ソウルの乗合タクシー呼出アプリ「i.M」運営が76億円をシリーズA調達など——韓国スタートアップシーン週間振り返り(1月24日~1月28日)

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本稿は、韓国のスタートアップメディア「Startup Recipe(스타트업 레시피)」の発表する週刊ニュースを元に、韓国のスタートアップシーンの動向や資金調達のトレンドを振り返ります。

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1月24日~1月28日に公開された韓国スタートアップの調達のうち、調達金額を開示したのは20件で、資金総額は2,212.5億ウォン(約210億円)に達した。

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主なスタートアップ投資

  • i.M Taxi( 아이엠택)」運営会社 Jin Mobility(진모빌리티)が、シリーズ A ラウンドで800億ウォン(約76億円)を調達した。これをもとに i.M Taxi 1,500台以上の増車のほか、自動運転パイロットサービス技術の高度化、車両ラインナップ拡大などに乗り出す方針。
  • モバイルゲーム開発会社 LoadComplete(로드컴플릿)がシリーズ Bラウンドで150億ウォン(約14億円)を調達した。韓国投資パートナーズ、Garena Ventures、Atinum Investmentが参加。年内に「Goddess Order」をカカオゲームスを通じてローンチするなどライブサービスと IP 強化、新作ミッドコアを2種展開予定。
  • 自動運転 3D LiDAR ソリューションスタートアップ Vueron Technology(뷰런테크놀로지)が、プレシリーズ A ラウンドで100億ウォン(約9.5億円)を調達した。これをもとに自動運転 LiDAR ソリューションの商用化に拍車をかけるほか、積極的人材確保、シリコンバレーやドイツ・ミュンヘンに支社設立などグローバル市場進出計画予定。
  • ロボアドバイザスタートアップ UPRISE(업라이즈)がシリーズ C ラウンドで100億ウォン(約9.5億円)を調達した。累積調達額は460億ウォン(約44億円)に達した。事業拡大のため、事業、マーケティング、企画、開発、デザインなど人材採用とコンテンツ競争力強化のためのプロジェクトの策定方針。
  • スタイルコマースプラットフォームのスタートアップ Ably Corporation(에이블리코퍼레이션)がプレシリーズ C ラウンドで670億ウォン(約64億円)を調達した。時価総額9,000億ウォン(約860億円)でユニコーンになる目前。AI によるお気に入り推薦サービスと技術高度化、東大門フルフィルメントサービス強化、グローバル進出加速化などエコシステム構築計画。
  • 「Spoqa(스포카)」を運営するポイント獲得メンバーシップ Dodo Point(도도포인트)のサービス部門が Yanolja(야놀자)に買収される。事業譲渡日は2月1日で、Yaonlja F&B Solution(야놀자에프앤비솔루션)が運営する予定。

トレンド分析

メタバースとデジタルニューディール2.0

2021年10月、Facebook はミッションを Meta に変えてメタバースファーストを宣言した。Meta は個人空間である「Horizon Home」、社交空間である「Horizon World」、コラボレーションスペースである「Horizon Workroom」などを公開し、プラットフォーム機能拡張を予告した。メタバースが初デビューをした瞬間ではないが、世界的な注目を集めたきっかけの一つだったのは明らかだ。

メタバース。超越を意味する「メタ」と世界を意味する「ユニバース」を結合したこの合成語が初めて登場したのは、Neal Stephenson 氏が1992年に出版した SF 小説「Snow Crash」で、小説の中では3次元仮想世界をメタバースと称した。

メタバースが注目されたのは、新型コロナウイルスの感染拡大で、リアルに中断が発生してからと言える。アメリカの技術研究団体ASF(Acceleration Studies Foundation)は、メタバースを仮想世界(VR)、ミラー世界(Mirror worlds)、拡張現実(AR)、ライフロギング(Lifelogging)の4つの要素に分けている。

今、この概念自体はさらに拡大し、メタバースは仮想と現実が融合された空間で人や物が相互作用しながら、経済、社会、文化的価値を創出するプラットフォームや空間を意味すると言える。仮想と現実が融合し、境界が消えた空間、こうした世界観を共有する多様な主体がコミュニケーションを取ったり、経験を共有する相互作用 ここで経済的、社会的、文化的活動をしながら新たな価値を創出し、生産と消費が発生するというだ。

ここにインターネット自体も Web 1.0 と Web 2.0 に続き、仮想融合空間に拡張する Web 3.0 に発展すると見て、次世代インターネットでメタバースに注目することもある。 2000年代の Web 1.0 が一方向性情報伝達に重みを置いていたとしたら、2010年代の Web 2.0 はスマートフォンを中心としたモバイルが登場し、参加とコミュニケーションをキーワードにした。続いて Web 3.0 は仮想融合空間と脱中央化という2つのキーワードを中心に発展するという展望である。

メタバースはまだ初期であるだけに、今ではいくつかのタイプが独立して発展を図っているが、後に相互融合し、機能が統合された形で発展する見込みだ。メタバースタイプとしては、SNS やゲームに集団遊び、文化活動を融合して社会関係を形成する形態、仮想不動産や仮想商品などを直取引するデジタル資産取引、リモートコミュニケーションや多重コラボレーションを行うリモートコラボレーション支援などを挙げることができる。

メタバースプラットフォームが追求するところを見てみよう。社会関係形成タイプを見ると、ユーザがコンテンツを直接制作して収益まで創出できるゲーム「Roblox」、ユーザが直接建物や物を制作して空間を構成し、自由に自分だけの世界を創造する「Minecraft」、ゲーマー間コミュニケーションのためにゲーム内に仮想空間であるパー​​ティーロイヤルを作り、コミュニケーションをとり、団体文化活動、公演観覧などを活性化して注目された「Fortnite」、国内プラットフォームでは直接アバターを飾り、仮想空間で他のユーザと遊ぶなど、社会関係活動をする「Zepeto」がある。

デジタル資産分野の場合、ブロックチェーンベースの仮想土地と建物建築、取引が可能な「Decentraland」、デジタルツインで仮想不動産を取引する「Earth2」、ユーザが所有する仮想不動産と創作商品を取引できる「Sandbox」がある。

リモートコラボレーション分野では、混合現実(MR)環境でリモートコラボレーションを支援する Microsoft Mesh、産業分野でリアルタイムのリモートコラボレーションやシミュレーションを支援して産業界のデジタルツイン構築を支援する NVIDIA Omniverse がある。

メタバースと関連した主な基盤技術としては、現実と仮想世界を結ぶインターフェースである拡張現実(AR)、仮想空間に現実空間をそのまま複製してシミュレーションを行うデジタルツイン、メタバース内の創作物に対する著作権管理などとつながるブロックチェーン、メタバース内の現実的な相互作用の促進を支援する人工知能のほか、基盤のインフラ技術であるデータ、ネットワーク、クラウドなど広範だ。

グローバル市場調査会社 Emergen Research の発表によると、メタバース市場規模の見通しは2021年に630億米ドルから2026年には4,066億米ドルに垂直上昇すると見られている。グローバル投資市場でもこのような成長の可能性に注目し、メタバース関連企業に投資を続けている。 2021年6月には、メタバース ETF がニューヨーク証券市場に上場し、韓国国内でも昨年、メタバース ETF が4種が上場した。

先に紹介した Meta や Microsoft、NVIDIA以外にも、Apple、Qualcomm のような技術企業、Nike、Disney のような大手企業がメタバース市場に乗り出そうとしている。韓国でも韓国版ニューディール2.0推進計画を発表し、メタバースをはじめとする超連結新産業の育成を核心課題として推進している。仮想融合経済発展戦略を立て、インフラや制度を整備しようとしている一方、メタバース専門家養成のためのメタバースアカデミーを今年開き、メタバース融合専門大学院、メタバースノマド業務環境支援などに乗り出す方針だ。また、メタバースハブを忠清、湖南、東北、東南など4つの地域に段階的に拡大する予定だ。

あえて直接メタバース市場に参入するのではなく、市場調査機関 Gartner は2022年戦略技術トレンドの中で分散型企業(Distributed Enterprise)を選定したという点に注目する必要がある。分散型企業の75%が競合他社より25%速い売上成長を実現できると予想される。メタバースで時空間制約を超えた柔軟な業務やコミュニケーションの方式を拡大し、そのためのコラボレーションツールなどを通じて業務効率性を高めることだ。物理空間中心ではなく、地理的に離れた遠隔労働者で構成された分散型企業だ。

もちろん、まだメタバースの疑問符もたくさんある。しかし、それにもかかわらず注目すべき市場であることは明らかだ。

【via StartupRecipe】 @startuprecipe2

【原文】

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