CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)、世界の現況【2022年上半期】

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Image credit: charnsitr / 123RF

<ピックアップ> The Global Status of CBDCs in 2022

世界では、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の進展は、遅々として進んでいない。それでも、さまざまなプロジェクトは前進している。Atlantic Council の CBDC Tracker によると、現在、世界のGDPの95%以上を占める105カ国以上が、CDBC を検討しているか、積極的に開発している。CBDC はナイジェリア、バハマ、東カリブ諸国ですでに導入されており、またジャマイカがまもなく開始される Jam-Dex CBDC を法定通貨として認めたというニュースもある。

CBDC は仮想通貨と異なり、CBDC は必ずしもブロックチェーン上で動く必要はない(しかし、約9割の CDBC はブロックチェーン上で動いている)。CBDC は法定通貨をデジタル化したものであり、リアルな通貨と1対1で交換できる。銀行口座を必要とせず、仮想通貨ウォレットとスマートフォンだけで金融アクセスできるメリットから後進国では期待が大きい一方、欧米ではレガシーな金融アーキテクチャのためか、先進国での取り組みの遅れが目立つ。

現在開発中の CBDC が少なくとも部分的にブロックチェーン上で動けば、無料か低料金で送金、DeFi(分散型金融)や NFT(非代替トークン)へのアクセスの可能性、さらにスマートコントラクトを使用した自動取引やその他の契約へのアクセスを一般市民に提供できるようになるかもしれない。CBDC には一方で、政府が反体制派や好ましくない人々への金融アクセスを簡単に停止できる、現金に比べプライバシーが希薄である、CBDC 同士の相互運用性(インターオペラビリティ)などの課題点もある。

CBDC の導入スケジュールはさまざまだ。Atlantic Council のデータによると、2022年6月現在、CBDC はローンチ済が10、試験運用中が15、開発中が24、研究中が43、活動停止が10、中止が2となっている。ここでは、世界の経済大国における CBDC と、それ以外で CDBC と先頭を走る国々で起こっている現状を見てみたい。今後数年のうちに、多くの国が CBDC の流れに乗るか、既存のプログラムを加速させることになるだろう。

アメリカ

米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年1月、CBDC に関する調査報告書を発表。また、ボストン連銀と MIT(マサチューセッツ工科大学)の共同イニシアチブ「Project Hamilton」は2022年2月にフェーズ1の調査結果を発表し、ブロックチェーン技術は国のニーズにはマッチしないとした。バイデン政権による仮想通貨に関する大統領令も、デジタルドルの開発推進の一環として政府全体のアプローチを強調し、アメリカが遅れをとってはいけないとしている。

中国

中国の CDBC プロジェクトは、当初デジタル通貨電子決済(DCEP)と呼ばれ、現在は「e-CNY」と呼ばれている。これまでに数十の都市でパイロットテストが行われた。2022年初頭までに、2億6,000万以上のウォレットが作成された。CBDC は、2022年の北京冬季五輪でも使用された。中国政府は仮想通貨を禁止している一方、2023年までに e-CNY の完全ローンチを目指している。

欧州連合(EU)

デジタルユーロの可能性はまだ研究段階だ。2022年5月、欧州中央銀行(ECB)理事の Fabio Panetta 氏は、CBDC の開発とテストは早ければ2023年に始まり、約3年かかると述べ、早ければ2026年に展開される可能性を示唆した。しかし、デジタルユーロ協会会長の Jonah Gross 氏は、推進派であるにもかかわらず、デジタルユーロの目的はまだ不明であり、通貨の目的と機能を定義することが現在の最大の課題であると述べている

インド

インド政府は仮想通貨をやや敵視しており、2019年には委員会が 仮想通貨の禁止を提案した。次に大きな進展があったのは、2021年2月にインド準備銀行(RBI)が発表した、公式デジタル通貨の長所と短所を列挙した報告書だ。同じ年、RBI は段階的に展開する CBDC のパイロットプログラムを開発する意向を表明した。その後、RBI が全面支援するデジタルルピーを財務大臣が発表し、2022年から2023年にかけ展開されることが決定した。

ブラジル

ブラジル中央銀行(BCB)は2021年5月、ブラジルの決済システムと国家金融システムの両方を巻き込んだデジタルレアル計画を発表した。このプロジェクトは現在 PoC の段階にあり、2022年後半にパイロットプログラムが開始される予定だ。このプロジェクトの目的は、国境を越えた相互運用性、プライバシーとセキュリティだ。また、BCB が導入したインスタント決済システム「PIX」は、すでにブラジルでの普及率が70%に達している。

イギリス

イングランド銀行とイギリス財務省は2021年4月、CBDC 領域に関する共同研究を発表し、タスクフォースや複数のフォーラムが開始された。しかし、2022年1月に上院が発表した報告書では、イギリス CBDC には、緊急の必要性はないと結論づけられている。イングランド銀行はその2カ月後、MIT と CBDC の研究提携に乗り出したと発表した。

ロシア

ロシアのデジタルルーブルは、2022年のウクライナ侵攻に伴う制裁を受けて、米ドル建ての金融システムへの依存を減らしたいという願望によって加速され、現在パイロット段階に達している。ロシアは2020年に初めてプロトタイプを開発する意向を明らかにし、2022年初頭にはプロトタイプを完成させた。

ウクライナ

2016年に研究が開始され、「e-hryvnia」として知られるウクライナの CBDC 開発の進展は着実に進んでいる。2018年末から2019年初めにかけて2ヶ月間のパイロットプログラムが成功。2021年、CBDC は立法措置により合法化され、現金同等のものとして扱われることが定められた。大統領のゼレンスキー氏は、一部の政府給与を CDBC で支払うパイロットプログラムに関わっていた。ロシアによる侵攻にもかかわらず、この開発は続いている。

東カリブ諸国

東カリブ中央銀行は2019年に「DCash」というデジタル通貨の開発を始め、最終的に2021年3月にローンチし、通貨統合中央銀行として初めて CBDC を発行した。当初、この通貨を採用したのは東カリブ諸国8カ国のうち半数だったが、その後、徐々に普及が進んでいる。アンティグアは DCash を採用していない東カリブ諸国で唯一の国だが、今年後半に採用する予定だ。

バハマ

バハマ中央銀行は2020年10月、バハマの島の一つであるエグズーマ島での試験運用を成功させ、CDBC「Sand Dollar」を全国展開した。政府は、利用可能なさまざまなウォレット間の完全な相互運用性を確保するために取り組んでおり、バハマの銀行システムとの統合は段階的に進められ、現在そのプロセスは終了に近づいている。しかし、その普及は難しく、Sand Dollar は現在、国内の全流通通貨の0.1%を占めるに過ぎない。

ナイジェリア

アフリカ初の CBDC「e-Naira」は、2021年10月にナイジェリアで開始され、政府は段階的な社会実装戦略をとっている。第一段階では、銀行口座を持つ国民のみがデジタル通貨を利用できるようになっているが、次の段階では銀行口座を持たない層への拡大が決まっており、オフラインでの決済もそれに続くと言われている。これまでのところ、約9割が企業とその顧客との取引となっている。

ジャマイカ

2022年6月、ジャマイカは自国の CBDC を法定通貨として認めた世界初の国となった。「Jamaican Digital Exchange(Jam-Dex)」と呼ばれるジャマイカの CDBC は、今年の6月末か7月に本格的に始動する予定だ。この通貨は、個人が銀行口座を持つ必要はなく、「Lynk」と呼ばれるウォレットを基盤にすべてが運営される。

via Cybavo

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