在タイ日本大使館、現地日系企業と日・タイのスタートアップの協業を模索するイベント「BLEND」の第1期デモデイをバンコク市内で開催

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高稲美里氏

本稿は、バンコクを拠点に、求人メディアや人事向け SaaS を提供する TalentEx で、インターンとして勤務する高稲美里(たかいね・みさと)氏による寄稿。

高稲氏は群馬県出身。新潟大学人文学部に在籍中で、今年8月から4年次を休学し TalentEx にインターンとして参加している。

本稿内の写真は、両角光士郎(もろずみ・こうしろう)氏による撮影。TalentEx に関する、これまでの記事はこちらから。


在タイ日本大使館は11日、バンコク日本人商工会議所(JCC)の協力を得て、バンコク市内のコワーキングスペース「Glowfish Sathorn」でタイの日系企業と現地のスタートアップによる協業を図るためのイベント「BLEND」の第1期デモデイを開催した。

このイベントは、日・タイの革新的スタートアップとタイの日系企業の戦略的提携を促す「Open Innovation Columbus(OIC)」という活動の一部だ。OIC 関連イベントとしては、同年3月に在タイ日本大使館が主催した「Rock Thailand」に続くものとなる。

タイ財閥と日本のスタートアップとの協業可能性を模索する意図のあった Rock Thailand とは対照的に、BLEND ではタイの日系企業と現地スタートアップとの協業で新事業が生まれることを意図しているようだ。FactoryTech、LogiTech、HRTechの3分野から日・タイのスタートアップ11社が集まり、日系企業幹部約150名を前にピッチを行った。

イベントではまた、豊田通商タイ現地法人副社長の中川裕二氏のほか、デンソーインターナショナルアジア副社長の末松正夫氏、電通 X タイランドマネージングダイレクター小池和雄氏など、東南アジアのスタートアップとの積極的な協業を図る日系企業の経営幹部によるパネルディスカッションも行われた。

以下に、参加スタートアップの発表内容を紹介する。紹介順はピッチ登壇した順。

System Stone(タイ)

System Stone はメンテナンス計画を容易に管理・作成できるアプリケーションを提供。エンジニアだけでなく生産部や一般スタッフも利用でき、装置のダウンタイム、運用コスト標準化されたワークフローを削減し生産性向上を支援する。1ヶ月100米ドルから始められる手頃さから、既に1,000社、4,500人のエンジニア、66県(チャンワット、タイ国内には77のチャンワットがある)で導入済。タイ国家イノベーション庁とイスラエル AGW Group が支援するアクセラレータ「SPARK」第1期から輩出。

Enres(タイ)

Enres は普段使用している電力の最大30%の節約を実現する、AI テクノロジーによる新しい省エネ代替手段を提供している。24時間体制でエネルギーの使用状況を監視・管理できるため、不測の事態が起きた場合にはアプリケーションを通じて通知が届く。病院や学校、ホテルや工場などにで導入実績がある。タイ国家イノベーション庁とイスラエル AGW Group が支援するアクセラレータ「SPARK」第2期から輩出。

ABEJA(日本・シンガポール)

ABEJA は、コア技術である AI プラットフォーム「ABEJA Platform」を活用し、各種ソリューションをさまざまな業界に提供している。蓄積されたビックデータから、人間の手を介さずに、そのデータを適切に表現する特徴量を自動的に抽出するディープラーニングを活用しサービスを提供している。昨年には、デンソー・インターナショナル・アジアとタイ国内で工場の業務効率化に向けた協業を開始した。

スカイディスク(日本)

スカイディスクは、IoT のセンサデバイス開発から、集まったデータを AI で解析するサービスを提供。製造業への導入実績が多く、機械の異常診断、歩留まり率の向上、検品の精度向上などを実現することで、スマートファクトリー化推進に貢献している。同社のクライアントである大手メーカーがタイ 国内で IoT および AI を使った事業を始め、これを契機にタイ進出を開始した。

Giztix(タイ)

GizTix は運送会社のマーケットプレイスで、日本を含む8カ国で利用可能だ。運送会社の手配は一般的に手間のかかるプロセスを必要とするが、GixTix ではチャットで見積を依頼後、最長でも国内配送なら2時間以内、ASEAN 内配送なら10時間以内、欧米向けの配送なら2日間以内に見積価格を複数の運送会社から受け取ることができる。「TECHSAUCE SUMMIT 2016」のピッチコンペティションで優勝

DRVR(タイ)

DRVR は、アジア地域におけるトラック運送効率を分析するプラットフォーム。運送の世界に IoT を持ち込むことで、運送ドライバーの行動分析を行い、より効率のよい運送パターンを創出することを支援する。車両の燃料消費量温度などもモニタでき、二酸化炭素排出量やドライバが十分な休憩を取っているかも確認できる。毎日70件の交通死亡事故が起きているタイでは、より効果が期待される。

スマートドライブ (日本)

スマートドライブは車などから走行データを収集し、それらを可視化・解析するサービスを提供するモビリティ IoT スタートアップ。SmartDrive Fleet(法人向けリアルタイム車両管理)、SmartDrive Cars(個人向け定額制コネクテッドカー)、SmartDrive Families(個人向け高齢者見守り)、Public Service(危険エリアのマッピングや交通状況共有)など複数のサービスを提供している。

GROUND(日本)

GROUND は、倉庫におけるピッキング作業を始め、物流オペレーションの最適化のために、ハードウェア(ロボット)とソフトウェア(AI)の両方を組み合わせたプラットフォームを一気通貫で提供できるのが特徴。消費者の行動を把握できる顧客データベースを元に機械学習を用い、需要予測に基づいて製造数・販売数を予測し、物流業務全体の業務効率の改善を図る。

Helpster(タイ)

Helpster は労働市場の改善と採用活動の効率化を、テクノロジーを用いて実現するタイのスタートアップ。非正規雇用者の増加や給料未払などの労働者が抱える問題を解決すべき課題としてとらえ、労働環境の改善と QoL(Quality of Life)の向上を社のビジョンに掲げている。全ての求職者に面談やトレーニングを行っているため、質の高い人材の効率的な採用が期待できるとのこと。

Occa(タイ)

Ooca は、現代社会において自殺者や精神病患者の増加を課題としてとらえ、アプリを通じて精神科医と面談できる環境を通じて、自信と自尊心が持てるよう専門的なカウンセリングアドバイスをオンラインで提供する。法人と個人の両方が利用可能。タイに加え、中国とシンガポールにも展開。タイ国家イノベーション庁とイスラエル AGW Group が支援するアクセラレータ「SPARK」第2期から輩出。

TalenEx(タイ)

TalentEx は、日本語人材に特化した求人プラットホームとして提供。加えて、業務効率化ソフトウェア「MICHIRU RPA」の販売も行っている。日々の単純業務をロボットに任せて自動化することで、それに充てていた時間をスキルアップや他の業務に繋げられるのが魅力のひとつだ。特に生産年齢人口が低下傾向にあるタイでは一層の活用が期待される。

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