ワールドクラスのVC誕生へ秒読み、高齢化社会の日本で増す終活スタートアップへの期待【Canvas 1月号(1月8日〜1月14日)】

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ワールドクラスのVC誕生へ秒読み、高齢化社会の日本で増す終活スタートアップへの期待

今週の話題(1月8日〜1月14日):三菱電機、初CVC「MEイノベーションファンド」を50億円規模で組成——グローバル・ブレインがGP葬儀関連サービスのよりそう、VCや事業会社7社から30億円超をシリーズE調達——累積調達額は63億円に

VC のグローバル・ブレインが三菱電機の CVC の運営も始めることを発表しました。これで9つ目の企業の CVC を運営受託することになります。必然的にファンドの運用資金規模(AUM)も大きいものになり、同社は年内にも2,000億円の大台に乗ることを発表しています。AUM 2,000億円というと、VC としては世界25位前後となり、このレンジでは日本の VC としては唯一の存在。

AUM が大きくなると世界的にも目立った存在になりますから、世界にネットワークを張り巡らせることで好ディールに出会える可能性が高まります。金融機関同様、お金が商品である VC はブランディングが難しいと言われて久しいですが、名だたる日本企業の CVC を運営することで、世界のスタートアップに投資後の日本展開やイグジット戦略が提案でき、日本ブランドが生きてきます。

三菱電機の CVC「MEイノベーションファンド」を発表した松下聡氏(左、三菱電機 専務執行役 ビジネスイノベーション本部長)と百合本安彦氏(右、グローバル・ブレイン 代表取締役社長)
Image credit: Masaru Ikeda

そんなグローバル・ブレインも初期投資家である葬儀関連サービスのよりそうが大型調達です。「小さなお葬式」を運営するユニクエストと比較されることが多い同社ですが、ユニクエストは既に、加藤茶の CM でおなじみ「さがみ典礼」を運営する業界大手アルファクラブの傘下にありイグジット済。このまま行けば、よりそうが終活スタートアップ初の IPO を見せてくれるかもしれません。

東証には数社ほど葬儀社が上場しています。同族・小規模経営の多い業界のため、初めて葬儀社が上場したのも1994年と遅めですが、高齢化社会で需要が増えれば社会の公器としての役割が増し、終活スタートアップの IPO も増えてくるでしょう。今はまだ葬儀の価格体系の透明化や内容の簡素化が主な争点ですが、保守的な精神の世界にもイノベーションが生まれることを願ってやみません。

今月の調達ニュース

今月の国内スタートアップの主要な資金調達ニュースをお届けします。

花のサブスク「bloomee」運営、ジャフコ・JIC VGI・農中から21億円を調達——法人需要、花以外の分野も開拓へ(1月14日)

  • 花のサブスクリプションサービス「bloomee(ブルーミー)」を運営する、ユーザーライクは直近のラウンドで21億円を調達したと明らかにした。ラウンドステージは不明だが、INITIAL によれば、シリーズ D ラウンド相当と推測される。このラウンドに参加したのは、ジャフコ グループ(東証:8595)、JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ(JIC VGI)、農林中金キャピタル。今回ラウンドを受けて、同社の累計調達額は40.3億円に達した。

​​製造業DX SaaS「Smart Craft」がβローンチ、ジェネシアVとANOBAKAから5,000万円のシード調達も明らかに(1月12日)

  • 工場現場の DX(デジタルトランスフォーメーション)を目的とした製造業向け SaaS「Smart Craft」を開発する  Smart Craft は、シードラウンドで、ジェネシア・ベンチャーズと ANOBAKA から5,000万円を調達していたことを明らかにした。資料によれば、シードラウンドの実施時期は、2021年7月頃と推定される。

データでオフィス不動産営業を支援するestie、シリーズAで10億円を調達——GCP、UTEC、GBから(1月12日)

  • オフィス賃貸に特化した不動産データプラットフォーム「estie(エスティ)」「estie pro(エスティ・プロ」を開発・運営する estie は、シリーズ A ラウンドで10億円を調達したと発表した、このラウンドに参加したのは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、グローバル・ブレイン。

葬儀関連サービスのよりそう、VCや事業会社7社から30億円超をシリーズE調達——累積調達額は63億円に(1月12日)

  • 遺された家族を葬儀場や他の終末期サービスプロバイダにつなぐ、よりそうは、シリーズ E ラウンドで約30.9億円を調達したと発表した。このラウンドに参加したのは、フィデリティ・インターナショナル、農林中金キャピタル、Sumisei Innovation Fund、博報堂DYベンチャーズ、Sony Innovation Fund by IGV、HT Asia Technology Fund、ヤマシタ。なお、これとあわせて、金融機関からデットファイナンスで4.3億円を調達した。

ビットコインマイニングのFuel Hash、Headline AsiaやTHE SEEDらから3.1億円をシード調達——Web3領域に本格参入へ(1月12日)

  • ビットコインマイニング事業を展開する Fuel Hash は、シードラウンドで3.1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、Headline Asia、THE SEED、名前非開示のエンジェル投資家複数。

製造業向け検査AI開発SaaS「MENOU-TE(メノート)」運営、2.5億円をシリーズA調達(1月11日)

  • 検査 AI 開発のためのノーコード SaaS「MENOU-TE(メノート)」を開発・提供する MENOU は、ニッセイ・キャピタル、DEEPCORE、三菱 UFJ キャピタルからシリーズ Aラウンドで約2.5億円を調達したと発表した。これは同社にとって、2020年9月に実施した約8,000万円の調達に続くものだ。DEEPCORE と三菱 UFJ キャピタルは今回フォローオンでの参加。MENOU の累計資金調達額は約3.7億円に達した。

データカタログSaaS「クオリオ」開発、インキュベイトファンドから5,000万円をシード調達(1月11日)

  • データカタログ SaaS「クオリオ」を開発する Quollio Technologies は、シードラウンドでインキュベイトファンドから約5,000万円を資調達したと発表した。同社は調達した資金を使って、プロダクト開発と組織体制の強化を行い、近日中の α 版リリースを目指す。

アジアのニュース

今月のアジアのニュースをお届けします。

韓国発の給与前払サービス「Paywatch」、5億米ドル超をシード調達——フィリピン、インドネシアに進出へ(1月14日)

  • 韓国、マレーシア、香港 で EWA(給与前払)サービスを展開する Paywatch は、シードラウンドで5.25米ドルを調達した。このラウンドは、アメリカの VC である Third Prime と、シンガポールと香港の名前非開示のファミリーオフィスがリードインベスターを務めた。

JCBがマレーシアで初のスタートアップ投資、フィンテック企業Soft Spaceに500万米ドルを出資(1月14日)

  • マレーシアの Fintech as a Service 企業 Soft Space は、日本の国際決済ブランドである JCB と戦略的提携を締結したと発表した。その一環として、JCB は Soft Space に500万米ドルを出資している。

次世代バッテリ開発、Kファッション卸ECが大型調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(1月13日)

インドネシアの養殖業者向けサービス「eFishery」、9,000万米ドルをシリーズC調達——インド・中国に進出へ(1月13日)

  • インドネシアの魚やエビの養殖業者向けのデジタル協同組合「eFishery」は、Temasek、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2、Sequoia Capital India の共同リードにより、シリーズ C ラウンドで9,000万米ドルの調達を完了した。既存投資家の Northstar Group、Go-Ventures、Aqua-Spark、Wavemaker Partners もこのラウンドに参加した。

ネオバンクのCrowdo、7億円をプレシリーズB調達——インドネシアで女性起業家向けESG融資プログラムを立ち上げ(1月12日)

  • シンガポールに本社を置く中小企業向けネオバンク Crowdo は、プレシリーズ B ラウンドでコンバーチブルノートにより800万シンガポールドル(約6.8億円)を調達した。この資金調達は、既存株主の Gobi Partners と iVest Capital(東南アジアに特化したファミリーオフィス)、SEEDS Capital(シンガポール企業庁 Enterprise Singapore の投資部門)が共同でリードした。また、Crowdo はシンガポールに拠点を置く Impact Investment Exchange(IIX)から、革新的な「女性向け生計向上債券シリーズ(Women’s Livelihood Bond Series)」の4番目の発行となる WLB4Climate を通じて、デットファイナンスも行った。

ポップスター周杰倫氏支援のデジタルアバターがOpenSeaで売れ筋首位など——中国ブロックチェーン界週間振り返り(1月12日)

  • 中国やアジア全域で人気のセレブリティ Jay Chou(周杰倫)氏と Edison Chen(陳冠希)氏が支援する NFT「Phntabear」は、NFT 取引プラットフォーム「OpenSea」の取引量ランキングチャートで1月9日から首位に立った。

東南アジアの中古自動車ポータル「Carsome」、シリーズEで2.9億米ドルを調達——時価総額は17億米ドルに(1月10日)

  • マレーシアの自動車 eコマースのユニコーン Carsome は、シリーズ E ラウンドで2億9,000万米ドルを調達し、時価総額を約17億米ドルに引き上げた。このラウンドは、Qatar Investment Authority(カタール政府系ファンド)、65 Equity Partners(Temasek Holdings=淡馬錫控股が所有)、Seatown Private Capital Master Fund(SeaTown Holdings=海鎮控股が運営するクローズドエンド型 PE ファンド)が共同リードした。また、台湾の Mediatek(聯発)、マレーシアの Sunway(双威)、フィリピンの Gokongwei Group(吳奕輝集団)、マレーシアの YTL Group、Taiwan Mobile(台灣大哥大)も共同投資している。

シンガポールの富豪2代目の2人、NFTを中心としたソーシャルクラブを設立(1月10日)

  • シンガポールの実業家で保有資産同国内10位の Peter Lim(林荣福)氏の息子 Kiat Lim 氏と食用油メーカー Mewah International ファミリーの Elroy Cheo(石正祥)氏は、NFT を中心としたソーシャルメディアプラットフォーム「ARC」を設立したとのことだ。ARC は、アジアの起業家、ベンチャーキャピタル、Web3 開発者、仮想通貨エキスパート、ソーシャルインフルエンサーなどをメンバーに擁している。

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