
2021年から2022年にかけて、Climate Techのスタートアップが大きく成長している。ベンチャーキャピタルであるSOSVが発表したSOSV Climate Tech 100によると、同社が投資したClimate Techスタートアップの評価額が1年間で2倍の110億ドル、資金調達額も2倍の38億ドルになったという。
同社によると、気候問題の緊急性を踏まえると今後さらに拡大するそうだ。そこで今回は、SOSVのポートフォリオの中から今後の領域成長に先んじて、Climate Techとしてユニコーンに到達した5社のうち、業界の異なる3社を紹介しようと思う。1社目は代替食品を扱うPerfect Dayだ。
乳製品で自動車270万台分の排出ガスを削減「Perfect Day」の衝撃
Climate Techの中でも最も一般消費者に身近に関わってくるのが代替食品だ。少しでもスタートアップ界隈に造詣がある読者であれば、Impossible Food、Beyond Meat等は聞いたことがあるだろう。近年、代替食品を製造するスタートアップに注目が集まっている。
Crunchbaseによると、2020年から2021年にかけてはフードテック全体の投資額が640億ドルから128億ドルに増える中、半分にあたる58億ドルが代替食品スタートアップに投資されている。代替食品の種類は肉や魚介類、乳製品と多岐にわたる。植物ベースの乳タンパク質製品を製造するPerfect DayはClimate Techの中でユニコーンに到達した代表的なスタートアップだ。直近のシリーズDまでで累計調達額は7億5000万ドル、評価額は15億ドルとなっている。
同社は遺伝子組み換えマイクロバイオームを使用して、砂糖から牛乳に含まれるタンパク質を作り出す発酵技術を強みとしている。同社によると、乳製品のタンパク質と脂肪はこれまで牛乳からしか得られなかったが、菌株を微調整して特別な品種を開発することで植物ベースの乳タンパク質を作り出すことに成功している。

同社の乳タンパク質はパウダーとして製造されている。そのため、食品メーカーとパートナーシップを組むことで製品化が進められている。「betterland milk」の牛乳に始まり、BRAVE ROBOTのアイスクリーム、Villa Dolceのデザート、WOOのスナックバーなど様々な製品がすでに販売されている。同社がClimate Techとして評価されている理由は明確だ。精密発酵と遺伝子組み換え菌を使用して乳タンパク質を製造するプロセスで製造するため、従来の酪農に比べて水の消費量が99%少なく、温室効果ガスの排出量が97%も少ないのだ。
元々畜産による温室効果ガス排出量は大きな問題とされてきた。農畜産業振興機構の報告によると、世界の農業関連の温室効果ガス排出の66%が家畜生産によるものだという。これは全ての乗物から排出される温室効果ガスの総量に匹敵するだけでなく、家畜からは二酸化炭素より温室効果が高いメタンガスが反すうによって多く排出される。
これらの背景を踏まえると、温室効果ガス排出量の97%削減を実現している同社の製造プロセスがいかに衝撃的かわかるはずだ。同社製品を使用するだけで、270万台の自動車からの温室効果ガス排出量を削減できる。単に製品が市場に受け入れられていることだけでなく、気候変動に優れた製造ができているからこそ、SOSVのような投資家からも評価され、多くの資金が集まっている。
次につづく:カーシェアリング版Airbnb「Getaround」で環境貢献できる理由/ユニコーンになった気候変動スタートアップ(2)
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