シェア買い「KAUCHE(カウシェ)」が1.8億円調達、新たなソーシャルeコマース戦争の起爆剤となるか

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X Asia 代表取締役の門奈剣平氏(Image Credit : X Asia)

ニュースサマリ:友人などと共同購入するソーシャルEコマース「KAUCHE(カウシェ)」を展開するX Asiaは11月30日、第三者割当増資の実施を公表している。引受先となったのはANRI、グローバル・ブレイン、千葉道場ファンドの3社。調達した資金は1億8,000万円で出資比率などの詳細は非公開。この投資ラウンドは今年9月に実施した、篠塚孝哉氏個人を引受先とした増資に続くもの。篠塚氏はLoco Partners創業者で、出資に合わせて同社の社外取締役に就任している。

X Asiaの創業は2020年4月。Loco Partnersの2人目の社員として参加した門奈剣平氏、メルペイの立ち上げに関わった深谷哲史氏(取締役CTO)、門奈氏と同じくLoco Partnersで成長を支えた前本航太氏(取締役COO)を中心にチームが構成されている。

彼らが立ち上げたカウシェは、友人や家族・知人などと一緒に購入する「シェア買い」をすることで最大で7割引きの特典が受けられるソーシャルeコマースサービス。コミュニケーションしながら友人と一緒に購入するという、ウィンドウショッピングの楽しさをオンラインで再現する。購入しようという呼びかけをシェアすることから、出店側にとってもPR効果が見込めるのが特徴。24時間以内にシェア買いが成立しない場合は購入はキャンセルとなる。

今年9月にiOSアプリとしてサービスを開始し、30日にはAndroid版のアプリも公開している。9月に開始してからの商品点数は1,000点でApple Payにも対応した。今回調達した資金はサービス開発強化のための人員拡大に使われる。

Image Credit : X Asia

話題のポイント:久しぶりにC向けの注目スタートアップがやってきました。ソーシャルコマースについては特に目新しい概念ではないのですが、とにかく多くの方々がチャレンジし、タイミングを見計らっている市場であることは間違いないと思います。

特にこの傾向が顕著なのが中国市場です。例えばECについて言えば毎年の恒例となった独身の日があります。

2009年にAlibaba(阿里巴巴)が11月11日を独身の日(光棍節)と設定し、ECサイトの大型販促キャンペーン(北米のブラックフライデーにあたるもの)を始めたのがきっかけですが、今年も期間中に合計で5.3兆円を売り上げるなど相変わらずの桁違いぶりを発揮しています。ちなみに楽天の2019年度通期の流通総額は3.9兆円ですから、その凄さがよくわかると思います。

そして中でもここ数年、大きな話題になることが多いのがソーシャルeコマースのカテゴリです。主なプレーヤーとしてはPinduoduoPinduoduo(拼多多)や「インスタ+Amazon」と言われる“RED”(小紅書)などがあります。共にこの数年で一気に成長しており、特にPinduoduoは創業3年でNASDAQに上場し、中国EC第2位のMAUにまで成長したお化けスタートアップです。先日には61億ドルの資金調達が大きな話題になっていました。

もちろん人口比(ざっくり10倍ぐらい)があるのでそのままの比較は無意味ですが、それでも門奈さんは体感としても差があるとお話されています。というのも門奈さん、15歳まで中国で生活をしていて、Pinduoduoをリアルな生活の現場でどのように中国の人が使っているのか、コンテキストとして理解しているからです。彼の話によれば、中国でのECの利用はほぼ日常になっており、数字だけでなく(日本の現在のEC化率は6〜7%ほど)まだまだ伸び代が大きいと感じているとお話されていました。

「コロナ禍がやはりきっかけのひとつです。苦しんでいる百貨店や小売の状況を変えたいと思って創業しました。非接触決済が普及すれば買い物がやりやすくなりますし、現在は食べ物や飲み物から始めていますが、ファッションや家電など誰かのおすすめが必要なコマースの領域は幅広いです。どこかのインフルエンサーが呟いたから買うというのではなく、友人のおすすめから辿って見つけられるようにしたい。また、そこに滞在する楽しみ、例えばコストコやイケアに行けば空間をイメージできるじゃないですか。こういった時間の使い方、ライフスタイルをオンラインで提供したいですね」(門奈さん)。

共同購入やソーシャルコマースのアイデアは冒頭にも申し上げた通り、特に新しいモノではありません。例えば「ギャザリング」という手法で一世を風靡(び)したネットプライスがやはりこの分野の草分けでしょう。(2017年にオークファンに事業譲渡)また、この考え方に時間を取り入れて話題をさらったのがグルーポンでした。時間内に規定人数が集まることで大幅な割引を受けられるこの手法はフラッシュマーケティングとして2010年代のはじめ、数多くのクローンを生み出したことでも記憶されています。しかしクーポンハンターの狩場となった結果、安かろう悪かろうの典型として「おせち事件」などを引き起こして一気に下火となった苦い過去もあります。

今回のカウシェについても同様のことが発生しないとは言い切れません。クローンしやすいモデルでもあるので、フリマアプリの時と同様に後からやってくるプレーヤーに追い越される可能性も多いにあります。

ちなみにPinduoduoの躍進の理由のひとつは極端に安いCPAだったそうです。キャンペーンを通じて友人が友人を呼んでくるので、倍々ゲームにユーザーが獲得できます。ユーザーが増えればモノをおすすめするデータも増えるので、プラットフォームとしては早期にユーザーを囲い込んだ方が勝てる可能性が高まります(ちなみにクーポン戦争の時、数多くのスタートアップが立ち上がった後にリクルートが参入してきて焼け野原にしたという記憶が蘇ります)。

決して楽観視できない戦いですが、それでも門奈さんたちのチームにはそれを上回る期待をしてしまう、そういう雰囲気を感じています。思えばメルカリ以降、大型のコンシューマー向けサービスが出てきていないこともあるので、この辺りでぜひ次の時代を創造する戦いの火蓋を切っていただき、数多くの参入スタートアップを呼び込んでもらいたいと思います。

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