3年で200億円動かしたOLTA、信用のデジタル化に成功する

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左から:OLTA共同創業者の武田修一氏と澤岻(たくし)優紀氏

創業から3年、サービスインから2年。たったこれだけの期間に200億円(※)を動かし、国内金融機関が熱視線を送っているスタートアップがいる。OLTAだ。

彼らの編み出した「クラウドファクタリング」は24時間以内に企業が発行する請求書を審査し、買い取るというもの。特に資金繰りに課題を持つ中小企業の資金ニーズに的確に応え、銀行融資のまさに「オルタナティブ」を実現した。

躍進の秘密は独自のAIによる審査の自動化だ。24時間以内の完全オンライン(非対面)・2社間ファクタリング審査ができるアルゴリズムを持っているのは今のところ、国内では彼らしかいない。

金融機関との協業も進めており、2019年の西武信用金庫とのビジネスマッチングを皮切りに、2020年には株主でもある新生銀行と合弁会社を設立、「anewクラウドファクタリング」の提供を開始している。8月には群馬銀行、十六銀行との協業で念願のOEMモデルもスタートさせた。昨年11月には 日本郵政キャピタルから2億円の資金調達 も実施しており、累積調達総額は32億円にのぼる。

彼らはこの先、どのような成長ストーリーを夢想しているのか。創業者二人の話を元に考察してみたいと思う。

ネオ・ファクタリングの登場

十六銀行がOEMで開始したクラウドファクタリングサービス

その前に今一度、ファクタリングという手法について説明しておきたい。請求書の買取モデルは別に新しいものではなく、掛売りで発生する支払いまでのタイムラグを短縮するために生まれた手法で、主に3社間と2社間の方法がある。3社間は請求書を売りたい事業者に対し、それを発行した請求先企業にファクタリング事業者が照会をかけて買い取る。

当然、請求書を早く現金化したいという意向はバレることになるので、信用問題に発展する課題があった。一方、2社間ではファクタリング事業者が直接請求書を買い取る。通常の掛売りサイクルで入金があった段階で、その債権を買い戻せばよいので、請求先企業が知ることはない。

ただ、この方法だとファクタリング事業者は大きなリスクを抱えることになる。発生している請求自体が嘘っぱちかどうか知る方法がないからだ。なので、従来手法では面談など極めて属人的な手法と、高額な手数料を設定することで成立させてきた。

OLTAはじめ、MF KESSAI(アーリーペイメント)やフリーランス向けのYup、フリーナンス(GMOペパボ系列)など、ここ最近出てきている「ネオ・ファクタリング」のスタートアップたちはそれぞれこの2社間ファクタリングの手法を採用しつつ、審査の部分で独自のテクノロジーを活用してこの問題を解決している。

AIの精度についてOLTAの二人はこう話す。

「審査は定量的な決算書や入金明細などのデータと、取引実績のような定性的な情報を組み合わせて実施します。特に機械学習が貢献するのが定量情報です。創業当時はまだ手入力などの部分が残っていましたが、現在は8割から9割ほどまで自動化できています」。

一方で人の手が不要になるかというとやはりそうではない。例えば「怪しそう」という事業者の判断は、それについてのスコアリングを構築するより、人が担当した方が効率的だったりする。ハイブリッドなのだ。現在、同社は全体で30名ほどの体制でこのサービスに取り組んでいる。

中小企業の「信用」問題

このようにOLTAは、AIを活用することで極めて短期間での売掛債権買取を実現した。このことが示すもう一つ重要な事実がある。それが「信用」の大量生産だ。個人事業や中小企業で金融機関から融資を受けたことがある方なら分かると思うが、通常、こういった資金調達には非常に手間と時間がかかる。

開示情報がある大手企業とは異なり、中小零細は情報非公開で数も多く出入りも激しい。これら企業の与信は信用調査(帝国データバンクや商工リサーチ)や地銀などの担当が足を使って見極め、融資枠を決めていく。

ただ、金利でビジネスができた時代であれば丁寧な信用調査も問題にならなかったが、今はそうはいかない。さらに感染症拡大は金融マンの「足で稼ぐ」手法をストップさせた。金融機関のデジタル化は待ったなしの状態になったのだ。二人は地銀と話をする過程、共通した課題を見出した。

「伝統的な金融機関にとっての課題は短期・小額の対応です。地銀は法人口座を5万、10万件持っていたりしますが、やはり1人月の工数をかけられるのは大手に偏ってしまいます。デジタル化が必須であって書類からの脱却、これまで足で稼いでいた信頼関係をどう再現するか、こういったテーマへの対応が感染症拡大も重なって急務になったのです」。

OLTAは創業当時から自分たちをホワイトレーベルとして、こういった地銀などの金融機関に提供する「提携戦略」を取っている。8月には群馬銀行、十六銀行との協業でこれを実現レベルに引き上げたのだが、実は、信用を生み出す上でもこれら提携は重要な役割を果たす。

彼らのAIエンジンの燃料は「データ」だ。質の良い中小企業のデータを協業先と協力して集めることで精度はさらに上がる。一方、定性的なデータについては提携する地銀がそれぞれの人員を配置することで、エリア毎に握ることができる。やはりハイブリッドなのだ。

信用をデジタル化したアントグループ

中小零細企業の信用をデジタル化すればどうなるのか。明確な答えがひとつある。それが中国金融大手、Ant Group(アント・グループ/螞蟻集団)だ。

Alibaba(阿里巴巴)の金融サービスを担う彼らは、モバイル決済アプリ「Alipay(支付宝)」によって一躍、中国金融インフラの一番手に躍り出た。今月25日に上海証券取引所に提出された上場申請書類によると、2019年通期の売上高は1206億元(約1兆8570億円)にものぼるそうだ。目標とされる時価総額は2000億ドル(約21兆3000億円)と金融テクノロジー銘柄としては世界トップクラスとなった。

この彼らをして重要なテクノロジーと言われるのが信用評価の「芝麻信用(セサミ・クレジット)」になる。信用スコアリングの仕組みで、このスコアが高いとAlibabaグループ内のECサービスでより信用度の高いプロフィールを表示できたり、ローンを借りやすくなったりする。中国最大の買い物日となった独身の日(W11, ダブルイレブン)はたった1日で384億米ドル(約4.2兆円)を売り上げたが、これを支える中小零細の資金繰りを実現したのが芝麻信用なのだ。

同じことがやはり日本でも早晩起こる。日本の中小企業は約360万社と言われるのだが、昨今の感染症拡大の問題を受けて一気にデジタル化の流れが生まれた。例えば小さなコマースをすぐに立ち上げられるプラットフォーム「BASE」では、GMVが前年同四半期比で196%増(2020年第2四半期)と大きく跳ね上がった。主に飲食店などが、急な売上の落ち込みをECでカバーしようとした結果と予想される。

では、こういった小さな事業者が新たにECを立ち上げる時に必要な資金はどう調達すればよいか。

パッと思いつくのは日本政策金融公庫や馴染みのある地銀融資になるだろう。当然、初回であれば手続きは複雑で、何度も面談が必要になる。しかし、もしこの信用がデジタル化されていて、かつ、身近な金融機関でそれを参照できればどうだろう。

OLTAが目指す中小企業の資金繰り問題の解決方法は決してファクタリングだけではない。クラウドファクタリングという手法を用いて得られた信用スコアこそ、本当の解決方法につながる武器となるのだ。

どこが買うのか

OLTAの中長期成長戦略のイメージ(資料提供:OLTA)

ここまでお二人の話を元に考察してきたが、当然ながらコマースや金融レイヤーのプレーヤーたちはこの辺りを研究し尽くしている。信用スコアの話題は例えばクラウドソーシングの分野でも議論の的になっている。OLTAのインパクトはこの「机上の空論」を具体的なHowに落とし込み、実際に動かしたことだ。

となると、次の注目は彼らがどうやってAlibaba・Ant Groupクラスのインパクトを生み出すのか、という点になる。例えば国内EC大手と言えば楽天やヤフー、ファクタリングも手掛けているGMOインターネット・グループもあれば、新興組としてBASEやヘイも面白い。

もちろん単独での上場は前提としても、彼らの持つ信用エンジンがどこのグループと連携するのか、はたまた自分たちでグループを形成するのか、少し想像するだけでも様々なサービスの予感がする。短期融資や保険、会計、資産管理などなど。少し視点を変えてBaaSのような考え方もあるかもしれない。

OLTAはどこに向かうのか、引き続き興味深く追いかけてみようと思う。

※補足:200億円は累計の申込金額。これを全てOLTAが買い取っているわけではないので補足しておく。