激動する中国投資市場ーー中国スタートアップトレンド(1)

本稿は1月に開催されたオンラインイベント「BRIDGE Tokyo」で配信したセッション動画です。アクセンチュア・ベンチャーズはグローバル化するスタートアップシーンに必要なノウハウやトレンドの話題を提供しました。

最初の話題は中国スタートアップトレンドです。登壇したMax Ma/馬成さんは、36Kr の国際事業会社である 36Kr Global の CEO を務めておられます。日本でも話題のSHEINをはじめ、見逃せない中国のスタートアップトレンドをアクセンチュアのストラテジーグループマネージング・ディレクターを務める唐澤と共に紐解きました。

激動の中国スタートアップ投資市場

Maxこんにちは、Max Ma(馬成)と申します。36Kr Global の CEO です。36Kr は2010年に中国で設立され、当初は米 TechCrunch に似た存在でした。2019年に NASDAQ に上場しました。36Kr Global は海外事業に注力する部門です。2017年、シンガポールで英語メディアの「KrASIA」を立ち上げました。2018年、東京で「36Kr Japan」、海外進出を目指す中国企業のためのメディア「36気出海」を始めました。

2019年には、光栄なことに、日経と戦略的提携関係を結びました。日経は 36Kr のプレ IPO に出資もしています。2019年9月に 36Kr からスピンアウトし、香港に国際事業に特化した「36Kr Global」を設立しました。昨年2021年には、オセアニアとヨーロッパに進出しました。オフィスはニュージーランドとドイツにあります。

唐澤さんがおっしゃったように、私たちは長い知り合いで、何年も前アクセンチュアなどと提携していました。今日、BRIDGE のイベントに参加できたことも光栄です。アクセンチュアと唐澤さんのお招きには大変感謝しています。私は唐澤さんと知り合って長いのですが、こういったイベントに2人で参加するのは初めてかもしれません。

唐澤:ありがとうございます、馬さん。私からも36Krの宣伝をしておきましょうか。アクセンチュアの一員として当時、中国でベンチャー企業を中心に複数のパートナーに交渉しました。36Kr は、大変すばらしい企業だと感じていました。メディアでありながらスタートアップと太いパイプを持っておられます。

その後、長年にわたり一緒に仕事しています。とても光栄なことです。これまでは 36Kr から講演の機会をいただきましたが、今回は馬さんをお招きしました。コロナ拡大で日本を訪れることはできませんが、日本の皆さんにこうしてお話しできる機会があるのは、すばらしいことです。それでは、さっそくお話に入っていきたいと思います。

今回いくつかお話ししたいトピックがあるんです。最初に馬さんにお話しいただきたいのは、昨年と一昨年の中国市場への投資がどの分野に集中していたのかについて。最も注目を集めたスタートアップがあるかと思うのですが、これについてお話しいただけますか。

Max分かりました。昨年は中国の市場の変化がとても大きかったと個人的に感じています。良くなるのもあっという間、悪くなるのもあっという間でした。ですから、昨年は非常に印象深い年となりました。私は2015年に 36Kr に入りましたが、それからの7年間で、昨年が市場環境全体の変化が最も大きかったのではないでしょうか。

中国はコロナ前までは、VC の環境は多くの場合、従来型のビジネスや産業環境との間にある程度のズレがありました。コロナ後はインターネット産業が多くの衝撃を受け、実体経済全体が大きな衝撃を受けました。ここ1〜2年で、ネット産業と従来型産業との結びつきがますます強まり、20年以上も急速に発展してきて、天井に突き当たったのかもしれません。ですから、昨年は劇的な変化が起きた年なんじゃないか、と感じています。皆さんもご存知のことがいくつかあると思うんです。例えば完全にダメになったものとしてあるのが、まず教育産業かもしれないと感じています。

唐澤:私も大きな衝撃を受けています。そのニュースを耳にしてから、外国企業にとってはリスクだと感じています。これも興味深いトピックなので、お話したいですね。

北京証券取引所ウェブサイトより

Max教育産業の他にも、皆、新たな分野を模索していると思いますが、その中でホットなトピックとしてメタバースがあると思うんです。Facebookをはじめ、メタバースのコンセプトを掲げる企業が出現し、もちろんコンセプトが従来のままの企業もたくさんありますが、中国に昨年出現した、注目されるバーチャルシーンや新たな機会であることは否定できません。

3つ目に、日本企業や視聴者が注目すべきは、北京証券取引所の開設ではないでしょうか。上海と深圳に加え、北京にも証取が開設されたことで、IT 企業や VC にとって中国での IPO 機会が増えると思います。一方これにより、多くの VC や PE ファンドの退場の道筋が示されました。昨年1年間、中国の上場企業の海外での業績は全く振るっていません。Alibaba(阿里巴巴)も最近株価が下落、香港で二次上場する企業が増えています。

DiDi(滴滴出行)も米国上場を廃止するかもしれません。他で上場が難しかったり、業績が振るわなかったりする中小 IT 企業に、北京証取は、新たな機会をもたらすと考えています。これは、日本の投資家にとって、注目に値することではないでしょうか。4つ目は、唐澤さんからどの産業に人気が集まっているかという質問でした。

それが目立った産業は消費財です。中国で昨年最も人気が集まった投資分野は消費財でしょうね。なかでも目立ったのは国産品で、食品、アパレル、衣料、化粧品などです。それからラーメン店への融資額も10億〜20億人民元(およそ180億円〜360億円)に達しています。また、北京には昔ながらの串焼き店があり、10〜15年やって儲かっているんですが、昨年突然かなりの額の融資を受けたんです。

ですから、昨年とても人気が集まった分野は消費財です。もちろん年末になると、消費財分野のバブルがはじけ、それで皆、外に目を向けるようになりました。でも、昨年、消費財への投資が集まったのは事実です。そして、越境EC。これは深圳の方が多くなるかもしれませんが、中国のいいモノを海外へと売る動きが広がっています。コロナでオフラインがダメなら、オンラインに目を向けようということではないでしょうか。SHEINが目覚ましい業績を上げ、その領域にそういうベンチマーク企業がある、ならば自分たちもやろう、と皆思ったという感じです。

中長期的に見ると、昨年提唱されたカーボンニュートラルは、日本企業も含め、全製造業が長期的に注目していくでしょう。カーボンニュートラル、ESG のようなものを今後の10〜30年にどう応用し、中国の政策的発展・要求に沿ったものとしていくか。大変中長期的な計画ですが、そんな環境下で、多くのスタートアップが生まれています。

中国企業は多くの外国企業と統合ソリューションについて交渉していますが、良い計画と技術があれば、中国企業のものも導入したいと考えると思います。それと、反トラスト(独禁法違反)も目立った動きだと思います。Alibaba(阿里巴巴)への罰金から始まって、全ての企業がさまざまな面で多くの課題に直面しています。

昨年は皆が市場において、大変厳しい姿勢で反トラストに対して明確な動きを示した最初の年だと思います。これからも多くの動きが出てきて、中国のトップ企業にに影響が及ぶのか、全体的な方向が修正されるのか、注目に値すると考えています。消費財分野以外では、中長期的なもの、中国では「硬科技」と呼ばれるディープテックではないかと思います。

唐澤:それはちょっと知らないんですが、説明していただけますか。

Max中国の場合、バイオ、バイオ医療、チップ、半導体なども含まれます。AI 産業と関連するハイエンド技術の一部も含まれるかもしれません。ディープテックへの注目は昨年からかなり高まっています。皆、ネットバブルがはじけ出したと思い始めたので、ディープテックをつかまえておきたいのかもしれません。

他の産業や分野を開拓する機会が大きくなっているので、これまで水面下にあった先端技術に資金が流れ込んでいるのかもしれません。もう一つの要因としてコロナがあるのかもしれませんね。新薬を開発した企業に多額の資金が集まるようになりました。薬が未発売でも、多額の投資を受けられるようになりました。

次につづく

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