パンデミック後の働き方「ハイブリッドワーク」の課題とテクノロジー

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Photo by Vlada Karpovich from Pexels

昨年4月の緊急事態宣言から1年以上が経過してワクチンの接種も徐々に進む中、ようやく次のステージに関心が向き始めているのではないかなと考えています。特に大きく変化した働き方については、そろそろ方針を決めなきゃいけない時期に来ているようです。

ワクチン接種が進んでいる北米ではAppleFacebookGoogleなど大手がリモートと出社のハイブリッドモデルを採用し、そのグラデーションの両極端にTwitterのような完全リモートとAmazonや Netflixのようなオフィス中心主義というケースがポジションすることになりました。

国内では早々にヤフーが昨年10月からリモートワークやフレックスのコアタイム廃止を決定するなど、働く場所よりも個人のパフォーマンスを重視した動きを見せています。サイバーエージェントは前述の区分けで言えばハイブリッド(現在は週2回のリモートワークと緊急事態宣言下での完全リモート推奨を交互に運用)で、同様の対応を採用している企業が多い印象です。特に国内ネット系でNetflixのように「オフィス宣言」を伝えているところは(実態は別として)あまり聞いたことがありません。

Appleで発生したアレルギー

というのも、リモートワークを経験した社員の高いリクエストがその背景にありそうです。パーソル総合研究所が数回に渡って実施しているテレワークに関する意識調査では、約8割近くの正社員がコロナ収束後についてもテレワーク継続を希望しているというデータも出ています。主に通勤時間の無駄が減らせる、自分のペースで仕事ができるなどのメリットを感じている人たちが多くなっているようです。

パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より

実際、Appleの例では9月から週3日もオフィス勤務に戻ることが発表されているのですが、これに対して一部の社員から不満の声が上がっていると報じられています。記事によると6月に従業員が実施したリモートワークに関する調査では、回答した約1,700人の内、37%が働き方への柔軟性が欠如することで職場を離れなければならない可能性を不安視していると答えているそうです。

私の知人にも遠方に住居を移した人もいますし、そこまで極端でないにしろ、家族との時間の使い方や通勤時間の無駄を体験して働き方が変わった人にとっては、完全に元に戻すというのは難しくなっていると感じます。

ハイブリッドワークの未来と「存在感」

では、このパラダイムの中で次に何が起こるのでしょうか。a16zが新たに始めたオウンドメディア「Future」にTandemの共同創業者、Rajiv Ayyangar氏が「Hybrid Anxiety and Hybrid Optimism: The Near Future of Work」と題した寄稿を投稿していました。彼らが提供するTandemはバーチャルオフィスを実現するコラボレーションツールで、リモートワークの推移と課題を次のように整理していました。

リモート1.0:Automaticなどのリモートファースト企業の第一波。Google DocsやSlackといった非同期コミュニケーションを中心に始まっており技術的にも不十分でインタラクティブ性は低い

リモート2.0:私たちが今いる地点。Zoomなどのリアルタイムコラボレーションツールが広まるが、Zoom疲れや孤立感、新入社員のオンボーディングなどの問題が表面化した

リモート3.0:ハイブリッドワークというこの次のフェーズ。オフィスで働く人たちとリモートで働く人たちの間に非対称性が発生し、企業の中核となる仕事や同僚との関係性構築に新たな課題(”second-class citizen”問題 )を生みだす可能性がある

これまでのオフィスワークは一定の時間と場所に人を集めることでコミュニケーションの問題を解決してきた一方、移動時間や家族との時間などこれによって犠牲になっているものがあるということも明らかになりました。例えばオフィスに近い人と遠方の人では見えない格差があった、ということです。ハイブリッドワークの世界ではこの課題が解決される一方、別の問題が出てくるというわけです。

Ayyangar氏は解決の重要なポイントとして「存在感(プレゼンス)」に関するテクノロジーを挙げていました。例えばオフィスで当たり前だった「そこにいる」という感覚を持たせるため、いくつかの企業はZoomを接続したままにする「常時オン」を採用しましたが、同時にそれはZoom疲れ(一度に大量の視線を浴びるとストレスにつながる)を引き起こしています。

そこでAyyangar氏は今後、同僚がアクティブであることをより軽い方法で実現できるようになるとしています。例えば彼らが提供するTandemでは、画面共有をした際、相手が動かしたマウスカーソルを他の人たちも見ることができるようになっていたり、ユーザーステータスのところにどのアプリを今動かしているのかが表示されるという工夫がされています。人の顔が目の前になくとも、その人が存在しているということが分かるテクノロジーです。また、その人ではなくアバターやアイコンの表情だけで存在感を伝えることもできるようになると指摘していました。

日本でも向こう数カ月でこのようなハイブリッドワークに移行するケースが増えてくると思います。企業側も優秀な人材を引き込むためにこの新しい働き方への対応は間違いなく必要になってくるはずです。まだしばらくは移行期ですが、このパラダイムシフトの間に各社がどのような準備をするか、数年後の答え合わせが非常に興味深いテーマになりつつあります。