Amazon、多種複数のロボットの運用を支援する「AWS IoT RoboRunner」とロボット特化アクセラレータを発表

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Image credit: Amazon Web Services

Amazon は、28日開催されたカンファレンス「Amazon Web Services(AWS)re:Invent 2021」の基調講演で、企業がロボット群を連携させるアプリケーションを簡単に構築・展開できるようにするための新しいロボットサービス「AWS IoT RoboRunner」を発表した。IoT RoboRunner と同時に、Amazon は、非営利団体 MassRobotics と共同で、自動化、ロボティクス、産業用 IoT(Internet of Things)技術の課題に取り組むインキュベータープログラム「AWS Robotics Startup Accelerator」を発表した。

新型コロナウイルス感染拡大の影響でデジタルトランスフォーメーションが促進される中、企業におけるロボティクス、そしてより広範な自動化の導入が加速している。Automation World の最新レポートによると、過去1年間にロボットを導入した企業の大部分は、人件費の削減、生産能力の向上、労働者不足の解消を目的としている。同調査によると、44.9%の企業が、組立・製造施設に設置されたロボットを日常業務に不可欠なものと考えている。

Amazon は、自身がロボット工学に多額の投資をしているが、2022年までに75億2,000万米ドル以上の規模になると予想されるロボットソフトウェア市場のより大きな部分を獲得する意図を、恥ずかしげもなく語っている。2018年には、AI や機械学習機能を備えたロボットアプリケーションの展開を開発者向けに支援する製品「AWS RoboMaker」を発表している。そして Amazon は今年初め、ロボティクスワークフローをオーケストレーションするためのサービス「RoboMaker」をサポートするツールキット「SageMaker Reinforcement Learning Kubeflow Components」を展開した

IoT RoboRunner

Image credit: Amazon Web Services

IoT RoboRunner は、Amazon の倉庫ですでに使用されているロボット管理技術をベースに開発されたもので、現在プレビュー版が公開されている。AWS の顧客は、ロボットと既存の自動化ソフトウェアを接続することで、オペレーション全体の作業をオーケストレーションすることができ、ロボット群の各タイプのロボットからのデータを組み合わせ、施設、場所、ロボットのタスクデータなどのデータタイプを中央のリポジトリで標準化することができる。

Amazon によると、IoT RoboRunner の目的は、ロボット群の管理アプリを構築するプロセスを簡素化することだ。企業が業務を自動化するためにロボットに頼ることが多くなるにつれ、企業はさまざまなタイプのロボットを選択するようになり、ロボットを効率的に編成することが難しくなっている。ロボットベンダーや作業管理システムは、それぞれ独自の制御ソフトウェア、データフォーマット、データリポジトリを持っており、互換性がないことが多いのだ。また、新しいロボットをフリートに追加する際には、制御ソフトウェアを作業管理システムに接続したり、管理アプリ用のロジックをプログラミングしたりする必要がある。

開発者は、IoT RoboRunner を使って、ロボット管理アプリの構築に必要なデータにアクセスしたり、あらかじめ用意されているソフトウェア・ライブラリを活用して、作業配分などのタスクのアプリを作成したりすることができる。さらに、IoT RoboRunner は、API を介してメトリクスや KPI を管理用ダッシュボードに配信することもできる。

IoT RoboRunner は、Freedom RoboticsExotec などのロボット管理システムと競合する。しかし、Amazon は、IoT RoboRunner が SageMaker、Greengrass、SiteWise といった AWS のサービスと連携されていることで、市場の競合に対して優位に立っていると主張している。

Amazon はブログで、次のように述べている。

AWS IoT RoboRunner を使用することで、ロボット開発者はロボットを個別に管理する必要がなくなり、集中管理によって施設全体のタスクをより効果的に自動化できるようになる。将来を考えると、より多くの企業がより多くの種類のロボットを追加することが予想される。それらすべてのロボットの力を活用することは複雑だが、私たちは、単一のシステムビューを通じてロボットを簡単に最適化することで、企業が自動化の価値を最大限に引き出せるよう支援することに専念している。

AWS Robotics Startup Accelerator

Amazon は、製品やサービスの開発、プロトタイプ、テスト、商業化のためのリソースを提供することで、ロボティクス企業を育成するという「Robotics Startup Accelerator」も発表した。

AWS が提供する技術的なリソースやネットワークとの戦略的な連携により、ロボット企業や業界全体の実験や革新を支援するとともに、ロボット企業やその技術をAWSの顧客基盤と結びつけることができる。(Amazon のブログ)

Robotics Startup Accelerator に採択されたスタートアップは、ビジネスモデルについて AWS とマスロボティクスの専門家と相談し、技術支援については AWS のロボティクス・エンジニアと相談する。特典として、AWS ロボティクスソリューションのハンズオントレーニングや、AWS の IoT、ロボティクス、機械学習サービスを利用するための最大1万米ドルのプロモーションクレジットが提供される。また、スタートアップは、MassRobotics から事業開発や投資に関するガイダンスを受け、ブログやケーススタディを通じて AWS との共同マーケティングの機会を得ることができる。

ロボット関連のスタートアップ、特に産業用ロボット関連のスタートアップは、自動化の流れの中で、ベンチャーキャピタルの注目を集めている。PitchBook のデータによると、2020年3月から2021年3月にかけて、ベンチャー企業はロボット関連企業に63億米ドルを注ぎ込み、2019年3月から2020年3月にかけて50%近く増加している。長期的に見ると、ロボット関連の投資額は過去5年間を通じて5倍以上に上昇し、2015年の10億米ドルから2020年には54億米ドルに達する。

Automation World は、レポートの中で次のように述べている。

選挙が終わり、新型コロナウイルスのワクチンが入手可能になると、市場が不安定でロボットの導入が遅れている業界でも多くの需要が戻ってくると考えているからだ。その一方で、すでに盛り上がりを見せている業界では、さらに速いペースで進んでいくことが予想される。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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