レコチョクがWeb3ビジネスに参入、NFTマーケットプレイスで見据えるエンタメ業界の未来

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本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

有料音楽配信サイトなどを手がけるレコチョクは、昨年から社内に「Web3.0 プロジェクト」を立ち上げ、ブロックチェーン技術を活用した NFT(非代替トークン)、ERC-20 トークンなどを用いた音楽体験サービスの提案、DAO(自律分散型組織)などを活用したサービス提供に向けた開発に取り組んできた。先頃、その第一弾として、同社の EC ソリューション「murket(ミューケット)」に NFT アイテムの販売機能を追加実装した。レコチョクで本事業を推進する松嶋氏と小南氏に話を伺った。

すでに、アーティストの NFT アイテムの販売も始まっている。レコチョクが独自基盤でサポートする NFT 第一弾では、福岡出身のソロシンガー「CAIKI」がアーティストを目指し上京してから2021年迄の活動の軌跡を、200以上の活動風景・オフショット・歌唱動画・ライブ動画で収録し、アーティスト本人が書いた当時の想いとともにアーティストの足跡をたどることができる。この NFT アイテムは法定通貨(日本円)で購入でき、仮想通貨は不要のためウォレットを用意する必要もない。

ソロシンガー「CAIKI」が murket が販売した NFT アイテム

murket の NFT 機能で特筆すべきは、Web3 や NFT に詳しくない人でも理解しやすいよう、難しい選択肢を排除している点だ。ブロックチェーンが世の中に知れ渡り始めた頃、「ブロックチェーンで何ができるのか」という問いに、「ブロックチェーンを意識することなく、今使っている仕組みが実はブロックチェーンで動いている、と指摘されて気付くのが最高のユーザ体験」という識者がいたが、NFT でも同じことが言えるだろう。「気がついたら、それは NFT だった」という体験が Web3 ビジネスの繁栄につながる。

音楽の消費スタイルの変化が、Web3 ビジネスを加速する

レコード → CD → ストリーミング・サブスク と消費スタイルが大きく変化してきた中で、音楽業界のビジネスモデルも変わることを余儀なくされている。コロナ禍でライブ活動などにも制約を伴う中、レコード会社やアーティストにマネタイズの手段と、ファンに直接何かを届けられる仕組みとして誕生したのが murket だ。オンラインストアを開設できるECプラットフォームで、当初は楽曲や楽譜などデジタルアイテムを扱っていたが、Web3 や NFT が話題になる中で、「我々のデジタルビジネスにおいても相性がいいのではないか(小南氏)」となり、NFT販売機能の追加が決まった。

開発にあたっては、さまざまな検討がなされた。パブリックチェーンとプライベートチェーンの選択肢がある中で、Web3 の可能性を最大限に活用するためパブリックチェーンが選ばれ、利用するチェーンについては、Ethereum のガス代が高騰し始めていたこともあり、Polygon が採用された。Polygon はコミュニティの裾野が広く、今後、開発者を集める上でも有利との考えも加味したようだ。NFT のメリットを活かし、レコチョクでは今春以降、NFT アイテムの二次取引(ユーザ間売買)も可能にさせる予定だ。

murket

世界的には音楽業界の会社が NFT のマーケットプレイスやプラットフォームを立ち上げた例は多くない。韓国の芸能界は例外的で、HYBE や JYP Entertainment はそれぞれ Dunamu と、Cube は Animoca Brands と、YG Entertainment は Binance と、それそれ、NFT 事業を立ち上げることを発表している。しかし、世界的には DAO やコミュニティの側面からアプローチしているケースが多く、レコチョクは Web3 事業の立ち上げを決断したという。

レコチョクは「日本の音楽・エンタメ業界の IT 部門」

外から見ていると、完全なるエンタメ会社に見えるレコチョクだが、実は社員の3〜4割をエンジニアが占めるれっきとした IT 会社で、将来的に「日本の音楽・エンタメ業界の IT 部門(松嶋氏)」になることを目指している。その表現には、レーベルやマネジメントなど幅広い権利者のデジタル領域におけるビジネスを支援することで、日本のエンタメ業界に貢献していきたいという思いが感じられる。実のところ、murket の NFT 機能追加に関わる開発も、外部からブロックチェーンに関わるアドバイザーとしてno plan株式会社に入ってもらったものの、ほぼ内製で完結したという。

レコチョクは、murket をはじめ Web3 のさまざまなサービスをレーベル、マネジメント、アーティストなどに使ってもらうことで、業界にとっての収入拡大、ファンエンゲージメント手法の開発、ユーザ(ファン)にとっての新たな体験の創出につなげたい考えだ。Web3 のテクノロジーを使えば、権利管理が適切かつ柔軟に行えるようになることから、エンタメは Web3 で大きく変化する可能性のある業界の一つだと言われるだけに、今後のサービスの動向が気になるところだ。

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