5億ドル評価で買収、モバイル店舗作成アプリ「Ecwid」とは?/GB Tech Trend

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本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

プラットフォームに依存しない形で、誰もが自分のアイデアを形にして商品化する「マイクロ起業」が欧米で盛んな印象です。

従来、事業化まで足を踏み入れなかった個人クリエイターが、SNSなどで自分を売り込み顧客を集め、商品を売り、事業化する「パッションエコノミー」や「マイクロ起業家」がここ数年のトレンドとなっています。

その上で、オンライン上で商品を売るための機能を提供するEC SaaSの領域に注目が集まっています。事務所やスタジオに所属すると手取りが大幅に減るため、自分で集客して収益を最大化させたくなるのは当然の成り行きです。

こうしたクリエイターや中小事業者は、比較的自由度高く扱えるECサイトビルダーを求めています。Shopifyが好例で、誰でもECを立ち上げられたりたくさんのテンプレートから選べる体験は、パッションエコノミー文脈で活躍するEC事例の先駆と言えるでしょう。ただ、モバイル体験には今ひとつ欠けている点があると評価されているようです。

そこで登場したのが「Ecwid」です。同社はモバイルECに特化したサイトビルダーを開発したスタートアップなのですが、小売向けのコマースプラットフォームを展開するLightspeedに昨年10月に買収されています。TechCrunchが伝えるところによると株と現金の組み合わせで、トータル5億ドル規模の買収額となるようです

Ecwidは既存ウェブサイトとの統合機能を提供している点や、AmazonやGoogleなどの主要マーケットプレイスへのアクセス、POS管理、InstagramやFacebookなどのソーシャルメディアチャンネルでの広告・販売機能まで、幅広い機能とチャネルを一挙に持てる点に強みがあります。

料金体系は4パターンあり、販売手数料は0円。SaaS利用料として12.5ドル/月から定額で支払う点も中小事業者に人気です。

Ecwidでは、175カ国以上で150万人以上の中小企業が同社のプラットフォームを利用しており、約60の言語をサポートしています。新規顧客登録数は2018年から2019年の間に倍増し、2020年の第2四半期には2019年の同時期と比較してさらに300%急増しているそうです

Shopifyと比較して圧倒的な差別化を図れているわけではありませんが、「マイクロ起業家にターゲットをあわせている点」「モバイルECに特化して幅広い機能提供している点」などが成長を押し上げているように感じます。

日本では「BASE」がまさにEcwidの市場ポジションにいるように感じますが、EcwidがShopifyに挑んでいるように、モバイルEC体験に特化して、高いユーザー価値を提供できるスタートアップが登場すれば、BASEの後に続く新たなモバイルECプラットフォームが、あるいは日本でも登場するかもしれません。

国内のEC市場はまだ伸び代が大きく、とても一社で寡占できるものではないでしょう。ちょっとした差別要素を持っているだけでも一定数のユーザーを集めてしまうプレイヤーは続々と現れるはずです。日本のECスタートアップ勢力図が、モバイル体験とパッションエコノミー(個人クリエイターの登場)を軸にどう変わっていくのか、引き続き注目です。

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