イグニション・ポイントがファンド事業に参入、スポーツアパレル大手ゴールドウインのCVCを共同運営へ

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24日、都内で開催されたゴールドウインの事業戦略発表会から。
左から:渡辺貴生氏(ゴールドウイン 代表取締役社長)、田代友樹氏(IGP VP 代表取締役)
Image credit: Goldwin

スタートアップスタジオのほか、大企業向けに事業創出や DX(デジタルトランスフォーメーション)支援などを展開するイグニション・ポイントは、専門子会社を通じてコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)運営の支援事業を始める。同社代表取締役の青柳和洋氏は以前スタートアップファンド「BlueGoats Capital」を立ち上げているが、イグニション・ポイントが会社としてファンド事業に取り組むのは今回が初めての動きだ。

初号案件として、 4月1日からスポーツアパレル大手ゴールドウイン(東証:8111)の CVC ファンド「GOLDWIN PLAY EARTH FUND」を共同組成・運営する。ファンド規模は30億円。

ゴールドウインは昨年、自然、環境負荷低減、次世代育成を実現させるため、モノづくりだけでなく、街づくり、人づくり、環境づくりを構想する取り組みとして「PLAY EARTH(地球と遊ぶ)」というコンセプトを打ち出している。

今回のファンド名にもこのコンセプトが冠されていることから、投資ポリシーもそれに沿ったものになるとみられる。チケットサイズは5,000万円〜1.5億円、償還期限は10年だが向こう5年くらいで30件程度の投資を想定する。投資先は国内外を問わない。具体的な投資領域については次の通り。

  • アパレル・スポーツメーカーが革新し続けるためのテクノロジーやサービス
  • 未来・子供・地域社会などコミュニティの創造につながるテクノロジーやサービス
  • 人と自然が共生する豊かな地球環境を創造するためのテクノロジーやサービス
左から:竹岡紫陽氏(IGP VP ジェネラルパートナー)、田代友樹氏(IGP VP 代表取締役)、東條弘基氏(IGP VP ジェネラルパートナー)
Image credit: Ignition Point Venture Partners

イグニション・ポイントは2021年10月、ファンド運営の専門子会社としてイグニション・ポイントベンチャーパートナーズ(以下、IGP VP と略す)を設立。2020年に設立したオープンイノベーション加速を狙うバリューアップスタジオ「MIRARGO(以前の名前は、IGP X)」の代表取締役だった田代友樹氏(現在は取締役)が IGP VP の代表取締役に就任した。イグニション・ポイントベンチャーズには、田代氏のほか、シンクタンク出身の竹岡紫陽氏、SBI インベストメントで CVC 運営を支援していた東條弘基氏らが参画している。

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一方、ゴールドウインは今月上旬、CVC 運営に特化した専門子会社ゴールドウインベンチャーパートナーズを設立した。新ファンドは、 IGP VP とゴールドウインベンチャーパートナーズによる、いわゆる二人組合で運営される。通常、CVC の運営を実務的に支援する側が GP(無限責任組合員)、CVC を通じたシナジーを期待する事業主体が LP (有限責任組合員)を務めるケースが多いが、ゴールドウイン経営陣の「自分達の投資には自分達が責任を取る」という哲学から、両社は共同 GP の形でファンドを運営するそうだ。

IGP VP は CVC ファンドの運営支援では後発になるが、母体であるイグニション・ポイントが投資や金融ではなく、事業創出や DX 支援を主業としているため、そういったことに長けた人材リソースを CVC 運営の現場に投入しやすいことは強みとして働くかもしれない。田代氏は BRIDGE の取材に対し、今までになかったオープンイノベーションの創出支援ができる、オルタナティブな存在になれることを期待していると抱負を語った。

大企業が CVC を作ることはもはや珍しいことではなくなった。事業ポートフォリオを変えたい大企業が CVC を作るケースは多い。つまり、CVC の究極的な目標は事業構造を変えることなので、事業構造を変えてくれる会社と組みたいと思ってくれるはず。

ここには産官学連携のチームも、コンサルティングのチームも、デジタルで新しいものを創り出すチームもいる。イグニション・ポイントベンチャーパートナーズと協業することで事業転換を目指そう、というメッセージを打ち出してもいいのではないか、と思う。

CVC ファンドを運営支援するプレーヤーとしては、現在15社の CVC ファンドの運営を支援する SBI インベストメント、10社を支援するグローバル・ブレインのほか、Pegasus Tech Ventures、フューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、ベンチャーラボインベストメントなどが知られる。 IGP VP では、これまでにも日本ユニシス(東証:8056)の事業創出を念頭に置いた投資子会社 Emellience Partners を支援しており、GOLDWIN PLAY EARTH FUND の組成・運営を足がかりに、この事業に弾みをつけたい考えだ。

GOLDWIN0

ゴールドウインは24日、都内で事業戦略発表会を開催し、中期経営計画「PLAY EARTH 2030」に基いた、環境に配慮した新プロジェクト「Goldwin0」を発表した。Goldwin0 では、人工タンパク質繊維を開発するユニコーン Spiber の植物由来人工タンパク質繊維素材「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」を使ったデニム製品・フリース製品を発売する。Goldwin0 の製品群は、先週 Rakuten Fashion Week TOKYO 2022 A/W で初披露された。

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24日、都内で開催されたゴールドウインの事業戦略発表会から。
左から:谷本有香氏(Forbes Japan Web 編集長、モデレータ)、関山和秀氏(Spiber 取締役兼代表執行役)、渡辺貴生氏(ゴールドウイン 代表取締役社長)、田代友樹氏(IGP VP 代表取締役)
Image credit: Goldwin

ゴールドウインと Spiber の関係は6年以上前に遡る。ゴールドウインは2015年、Spiber に本社会計から30億円を出資。Brewed Protein の前身にあたる人工合成繊維素材「QMONOS(クモノス)」を使ったアウタージャケットの開発を発表した。

ただ、クモの糸のタンパク質フィブロインは強靭ではあるものの水に濡れると超収縮が起こるため、QMONOS を使った製品は、水に濡れた際の寸法安定性を保つことが難しかった。Spiber ではフィブロイン遺伝子から超収縮を生み出すアミノ酸配列の特徴を推定し、それを取り除くことで高い寸法安定性を示すタンパク質繊維を開発、これが Brewed Protein となった。

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