インキュベイトF「5人目」の代表にポール氏、元マッキンゼーを唸らせた「秘密兵器」とは

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5人体制になったインキュベイトファンド(写真:ウェブサイトより)

ニュースサマリ:独立系ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドは3月1日、同社5人目となる代表パートナーとして元マッキンゼー・アンド・カンパニー シニア・パートナーのポール・マクナーニ氏が就任したことを伝えている。インキュベイトファンドはこれまで赤浦徹氏、本間真彦氏、和田圭祐氏、村田祐介氏が共同で代表パートナーを務めていたが、これで5人体制となる。

ポール氏はオーストラリア出身で、日本に留学した学生時代にISPなどでアルバイトをし、デジタル事業に興味を持って1997年にリクルートへ入社。デジタル事業やネット系ベンチャーへの投資を手がけたのち、2002年からマッキンゼーにて幅広い業界顧客に対してデジタル・AIなどを活用した成長戦略コンサルティングを提供した。2014年にはシニアパートナーに就任し、アジア太平洋のマーケティング&セールスグループの責任者などを歴任した経歴を持つ。

話題のポイント:就任に合わせてClubhouseでポールさん、赤浦さん、村田さんの三代表に公開取材してきました。赤浦さんに経緯をお聞きしましたが「道端でばったり(ポールさんと)出会った」のがきっかけで「代表パートナーのみんなにどう?って聞いたらみんないいじゃんって言ったから」という、ほぼテレパシーレベルの会話で話が進んだそうです。

とにかく隙があれば面白いことを差し込もうとする赤浦さんとの間合いに緊張しまくりの30分でした。

さておき、ポールさんの経歴は見ての通りでタダでさえ強烈な面々が揃っているIFに、また一味違った形で戦力強化された印象です。シード投資の経験や実績については未知数ながらも、名だたる企業の成長戦略をグローバルな視点で手がけてきた人物です。特にグローバルでの展開を考えるケースではよいアドバイザーになってくれるはずです。先ほどはフィーリングで受け入れたと書きましたが、当然ながらこの海外に対して広い顔を持つというのはソーシングの面でも大いにプラスになるはずです。

ちなみにインキュベイトファンドが投資した企業で時価総額が大きく成長しているのが本間さんが投資したMonotaRO(約1.7兆円)と赤浦さんが創業期から支援したSaaSの代名詞、Sansan(約2,900億円)です。一方で世界トップクラスの企業は数十、数百「兆円」クラスですからまだまだやることはたくさんありそうです。

さて、マッキンゼーのシニアパートナーからベンチャーキャピタリストへの転身はグローバルでもほぼ例がないそうです。これはVC側の受け入れに問題があって、今回のように最初から代表パートナーとして迎え入れるようなケースでないとなかなかキャリアチェンジまでしようという気にならない、というのはよく理解できました。

あと、もう一点、ポールさんがIFに飛び込もうと思った理由のひとつに「均等という秘密兵器(ポールさん談)」があったそうです。実はIFの代表パートナーは投資についても報酬についても全て均等割なのだそうです。この考え方はポールさんが在籍していたマッキンゼーにも一部のクラスであるらしく、ほぼ全ての権限が個人のプロフェッショナリズムに委ねられながら、かつ、チーム戦を敷く上で究極の方法だなと思います。

以前、IFの代表パートナー4名全員とお会いしてお話聞く機会があったのですが、その時、ああ、こういうバンドいるなと感じたのを思い出します。強烈な個性のボーカルとバックバンド、そして全体をまとめるプロデューサー、そんな感じです。数々の名バンドがギャランティで揉めたことを考えるとIFの強さは案外こういうところに潜んでいるのかもしれません。

インタビューの最後、ポールさんは関西に長かったことから阪神ファンだそうで、赤浦さんから「3割5分、50本以上はいける(※)」と温かいエールの言葉がありました。ポールさんの次の打席に期待しています。

※阪神タイガースの助っ人、ランディ・バース氏が1985年に三冠王を獲得した時の成績、打率.350、54本塁打に由来する。この年は掛布雅之氏や岡田彰布氏らとクリーンナップを形成し、憎き巨人の槙原寛己投手からバックスクリーン3連発を放ったことでも知られている

※本稿はClubhouseでの取材内容をご本人に同意いただいて記事化しています

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