薄毛の悩みをAIとアプリで解決する「HIX」、投資家がコンプレックス課題に注目した理由

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「HIX(ヒックス)」

ニュースサマリ:AGA(男性型脱毛症)を管理するアプリ「HIX(ヒックス)」を展開するエムボックスは2月24日、ジェネシア・ベンチャーズと守屋実氏などを引受先とする第三者割当増資の実施を公表している。調達した資金は4,000万円でラウンドはシード。調達資金でHIXの開発・マーケティングを進めるほか、自社ブランドのヘアケア製品開発も実施する。

HIXはスマートフォンアプリで薄毛の状態を診断し、結果に応じた予防やヘアケアの施策をガイドしてくれるサービス。アプリからスマートフォンのカメラを使って頭部を撮影すると、その画像から独自の判断基準で状態をステージに分類し、エムボックスの専門カウンセラーが毛髪診断した結果を返してくれる。昨年7月のβ版公開以降、会員登録数は約1,000名、診断画像数は3,000件を超える。

画像判定のアルゴリズムは専門のAGA医師が監修しており、最終的な結果の判定は公益社団法人の日本毛髪科学協会にて資格を取得した毛髪診断士が行う。診断自体は無料で、結果に応じてプライベートブランドのヘアケア製品などを販売するモデル。また、不安などの相談はチャットで実施できる。

話題のポイント:エムボックスの創業は2018年11月。OpenNetworkLabに参加したスタートアップで、創業者の金澤大介さんは武田薬品工業から禁煙アプリ「キュアアップ」に参加した人物です。ご実家が薬局ということでキュアアップ退職後に薬剤師の資格を取得し、今回のエムボックスを創業されています。

写真左から:取締役の小西裕介さん、代表取締役CEOの金澤大介さん、代表取締役CTOの松本裕さん

従来こういった薄毛の悩みはインターネットで調べてもコンプレックス系の広告が大量に掲載されており、判断が難しく、かつ、市販品の育毛・発毛剤は価格が高いという問題点がありました。エムボックス自体はクリニックではないので、AGA自体の診療行為はできません。しかしこういったクリニックではどこでも進行状態を簡易的に調べる「簡易診断」を実施しているそうで、HIXがその部分をアプリ化することで「セルフチェック」の敷居を下げたのが特徴になります。

気になる画像診断の精度ですが、AIによる画像分析をかけるとおおよそ進行状態に対して3つぐらいのパターンに分類できるそうです。進行していない状態については市販品のホームケアを提案し、その後、進行状況に応じて内服薬や注射などを使った高度医療へと提案内容が変化するそうです。医療機関にかかる必要がある場合は初回の診療費が無料になる提携クリニックを紹介してくれるということでした。

HIXで診断した後に提案してくれるヘアケアプロダクト。ビジネスモデルはこれらケア商品の販売

Clubhouseでの公開取材でジェネシア・ベンチャーズの水谷航己さんにも出資の理由について聞いたのですが、金澤さん始め、クリニック経営などに経験のある経営チームに魅力を感じたのはもちろん、やはり市場に出回る大量のコンプレックス系広告に辟易している点は多いに指摘されてました。悩みをもっている人を無駄に煽ってアクセス・アフィリエイトを稼ぐ方法は過去、キュレーションメディアで大きな問題になりましたが、そこに対して決め手となるソリューションはまだありません。

HIXのように問題を抱える人に寄り添うアプローチはユーザー体験を最優先にする一方、過去のコンプレックス広告のような「押し売り」の強さはありません。マネタイズポイントが遠くなってしまう点について金澤さんは、タッチポイントを増やすことで解決策を模索したいと話されていました。

国内には薄毛に悩んでいる人が1,200万人いるそうです。身体的なコンプレックスに対して適切なアプローチで知識と解決方法を提供できれば、多くの人が幸せになるのではないでしょうか。

※本稿はClubhouseでの取材内容をご本人に同意いただいて記事化しています

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