「スウィングバイIPO」に向けてソラコムが6社と資本提携、世界全体の回線契約数は300万件に拡大【追記あり】

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ソラコム共同創業者、玉川憲氏(写真提供:ソラコム)

ニュースサマリ:IoTプラットフォームのソラコムは6月10日、セコム、ソースネクスト、ソニーグループ、日本瓦斯(ニチガス)、日立製作所、World Innovation Lab(WiL)の6社と資本提携を含むパートナーシップの締結を伝えている。出資についての詳細は開示されておらず、同社は親会社となるKDDIに加え、提携を発表した6社とのグローバルビジネス協業を通じて海外利用実績の拡大を目指すとしている。また、同時に同社は世界全体での利用ユーザーが1万5,000件に、契約回線数が300万件にそれぞれ到達していることも公表している。

ソラコムは2017年8月に創業からわずか3年というスピードでKDDIグループ入りを果たした。200億円という高評価であったこともさることながらその後の成長も順調で、買収時に8万回線だった回線契約数は3年で200万回線へとジャンプアップしている。またその発表の際、ソラコムの株式上場も含めた独立的な成長路線も示されていた。今回はその具体的なステップのひとつと考えられる。本誌では同社代表取締役の玉川憲氏にインタビュー予定なので、その背景などを伺った上で追記したい。

話題のポイント:ということで玉川さんにショートインタビューでお話伺ってきました。KDDIに加えてこの6社との連合艦隊でIoTインフラをビジネスの武器にグローバルに攻めていく、ということになるようです。

スウィングバイIPOに向けての資本・提携戦略

ソラコムの美しい成長曲線はSaaSビジネスに通じる

ソラコムが改めてIPOに向けて動き出したのが昨年の7月です。引き続きKDDIの連結子会社であることには変わりがないので、このタイミングで外部から大きく資本を入れることは考えにくく、適切にパートナーシップを強化する意味合いでの資本業務提携に進んだのだなと思いました。ーー約1社を除いて。

そう、WiLさんが株主に復活しているのです。今回、提携を発表したセコム、ソースネクスト、ソニーグループ、日本瓦斯(ニチガス)、日立製作所のそれぞれは具体的な事業(後述します)について連携し、その意味合いを強固なものにするという意図で出資を含めたものにしたそうです。ちなみに資本についての詳細は聞いたのですが非開示ということで、各社がそれぞれ開示を出していないことからも、目の玉が飛び出るインパクトのあるものでないのは想像がつきます。

戻ります。World Innovation Lab(WiL)さんです。WiLはソラコム創業期からの株主で、創業1年のチームに(しかもプロダクトがまだない状態)Infinity Venture Partnersと共に7億円という巨額を出資した、ソラコム誕生の立役者でもあります。今でこそシードに対する億円単位の出資がそこまで珍しくなくなりましたが、2015年当時にそれをやれたのはかなり気合の入ったファンドだけだったと思います。

そのWiLが改めて今回、株主として、そして事業パートナーとして戻ってくるというのです。役割としては、米国に豊富なネットワークを有するWiLがこれから攻める北米や欧州の事業成長を支える、という幅広い内容のもののようです。WiL自体、日本からグローバルに通用するメガベンチャー創出を掲げて船出してますから、ソラコムや同じ船に乗った5社とぜひそれを実現してきて欲しいと思います。

グローバルをどう攻める

ソラコムとニチガスの「勝ち筋」となったスマートメーター事例

今回、WiLを除く5社とは具体的に事業的な提携をしてグローバルを攻めることになります。事業会社がサービス、ソラコムとKDDIがインフラをそれぞれ担い、ビジネスとしても通信費含めて回収するリカーリングモデルになるところがこの船団の強みです。

ニチガスとソースネクストはすでに国内でビジネスモデルを実証済みです。ニチガスはLPガスのメーターにSORACOM SIMを内蔵することで、エネルギーの遠隔監視を実現しています。彼らは海外展開はこれからなので、この成功事例(LPガス以外のエネルギーマネジメントの事業)を横展開していくことになります。

ソースネクストはご存知ポケトークです。コロナ禍で旅行者の利用に制限がかかったようですが、代わりに語学学習などの新しい用途が見つかっているみたいです。アメリカ・ヨーロッパ共に展開済みで、さらにこれを伸ばしていく戦略になります。セコム、ソニー、日立については近日に開催されるソラコムの年次カンファレンスで具体的な内容を発表するとのことでした。

ソラコムの課題のひとつが海外における認知度です。ソニーなどグローバル企業と連携することでブランド価値を高め、かつ、戦略的なパートナーとは一緒に事業展開することで新たな柱を作る。そういう互恵関係を目指しているということでした。

スタートアップの新たな成長モデルになるか

現在、300万回線の契約が積み上がっていますが、大口に加えてロングテール的にユースケースが広がっているそうです。例えばキックボードシェアのLUUPや、みてねの見守り、クックパッドマートなど、新しいアイデアにソラコムのインフラが活用されており、ここから次のソースネクストやニチガスが生まれる可能性が期待されています。こういったパートナー企業は現在、700社に拡大しており、この範囲を今後、グローバルに拡大させていくことになります。

アメリカのユースケースは日本と異なり、例えば大型農業の灌漑事業だったり、数多く存在するプールの品質管理といった、ならではのものがあるそうです。一方、ヨーロッパは国が複雑に入り組んでいるので、越境できる利点を使って、戦略的なパートナー企業と共に事業展開を模索する戦略を考えているというお話でした。

日本からグローバルに通用するスタートアップをどう作るか。言語や文化のハードルがある以上、自然発生的なソーシャルメディアなどのケースは考えづらく、ソラコムのようなノンバーバルなサービスやゲーム・エンターテインメントがその期待を担うことになるでしょう。一方、その成長を支える経営や資本政策のあり方はまだ手探りかもしれません。

ソラコムは創業から3年というスピードで大手資本の傘下に入り、そこから3年で大きく事業を成長させ、改めてIPOへの道のりを開くという新しい形にチャレンジしています。そういう意味でもファンドであるWiLの再度の参加(ちなみに同社は前回のKDDI子会社化のタイミングでイグジットしている)は個人的に興味深い出来事でした。

3年・3年ときているので、次の3年でどのような成長を見せてくれるのか、引き続き続報があればお伝えしたいと思います。

 

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