スシローやアパマンショップも採用、日米中へ展開する台湾発小売店経営効率化SaaS「Kabob Cloud(串串零售雲)」

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Kabob(串串)のチーム。前列中央が Steve Tsai(蔡宗沛)氏。
Image credit: Kabob(串串)

シリアルアントレプレナーの Steve Tsai(蔡宗沛)氏は、小売店やレストランチェーン向けのオールインワン小売管理ソリューション「Kabob Cloud(串串零售雲)」を開発した。この統合管理プラットフォームは、クラウドベースのデジタルサイネージ、BGM、注文、予約、AI 認識、さらにはコンテンツ作成ツールなど20近いアプリを提供し、Gogoro(睿能)、バーガーキング、マクドナルドなどのチェーンストア顧客向けに複雑な管理プロセスを自動化するものである。

バブルティー店やファストフード店に足を踏み入れたとき、まず客の目を引くのは、パンフレットやポスターに書かれた宣伝文句だ。これらの印刷物は、その性質上、チェーン展開する小売店やレストランにとって、本社の経営陣の労力に対して大きな負担となっており、デザインから配布、各店舗での掲示まで、複雑で時間のかかるプロセスを必要とする。このような長いプロセスを自動化・簡素化するために、Tsai 氏はスマートリテールソリューションの一部として19の管理ツールを提供する統合プラットフォームを構築した。なかでも、店舗ディスプレイを一元管理するデジタルサイネージソリューションの「Lookr」は、バーガーキング、スシロー、マクドナルドなどの有名クライアントに利用されている。Kabob の顧客は、中国、台湾、日本、シンガポール、北米に広がっており、現在急速に国際的なビジネスを展開している。

Kabob は、競合他社の類似システムとは異なり、カスタマイズ可能なパッケージを提供しており、市場への浸透をより早くすることができる。
Image credit: Kabob(串串)

E コマースから小売店経営へ

10年前の E コマースの隆盛を受け、Tsai 氏は2012年に食品・飲料のEコマースプラットフォーム「Takomama」を設立した。このプラットフォームでは、ある個人顧客のために1日に2万点以上の商品を販売したこともあった。その後、FashionGuide に買収され、タブレット端末を使ったデジタルサイネージ事業を担当することになった。その目的は、スーパーマーケットなどの小売店に、当時としては新しいソリューションと思われるこのシステムを導入してもらうことだった。しかし、当時はタブレット端末の価格が高く、また顧客もタブレット端末になじみがなかったため、事業として採算がとれず、閉鎖に追い込まれた。

その後、台湾の電子機器メーカーである Quanta Computer(広達電脳)に入社し、Android POS やE mbedded System の営業担当として活躍した。上海の顧客を訪問した際、Android TV のようなスマートディスプレイを導入しているにもかかわらず、店頭では個別の USB メモリを使って販促メッセージやビジュアル資料を手動で変更している現状を目の当たりにした。そこで Tsai 氏は、ある疑問を抱いた。

店頭のメッセージを一元管理できたらどうだろう? 売上や収益アップにつながるのではないか?

一方、中国の小売店やレストランでは、デジタル化が進んでいた。そのため、ダイナミックでデジタルなスマートディスプレイと、それを管理するプラットフォームが必要とされていたのだ。このような背景から、Tsai 氏は2016年に Kabob を設立した。デジタルサイネージシステムを管理するアプリベースのソリューションを提供することで、Kabob の売上は創業初年度に100万米ドルを達成した。

競合他社の類似システムとは異なり、Kabob はカスタマイズ可能なパッケージを提供することで、市場への迅速な浸透を可能にしている。店舗オーナーは、ニーズに応じて管理ツールを選択することができる。ダイナミックなメニュー表示、空席検出、コールシステムなどのサービスは、個々の顧客に合わせて追加したり外したりすることができる。柔軟性があり、比較的安価であることは、店舗オーナーにとって非常に魅力的なことだ。Kabob は年間100〜200米ドルのコストで利用でき、20倍以上のコストがかかる従来の管理システムに比べ、はるかに競争力のあるモデルを提供する。

Kabob は年間100〜200米ドルのコストで、20倍以上のコストがかかる従来の管理システムに比べ、はるかに競争力のあるモデルを提供する。
Image credit: Kabob(串串)

進化し続ける管理システム 20近いユニークなソリューションを提供

Kabob のもう一つのユニークな競争力は、多数の店舗を同時に一元管理できることだ。例えば、チェーン店の場合、オーナーや経営本部は、販促コンテンツやメニュー表示などを一元化したシステムで配信し、遠隔操作することができる。加盟店は Kabob の管理アプリをスマートディスプレイにダウンロードするだけで、本部は数クリックでディスプレイの内容を更新・調整できるほか、各店舗の予約やナンバーコールなどの管理も自動化される。

Kabob は顧客層を急速に拡大する一方で、プラットフォームにもどんどん機能を追加し、現在では合計19のツールに到達している。顧客は、ファーストフードチェーン、ドラッグストア、高級小売店、さらには政府機関など多岐にわたる。

あるクライアントが、顔の表情から顧客の性別や年齢、気分まで検知する AI 認識ソリューションを導入したところ、最適化されたレコメンドにより売上が30%アップした。競合他社が市場に参入しようとするものの、成功を見出せずにいるのを目にする。(Tsai 氏)

Android TV や iPad など、さまざまなスマートディスプレイのプラットフォームを連携するのは、複雑なプロセスが必要だからだ。Kabob のソリューションは互換性があるため、競合他社より何歩も先を行くことができるのだ。

Kabob は急速に顧客層を拡大する一方で、プラットフォームへの機能追加も進めており、現在では合計19のツールに達している。
Image credit: Kabob(串串)

アメリカ、日本、中国をターゲットに

Kabobは、顧客の数が増え、規模が大きくなるにつれて、2つの重要な変化で自らを改革してきた。

  1. SaaS モデルから PaaS モデルへの転換
    Kabobは、個々のツールを販売する SaaS プロバイダから、オールインワンの管理システムを提供するプラットフォームへと進化を遂げた。PaaS(Platform as a Service)モデルを採用し、カスタマイズ可能なパッケージを提供することで、顧客の個別ニーズに対応している。
  2. サードパーティーのアプリを統合
    PaaS プロバイダとして再ポジショニングした Kabob は、サードパーティアプリによるプラットフォームの拡張も行っている。例えば、デザインツールの「Canva」や「BRICKS」など、店舗運営のためのワンストップソリューションとして展開している。

Kabob は海外市場にも進出しており、現在の成功に続き、より多くの海外顧客の獲得に注力する予定だ。主なクライアントは、台湾の Gogoro、バーガーキング、スシロー、中国のマクドナルド、日本のアパマンショップなどだ。サブスクリプション・ベースのモデルにより、昨年は700万米ドルの年間売上を達成した。チームは、日本とアメリカでの市場浸透を進め、さらに高い国際的プレゼンスを目指す。

Kabob は現在シリーズ B ラウンドの資金調達を行っており、北米での販売チームを拡大しながら、戦略的パートナーとの提携を視野に入れている。現在の投資家には、Foodland Ventures(扶田資本)と WI Harper(中経合)などがいる。台湾の技術的な専門知識を持つ Kabob は、国際的な舞台で大きな可能性を持っていると Tsai 氏は考えている。

Kabob は現在シリーズ B ラウンドの資金調達を行っており、北米での販売チームを拡大しながら、戦略的パートナーとの提携を視野に入れている。
Image credit: Kabob(串串)

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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