。

<Luggage Delivery>

AIRPORTELs

CEO Anan Prasertrungruang 氏

AIRPORTELs は、タイ発の荷物預かり、当日デリバリサービスである。荷物を託し、タイに到着後、初日から手ぶらで仕事や観光を楽しむことができる。ホテルや空港への配送サービスは荷物1個につき199バーツ〜(700円以上相当)、荷物預かりサービスは1日100バーツ(約360円)と非常に安価。どの荷物もリアルタイムで荷物の位置確認ができる上、10万バーツ(約36万4,000円)の保険が適用されているのも安心である。スワンナプーム国際空港とドンムアン空港はもちろんのこと、その他6ヶ所のショッピングモールでサービスを提供している。アジア展開のため、現在プレシリーズ A 調達に向けて準備中。

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