自治体施策のスタートアップ向け情報収集プラットフォーム「47pass」がβローンチ——6,000万円のシード調達も

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FromTo の創業者で代表取締役の宮城浩氏
Image credit: FromTo

浜松に拠点を置くスタートアップ FromTo は29日、スタートアップが自治体施策の情報収集を効率的に行えるプラットフォーム「47pass(よんななパス)」をβローンチした。このプラットフォームでは、主に首都圏や都市部に拠点を置くスタートアップが、全国津々浦々の地方自治体の施策について情報収集するのを支援し、最終的にスタートアップの地方進出支援を目指す。

2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づける岸田政権は、今年の骨太の方針で「スタートアップ育成5カ年計画」を策定するなど、さまざまなスタートアップ支援策に乗り出しており、地方創生と相まって、地方では現地に存在しない最新技術ーやノウハウを持つスタートアップとの協業に期待する自治体は増えている。

しかしながら、こうした自治体の情報は往々にしてデジタル化されていなかったり、Web サイトの階層の深い部分に埋もれていたりして、スタートアップにとっては見つけるのが難しかったり、自社に適した情報を収集したりすることに困難を伴う。47pass では自治体発情報、特に、スタートアップ向け施策に特化して情報のキュレーションや提供を行う。

国内の官公庁や地方自治体の入札情報をキュレーションするサービスとしては「NJSS(エヌジェス、入札情報速報サービス)」が有名だ。NJSS はすでに官公庁や自治体がすでに発注事案を案件化していて、一般企業を対象にした情報が多いものとなるが、47pass はこれのスタートアップ版で、扱う情報も発注事案よりも前の施策の段階に寄ったものが多くを占めている。

FromTo の創業者で代表取締役の宮城浩氏はかつて東京を拠点にシステムエンジニアをしていたが、実証実験への参加を契機に3年前に静岡・浜松に移住し、現在も当地で FromTo を運営している。47pass では、情報の集約化、サマライズ、申請の簡略化により、スタートアップの地方自治体との協業、地方自治体にとってはデジタルトランスフォーメーション(DX)を促す。

「47pass(よんななパス)」
Image credit: FromTo

47pass のビジネスモデルだが、料金はスタートアップではなく、自治体からもらうスキームとなっている。場合によっては、自治体が情報発信を委託している事業者から受け取るケースも想定しているとのことだ。前出の NJSS もそうだが、一般的に企業側から料金を徴収することが多いこの種のサービスの中で、自治体側に情報発信の積極性を求める〝一つの仕掛け〟と捉えることができる。

ところで、スタートアップと民間企業との協業関係であるオープンイノベーションで、「PoC 死(ポックし)」という表現を聞くことがある。PoC とは Proof of Concept、日本語では実証実験と訳されているが、PoC 死は協業関係が実証実験だけで終わってしまい、その後の実プロジェクトに繋がらず、スタートアップ側のリソースが持ち出し状態で終始してしまうのを揶揄した言葉だ。

自治体との関係でスタートアップの PoC 死が頻発してしまっては悲しい。この点について、宮城氏は今後の展開として、47pass を入口に、スタートアップの地方展開も支援していくことを明らかにした。情報発信や事業連携においては、地方銀行をはじめとする地元金融機関、地方テレビ局や地方新聞などの地元メディアとの連携も進める。

また、スタートアップが地方にサービスを広げる上で不足するのは人的リソースだ。情報収集の接点までは作れても、ビジネスするための地元のコネクションが十分でなかったり、現地要員の不足からサービス導入後のアフターフォローが手薄になったり、出張コストがかさんだりする。FromTo では自治体施策から得られる助成金などを原資に、地元での雇用創出やスタートアップの拠点進出の支援にも取り組みたい考えだ。

FromTo は今月7日、シードラウンドで6,000万円を調達したことを明らかにしている。このラウンドには、サイバーエージェント・キャピタル、W ventures、ライフタイムベンチャーズが参加した。

<参考文献>

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