2020年のスタートアップたち:カジュアルになった投資、不動産の新しい買い方(後編)

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(前回からのつづき)2020年のスタートアップを振り返るシリーズの最終回。最後のテーマは投資と不動産です。

余暇と投資

Image Credit : Robinhood

COVID-19以降、全体的に消費行動は冷え込みましたが、一方でリモートワークや自宅での余暇が増えたことによる投資への需要に注目が集まりました。特にトラクションを伸ばした代表例としては投資アプリ「Robinhood」が挙げられます。その上で、例えば「Public.com」などZ世代にターゲットを絞り、投資とSNS性を組み合わせた投資プラットフォームも登場しています。Publicはウィル・スミス氏のファンドDreamers VCも出資していることで注目されているスタートアップです。ミッションには「Open the Stock Market to Everyone by making it inclusive, educational, and fun」を掲げており、株の取り引きの民主化を目指しています。

Image Credit : Public

例えば「Educational」の観点で投資家の公開ポートフォリオを閲覧出来るなどSNS性を持たせたり、投資方法も1株未満で購入することが可能な「Fractional Investing」を採用するなど、小額から投資を始め金融リテラシーを高められるプラットフォーマーの座を狙っているように感じます。今後は、サブスクリプションサービスの導入も検討していると同社ブログで述べられており、金融リテラシー教育、SNS、投資を包括的に含めたサービス展開が想像されます。

こうしたサービス以外にも、チャレンジャーバンク系も口座と投資サービスを結び付けようとしています。特にGoogleがGoogle Payを通したデジタルバンクサービス「Plex」を発表したことで拡大に白砂がかかりそうです。しかし、投資サービスを0から立ち上げるには開発コストがかかるのも事実です。

Image Credit : K Health

そこで登場したのが、APIを通じて金融事業者に投資機能を提供するFintech as a Serviceの業態です。2020年にこの分野に登場したのが「DriveWealth」で、金融関連の事業者が少額投資サービスを立ち上げられるためのAPIを提供しています。提携企業にはRevolutやMoneylionを筆頭とするチャレンジャーバンクの名前が並んでいて、現在153カ国にサービスを提供しており、米国株の取引を世界中に広めています。競合にはY Combinator出身のAlpacaなどが挙げられます。このように、コロナの在宅生活で掘り起こされた新たな需要に応えるための、インフラ需要に焦点が当たった1年でした。

住宅所有をフレキシブルに

Image Credit : Noah

コロナ禍において、経済停滞により不動産市場全体も活動が鈍ってしまいました。「来月の家賃が払えない」「新居への引っ越しも振り出しに戻って考え直そう」といった心理状態になると、不動産オーナー側も、ローンを貸し出す側の金融機関もお金が回らなくなり、最終的にはマクロ経済的な不振へと繋がってきます。

そこで、注目を集めたのがフレキシブルな支払プランを提案する不動産フィンテック「Noah」です。同社は、住宅所有者の住所・クレジットスコア・債務残高情報を基にローンの事前審査を行います。審査が通り次第、最大35万ドルの資金を、将来的に住宅価値が上がるか下がるかに関わらず提供します。一方、Noahがもらうのは物件のエクイティー(Home Equity)で、このエクイティーを10年後に所有者が買い戻す必要があります。出資額の計算は物件のエクイティー放出額によって算出されますが、一般的に5〜20%をNoah側に渡すそうです。つまり、不動産向けオルタナティブファイナンスの分野であると言えるでしょう。

ということで3回に渡って2020年のスタートアップ・シーンを振り返ってみました。

2020年は世界同時並行的にライフスタイルが移り変わる一年となり、その環境に合わせたスタートアップが数多く台頭しました。しかし、各分野はまだまだ成長フェーズに入ったかどうかの段階で、来年からより一層参入と撤退が激しくなるはずです。大きな動きというのはチャンスの裏返しです。新しい10年に向けてスタートアップ・トレンドを掴もうとされている方の参考になれば幸いです。では良いお年を。

共同執筆:「.HUMANS」代表取締役、福家隆

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