
ピックアップ:Zomato’s valuation could cross $3 billion in new financing
ニュースサマリー:『Economic Times』によれば、インド国内で最大級のフードテック企業「Zomato」が近日中に約6億ドル規模(約650億円)の資金調達を実施する予定だという。リード投資家として、過去二回投資歴のある、中国Eコマース・アリババの関連企業「Ant Financial(アリペイ運営企業:以下アント)」が参加する見込みだ。
調達額約6億ドルのうち、アントが約2億ドルほどを出資する予定だという。アントは昨年2月の出資で既に14%ほどのシェアを保有しており、その後昨年11月の再出資で23%までシェアを伸ばし、筆頭株主となっている。今回の投資で、そのシェアは29%にまで上る見込みだ。
Zomatoはグルガオン発、フード関連サービスを複数提供するテック企業。アプリを通したレストラン情報の提供や、Ubereatsのようなフードデリバリー・サービスをメインで提供している。インド国内では競合Swiggyと並んで代表的なフード・デリバリーサービスの一つである。
Economic Times誌のインタビューに対し、Zomatoは以下のようにコメントしている。
私たちは、外食・フードデリバリーサービスを拡大・持続可能なものにするために、新しいラウンドで資金調達をおこなっています。

話題のポイント: 本ラウンドに関する注目ポイントは主に3つです。
1つは本ラウンドによって、Zomatoの評価額30億ドル規模に到達する点。2019年前半の収益が昨年から3倍の2億ドルに到達していることから分かる通り、凄まじい速度で成長しています。今やインド・テック市場の代表格となるユニコーン・スタートアップになっています。
2つ目に、競合Swiggyとの激しいマーケット競争。以下に比較画像がありますが、今回の調達により、評価額はSwiggyに並ぶ規模になったことが分かります。さらに6億ドルの調達で、調達総額は13億ドルに達するため、この点もSwiggyに並ぶ勢いです。

しかしSwiggyも現在、5億ドル規模の調達ラウンドに向けて動いているとの報道もあり、その場合同社の評価額は40億ドル規模に到達する見込み。激しいマーケットシェア獲得競争は今後も継続すると予想されます。
Swiggyの投資家の中にはアリペイの競合サービスであるウィーチャット・ペイの提供企業Tencentの名も挙がっています。インド市場を舞台にしたアリババvsテンセントの代理戦争のような見方もでき、一層興味深い戦いに思えます。

そして3つ目に、アントがZomatoに出資する理由に関してです。公開情報のなかに明確で分かりやすい記述は見当たりませんでしたが、背景として考えられるのが、アントの戦略的投資先であるインド国内最大の決済アプリ「PayTm」とZomatoの連携を強化することです。
過去にアントはPayTmに対し多分に技術提供を行なっている歴史があり、また株式の25%を保有しています(※正確には親会社One97の株式)。Paytmは、アントによる東南アジア・インド地域への金融技術輸出・投資戦略の中でも、最も目覚ましい成功事例だとされており、かつ長期的なアリババグループのインド進出における強力なパートナーになり得ます。
つまりアントは、PayTmが盤石にインド市場のマーケットリーダーとして独走させるため、Zomatoとの連携を強化させる可能性があるということです。たとえば考えられる連携強化の手段として、ZomatoアプリでのPayTm利便性向上策が考えられます。
Zomatoでは現在、フードデリバリーでオーダーをする際にPayTm決済を利用することができますが、Zomato内のPaytmウォレットの預金残高がなくなる度に、PayTmからZomatoのウォレットへと一回一回チャージする必要があります。これは少し手間のかかる作業ですので、このウォレットの分離を解消し、より手間なくPaytm決済を行える仕組みを開発するという方法が考えられます。
他にもZomatoアプリ内で掲示・紹介しているレストランでの店頭決済でPaytmを優先して利用してもらうような機能を提供などが考えられます。技術面・マーケティング面で、両社の関係を強化することが狙いではないかと感じます。
約4.5億人のユーザーを持つPaytmとの連携強化は、Zomatoにとってもよりサービスの利便性を高め、新規ユーザーを獲得するためのまたとないチャンスであるはずです。また、アントの方針から考えるに、Zomatoへの投資がキャピタル・ゲインだけを目的としている可能性は非常に少ないでしょう。今後のZomato及びPayTm、アントの3社の動きに注目です。
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