空き情報配信のバカン、協業先など9社から8億円を調達——トイレでのサイネージ事業も拡大、都市空間全体へのサービスインストール目指す

SHARE:
Image credit: Vacan

<21日午後2時更新> 投資家名を一部加筆(赤字部)。

AI や IoT を活用した空き情報を配信するバカンは21日、直近のラウンドで約8億円を調達したと明らかにした。ラウンドステージは不明。参加したのは、りそなキャピタル、四条、エッグフォワード、 ユニゾンシステムズ、グローバルキャスト、ENEOS  イノベーションパートナーズ、TVQ 九州放送、Hamagin DG Innovation Fund(横浜銀行とデジタルガレージによる運営)、戸田建設(東証:1860)。これは、バカンにとって2021年10月発表の調達(ラウンド不明)に続くものだ。累積調達額は、明らかになっているものだけで17.9億円以上。

VACAN は、トイレが使用中かどうかや小売店舗の混雑情報など、ありとあらゆるリアルタイム空席情報を収集し提供するスタートアップだ。マニュアル入力、センサー、さらに人工知能を組み合わせることで空席情報を取得。ウェブブラウザはもとより、街中のデジタルサイネージ、ネイティブアプリなどで情報提供する。今でも AI や IoT を使った空き情報サービスが事業の主軸だが、トイレの長時間滞在が見える化されたことから、長時間滞在を抑制するサービスを開発し、これが新たな事業開発へと結びついている。

トイレを使っている人に、個室内に設置されたタブレットを通じて、個室外でトイレで待っている人の混雑状況を教える「エアノック」。直接ドアをノックするのは気が引けるが、統計的数値をトイレを使用中の人に間接的に知らせることで、滞在時間短縮に功を奏した。トイレ個室を30分以上使っていた人は64%、20分以上の人は43%、10分以上の人は29%、それぞれ減少したという。この間接的なアプローチは日本でのみ通用しそうだが、中国でもテストしたところ効果が見られたという。海外展開も検討中だ。

Image credit: Vacan

同社はこうしたトイレの混雑状況の見える化から、デジタルサイネージを使った広告メディア「アンベール」の開発に至った。トイレの個室内に設置されているため、男性・女性などの広告の出し分けも可能だ。設置や運用コストはすべて広告費用で賄われため、設置場所となるビルやショッピングモールのオーナーは持ち出しがない。これが普及に拍車をかけ、累計設置数はトイレ個室数ベースで数千室にまで伸びているという。

今回の資金調達は、PE である四条からの純投資を除き、多くは協業を想定したものだ。りそなキャピタルとは、金融機関向け DX、エッグフォワードとは組織運営におけるパートナーとして、ユニゾンシステムズとは動画やカメラを使ったサービス連携、グローバルキャストとはエアノック設置に関する営業連携、ENEOS とは洗車スペースへのサービス設置、TVQ 九州放送や Hamagin DG Innovation Fund とは各地域におけるマーケティング、戸田建設とは建設 DX やスマートシティの文脈で協業する。

バカンは2016年6月に創業。2018年2月にアクセラレータ Starburst(当時)の第4期デモデイで優勝、2016年9月、「東急アクセラレートプログラム(当時)」第2期デモデイで NewWork 賞を獲得した。バカンでは今後、前出の九州や横浜など、いくつかの集中すべき地域を拡大するとともに(ホリゾンタル)、ビルや商業施設など多層的に設置場所を拡大することで(バーティカル)、事業展開を加速させていく計画だ。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する