広島県の10年間でユニコーン10社創出プロジェクト、アクセラレータ第1期選出の12社がピッチ

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Image credit: Masaru Ikeda

広島県は、今後10年間でユニコーン10社を創出することを目標に掲げ、昨年3月から「ひろしまユニコーン10」プロジェクトを展開している。このプロジェクトでは、広島県内外の企業や組織の協力、広島県内の自治体などの協力を得て、協業や実証環境の提供など、さまざまな支援が提供される。

ひろしまユニコーン10では、4ヶ月間のアクセレーションプログラムの第1バッチを、昨年11月から今年3月にかけて展開している。第1バッチが終了する3月には広島市内で最終デモデイが予定されているが、それに先立ち、投資家や協業先を探すことを念頭に置いたピッチイベントが都内で開催された。12社の顔ぶれを見てみよう。

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プラチナバイオ

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プラチナバイオは、広島大学ゲノム編集イノベーションセンターの山本卓教授らの国産ゲノム編集技術「Platinum TALEN」を核に設立されたスタートアップだ。遺伝子の改変ツールとしては、DNA の二本鎖切断を原理とした CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)が有名だが、産業ベースで利用するには、権利者が多く複数の紛争が起こっているため使いにくい側面がある。

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Platinum TALEN で産業利用に最適なゲノム編集技術と、それにより生物機能を最大限に引き出す「バイオ DX」技術を提供することで、フード、アグリ、環境、エネルギー、創薬、医療分野への革新的な製品開発を目指す。出資と協業パートナーを広く募集している。2021年には、外食チェーン大手の FOOD & LIFE COMPANIES やヤンマーベンチャーズから2.8億円を超タッツしている。

Flying Cell

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Flying Cell は、広島大学の発明技術である磁気ターゲティングを元に細胞治療プラットフォームを開発している。膝軟骨を変形・欠損した場合、対象部位に幹細胞を注入することで軟骨の再生が期待できるが、本来この部位にあるべき軟骨よりも密度が低い線維軟骨の状態になってしまう。これを回避するために幹細胞を増やせば、今度は、軟骨が厚くなるなどの弊害がある。

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Flying Cell では侵襲性が低い方法で患部に磁性粒子を滞留させることで、定着する軟骨の細胞数を増加させ、本来の硝子軟骨の状態を再生させることに成功した。すでに動物での臨床を完了し、現在は、ヒトの変形性膝関節症患者に投与して医師主導治験の経過観察の段階にあるとのことだ。

シーテックヒロシマ

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海辺に行くと、護岸壁やテトラポットに付着しているのがよく見られるフジツボ。珍味として好んで食べる人もいるが、これが船舶につくと厄介だ。フジツボが船に付着ことで重くなり、その分、燃費が悪くなる。結果として、フジツボが付着することで船舶が余分に排出している CO₂ は年間で4,000トンに及ぶと言われている。以前は、水銀、ヒ素、錫、シアンなどが船底防汚剤が使われてきたが、言うまでもなく、これらは人間にとって有害であり、船周辺の海域に水質汚染を招く可能性がある。

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防汚剤はまた経年と共に効果が薄くなるため、これまではフジツボは人が手作業で除去することを余儀なくされてきた。一度、海に使った状態の船を陸上げするには多額のコストが必要で、また、海に浮いた状態で作業するにも、ダイバーなど特殊なスキルを持った人材が必要になる。シーテックヒロシマでは、無線自律制動型のドローンを開発。これを船舶の側面や船底に這わせることで、フジツボの除去を可能にすること目指す。フジツボの付着は牡蠣養殖にも影響を及ぼすため、水産業全般の利益率向上にも期待される。

キュアマウス by なぎさ会

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2017年現在、日本における7大生活習慣病(がん・脳卒中・心筋梗塞・高血圧性疾患・糖尿病・肝硬変・慢性腎不全)の患者数は1,850万人で、これは全人口の15%を占める。近年、生活習慣病患者が増えた一因には免疫力の低下があり、免疫力の低下を招いているのは体温の低下が一因だ。統計によれば、日本人の基礎体温は過去160年間で1℃ほど低下している。歯科医の中沖泰三氏は嚥下を繰り返すことで体温上昇につながることを特定し、未病リスクを軽減できるおしゃぶり器具「キュアマウス」を開発した。

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キュアマウスは口にくわえて唾液を飲み込む動作を続けることによって、嚥下の繰り返し動作により神経が刺激され、血管が拡張され、3~5分で身体が暖かくなる。シリコーンでできた器具は最大で1万回使用することが可能で、柿の葉、イタドリ、ヨモギなどを原料にした植物抽出発酵機能素材が配合されており、酸化した身体をアルカリ性に還元することにも有効だそうだ。ダイエットとの因果関係は言及されていないが、中沖氏自身は、キュアマウスの使用により4ヶ月で8kg減量できたという。

会いにくるナース by Nurse & Craft

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Nurse & Craft は、従来の介護サービスではカバーできない、医療的な処置を含むサービスを看護師が提供し、健康寿命を延ばすことを念頭に置いた健康管理サービス「会いにくるナース」を提供する。看護師による高齢者宅への定期的な訪問だけでなく、看護師がさまざまなテクノロジーを駆使し、未病を予防する措置を施す点が特徴的だ。具体的には、健康管理トラッカーを使ったバイタルサインデータと行動データの24時間監視、尿を試験紙にかけスマホ撮影するだけで2分で栄養状態ができる仕組みなどを活用する。

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70歳以上の高齢者にとって健康診断は極めて重要だが、約4割は定期的な健康診断を受けていない。一方、高齢者が自ら健康管理することは難しく、状態を放置すれば疾病の重篤化につながってしまう。会いにくるナースを使えば、テクノロジーの活用と看護師とのコミュニケーションによって、自宅にいながら病気予防と健康管理が可能になる。実証実験では、ユーザの半数以上が実際に栄養改善のために行動を変えたという。潜在看護師を活用し、地域包括支援センターや訪問看護ステーションの新サービスとして提案していく。

Tena Life by 福山臨床検査センター

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政府は国民の健康維持と社会保障費の抑制を狙って、40歳以上の人々に対し、健康保険組合を通じて特定保健指導を行なっている。具体的には、実施した健康診断の結果に基づいて、栄養摂取や飲食習慣、運動などの行動変容を促すために電話などで指導を行うというものだが、毎年同じ人が指導の対象になってしまう、指導内容が属人化してしまう、指導を受けている人も「どうせ、やっても変わらないし面倒くさい」と捉えてしまい、行動変容が生まれない。

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福山臨床検査センターが新規事業として発案したのは、専門家による面談、アプリへの入力、メールによる毎週のコーチングにより、より行動変容を促すサービスだ。二度にわたる実証実験の結果、75%のユーザが継続して入力を続け、血液検査の結果も改善することができたという。例えば「減塩しましょう」ではなく、「塩分を体外排出しやすくなる食べ物を多く摂りましょう」とするなど、家庭環境に合わせ柔軟な提案をすることがポイント。外部からの投資を募ってカーブアウトさせる計画だ。

Medicalate by SEDICAL

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健康格差を是正して、世界を健康に保つことをテーマに掲げる SEDICAL が最初に取り組むのは二型糖尿病に苦しむ人々だ。1921年にインスリンが発見されてから100年以上が経過したが、二型糖尿病患者は増える一方で、その人数は2045年までに8億人弱に達すると言われている。この人数は飢餓で苦しむ人とほぼ同人数であるため、理論的には、二型糖尿病患者が食事を抑制し、それと同じ量の食事を飢餓で苦しむ人に与えることができれば、双方の問題が解決できる可能性がある。

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この問題に取り組む足がかりとして、糖尿病患者が食べて良い食品として開発したのが「Medicalate」だ。Medicalate は予防医学に基づいたフリーフロム食品(この場合は、砂糖が含まれていないことを明示している食品)で、摂取後に血糖値がほぼ上がらないことが治験で確認された。一般的に味を犠牲にすれば血糖値が上がりにくい食品を作ることは難しくないが、Medicalate の味分析すると、チョコレートの2倍の甘さとまろやかさを実現できたことがわかったという。創業10年以内に市場1%シェア獲得を狙う。

WASIMIL by AZOO

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日本には63,000軒のホテル(および宿泊施設)が存在するが、その9割は従業員9人以下の小規模な施設だ。小規模な施設では一人の従業員が複数の業務をこなす必要があるため、必然的に業務効率が下がってしまうが、こうした業務の効率化支援するはずのシステムが小規模な運営形態には最適化されていない。実際には、大規模ホテルが使うシステムをダウンサイズや機能限定して使っていたり、Excel を使って管理していたり、異なるシステム間で手動による情報連携を余儀なくされたりする。

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そうした中小ホテル向けに開発した一貫したホテル DX システムが「WASIMIL」だ。情報を一元化することで、ホテルや旅館の予約取得管理,宿泊管理,BI、CRM・マーケティング、顧客管理をしやすくなり、複数ベンダーの複数システムを使う必要がなくなるため、運用コストも下げることができる。WASIMIL のアーリーアダプターは概ね部屋数50室以下の中小ホテルだ。オプションで、スマートロック、決済システム、サイトコントローラーとの連携も可能だ。

ankaa map by アルファフェニックス

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コロナ禍の三密回避が追い風となり、近年、プレジャーボートの市場と人口は増加している。ボートの約4割は瀬戸内海エリアに登録されていて全国1位は広島県。ボートレジャーに関するスタートアップを広島から立ち上げることは意義深い。レンタルボートの需要も増えているが、約8割はクルージング目的で入会しているが、概ね、2年ほどで多くの会員が退会してしまう。その理由は、寄港地が無い(少ない)、寄港地の魅力がない、寄港地で着岸する際の運転に自信が無いというものだ。

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陸の道の駅やパーキング/サービスエリア同様、ボートでも1時間ほど走れば次の寄港地に寄れることが理想だが、意外にも日本にはボートユーザ向けの寄港地である海の駅は全国に175ヶ所しかなく、その多くはマリーナだ。「ankaa map」では、使われてい桟橋、岸壁、個人桟橋などの情報を網羅したボートを係留できる場所のマップを提供し、実質的な寄港地を増やす。アプリを通じて、事前にボートの係留予約もできるようにする。ユーザは寄港地を簡単に見つけられ、寄稿により観光収入による地域活性化にもつながる。

eclect

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eclect は、CX(カスタマーエクスペリエンス)領域に特化して、企業にオンラインツールの導入や運用のコンサルティングやインテグレーションを提供している。同社では、グローバルベンチャーらと提携し彼らの商品を販売していることから、そうしたベンチャーのカルチャーや先端技術に接する機会が多いという。そうして培ったノウハウを元に、デジタル競争力を持った人材開発を新たな事業として掲げている。同社の既顧客である都市圏の企業は、CX トランスフォーメーションに興味を持ってくれるはずだという。

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未来志向の価値観を持ったデジタル人材を生み出すことは難しいが、同社では日常業務から切り離された環境で、自由に成功体験や失敗体験を得られる環境づくりを準備中だ。一連の必要なスキルや体験を一気通貫で運用管理できるデジタルプラットフォームに加え、離島に研修施設を作り、デジタル競争力の高い CX 人材の輩出を目論む。国内企業を対象として、この計画がうまくワークすれば、将来は日本だけでなく世界に向けたデジタル競争力の高い CX 人材輩出ビジネスに育てていきたいとしている。

みせとく! by SKY SOCIAL

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みせとく!」は地域経済、特に、地元商店街の小規模店舗などに送客・誘客することに特化したプラットフォームだ。ユーザが持つモバイルの位置情報と連携し、近くの店舗情報をタイムリーに届ける。例えば、「今、2席空いています」とか、「まもなくパンが焼き上がります」とお店の今の情報を届けることで、初訪問やリピーター客の入店の敷居を低くする。クーポンは発行するが、割引クーポンはお客の定着には寄与しづらいことから発行せず、むしろ、同地域の他店への送客に有用なクーポンを発行し回遊性を高める。

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同社では現在、広島市内と香川県の一市で地元商店街の連携を得て現地における実証実験を行なっており、まちづくりの指標となるデータを収集しているところだ。情報の掲載料と、蓄積されたデータの販売でマネタイズする。同社では地域経済の活性化という志に共感してもらえるアライアンスを求め、全国展開を測りたい考えだ。SKY SOCIAL は先ごろ、毎日未来創造ラボのシードアクセラレーションプログラム第8期に採択された。

telēs by micata

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メーカーでは、製品の素材やパッケージをよりサステナブルなものにしていこうとする動きが加速している。これは政府からの働きかけもあるが、環境意識が高まっている消費者からの声も影響しており、ある調査によれば、70%以上の企業がサステナブルな素材を取り入れていきたいという意向を持っているそうだ。しかし、大企業では進んでいるサステナブルシフトが中小企業では今ひとつである。その理由は発注が小ロットになりサプライヤーが受け入れてくれない、認証ポリシーの理解と適用に時間がかかる、などだ。

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telēs」を使えば、メーカーは作りたい製品企画を用意するだけで、製品企画に合う認証を確認することができる。さらにそこから操作を進めることで、自動的にその認証を満たすパッケージを作成可能だ。同様の機能は、素材サプライヤーに対しても提供予定で、素材の情報をアップロードするだけで認証ポリシーのチェックが行われる。こうすることで、素材サプライヤーにとっては、販路拡大につながるマーケットプレイスの役目も果たす。アメリカの Novi Connect はこの分野で累積5,180万米ドルを調達している。

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