東急電鉄のアクセラレータが第2期デモデイを開催、鎌倉を拠点に訪日旅行者とガイドのマッチングを提供する「Huber.」が優勝

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東急電鉄(東証:9005)は20日、都内で同社のスタートアップアクセラレータ「東急アクセラレートプログラム」第2期の最終審査会を開催し、最終プレゼンテーションに残ったファイナリスト6社、ファイナリストには残らなかったものの、サービス内容が秀逸と評価された6社がライトニングトークに登壇した。

東急アクセラレートプログラムは、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが特徴。昨年実施された第1期では、東急電鉄と IMJ Investment Partners のみが事務局を運営していたが、第2期から新たに Connected Design と東急エージェンシーが参加。募集領域についても、第1期からの「交通」「都市開発」「生活サービス」に加え、「広告・プロモーション」「インバウンドトラベル」「IoT・スマートホーム」の3領域が新たに追加となった。今回のバッチには、スタートアップ95社からのエントリがあり、うち34社が面談プロセスを通過、最終的に6社がファイナリストに残った。

ファイナリスト6社は、4月の第2期キックオフから約5ヶ月間にわたってプログラムに参加、この日の最終審査会を迎えた。彼らは2016年いっぱいをサービスのブラッシュアップに費やし、2017年の年明けから東急グループの支援を得て、本格的なマーケティング活動を開始する予定だ。

今回の最終審査会で審査員を務めたのは…

  • 日本ベンチャーキャピタル協会 特別顧問 安達俊久氏
  • トーマツベンチャーサポート 事業統括本部長 斎藤祐馬氏
  • IMJ Investment Partners 代表取締役 兼 代表パートナー 堀口雄二氏
  • 東急電鉄 取締役専務執行役員 都市創造本部 本部長 渡邊功氏
  • 東急電鉄 取締役執行役員 生活創造本部 本部長 市来利之氏

…以上の方々。

なお、ファイナリスト6社のうち1社についてはステルス・モードであるため、本稿では触れていない。

【東急賞】Huber. by Huber.

賞金:109万円

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Huber. は、訪日外国人と国際交流したい日本人(主に大学生)をマッチングするプラットフォームを運営する。訪日外国人と日本人がプラットフォームを通じて事前に旅程を相談し、居酒屋体験やローカルツアーなど共に参加ができる旅の体験を企画。Huber. は、そのプログラムの料金の30%を手数料として徴収する。

Huber. は鎌倉を拠点とするスタートアップだが、鎌倉に来訪する訪日旅行者のうち、鶴岡八幡宮と鎌倉大仏だけを見て帰ってしまう人が多いことに気づき、このサービスのローンチ。知識や経験よりも、体験を共にシェアすることでユーザの高い満足度が得られることがわかった。大手エアラインとの提携が決定しているほか、別府市とは観光 DMO(Destination Marketing Organization)を進める上で手を組む予定。

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Huber. は東急グループと組むことで、特に沿線に大学が多いことから、国際交流したい日本人のユーザ獲得に有利に働くと判断。一方、このエリアの観光資源が十分に可視化されていないことから、東急沿線に100件のツアーを企画することを計画だ。ツアーを、2人1組の日本人ユーザがコーディネイトすることにより、訪日外国人ユーザに満足度を与えられる点が、類似サービスとの差別化要素の一つとなっている。

【渋谷賞】State of Mind

賞金:42万8,000円

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State of Mind が展開する「nutte(ヌッテ)」は、縫製を中心とした職人と連携し、デザインから縫製までを受注生産するマッチングサービスだ。日本には数万人の縫製職人がいるが、彼らは業界の中で紹介以外の方法で出会うことはまずなく、収入も決して高くはない。nutte では、一点ものやアパレルの小ロットの縫製需要を受注し、それを縫製職人に仲介する。ユーザは作りたい服のデザイン案やイメージを持って入れば、縫製職人にオリジナルの洋服やバッグなどを作ってもらうことができる。

nutte には約1,000人の縫製職人が登録しているが、1日に20〜30件程度のオーダーが来ており、需給バランスでは製造能力の方が上回っているので、現在のところはオーダーが入ってくると、すぐにも縫製職人が仕事を持って行ってくれる状態なのだそうだ。

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東急グループとは、SHIBUYA109 のショップ店員・読モ達から選抜された 109 ライターが書いた記事をもとに、彼らのアイデアを nutte 登録の縫製職人がアイテムを形にするような企画を実施したいとのこと。また、109 のショップ店員がリメイクの提案をできるようにし、それを nutte の縫製職人が形にすることで、顧客の再来店のサイクルを作り出せるのではないか、との考えを披露した。

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【二子玉川賞】Nextremer

賞金:25万円

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人工知能を用いたマルチモーダルの対話エンジンを開発する Nextremer は、今年の Slush Asia でアパホテルの元谷芙美子社長を模した人工知能ボットを展示し、話題を呼んだスタートアップだ。

同社では、東急電鉄との取り組みについて、駅に乗降客の問い合わせ対応ができる端末を配置し、セントラルオペレーションによる応答対応のしくみを提案。このしくみでは、乗降客の問い合わせには、まず人工知能ベースのボットが対応し、それが破綻したときは、オペレータによるチャット遠隔対応を行い、それでも対応が難しい場合は、ビデオ付きのオペレータによる対応を行う。対話ログが蓄積されることで、人工知能が学習を続けてゆく。駅での対話ログで集まったデータを活用することで、東急電鉄はさらなるサービス改善や開発につなげることができる。

プレゼンテーションでは、人工知能エンジンの実際のデモが試みられたが、ネットワーク接続の問題からビデオでの説明に差し替えられた。以下はその説明の模様の動画である。

【NewWork 賞】16Lab

副賞:東急のシェアオフィスネットワーク「NewWork」の、1社4名まで使い放題の権利

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16Lab(ジュウロクラボ)には、指輪型のウエアラブルデバイス「OZON(オズオン)」を開発している。16Lab では、OZON をディスプレイを必要としない情報入力インターフェースであり、ジェスチャーコントローラであり、認証デバイスでもあると定義。トヨタ、アルプス電気、ヤマハ、ソニーなどテクノロジーを持つ企業と提携することで、高度なスキルを求められる開発プロセスを加速させている。開発中の OZON も、現在準備中の資金調達の完了後半年ほどで本格出荷が可能になるとのことだ。

特に同社が開発した「OZON Blue Match」というセンサーモジュールは、3次元の動きを3次元解析できる上、極めて電力消費の少なく、最近、インテルから発表された同種の製品と比べても半分のサイズとなっている。

東急グループとは、OZON の機能を活かした次世代オフィスや次世代決済、見守りサービスの実証実験、建物の中での位置測定、生産性測定などを提案した。同グループは、東急沿線を中心にスマートシティ開発に取り組んでいるため、スマートシティ内のオフィスでの導入が期待される。

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【NewWork 賞】Vacan

副賞:東急のシェアオフィスネットワーク「NewWork」の、1社4名まで使い放題の権利

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Vacan はファイナリストではなかったが、プログラム第2期の二次選考をパスした34社の中から、興味深いスタートアップとして選ばれライトニングトークに登壇した。同社は、トイレが使用中かどうかや小売店舗の混雑情報など、ありとあらゆるリアルタイム空席情報を収集し提供するスタートアップだ。

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マニュアル入力、センサー、さらに人工知能を組み合わせることで空席情報を取得。ウェブブラウザはもとより、街中のデジタルサイネージ、開発中のネイティブアプリなどで情報提供する。現在は空席検索プラットフォーム「Vacan」と、トイレ空席検索アプリ「Throne」を開発中。

Crowd Realty

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Crowd Realty はファイナリストには選ばれたものの、入賞には至らなかった。同社は不動産の幅広い資金需要に対応できる、投資型(エクイティ型)クラウドファンディング・プラットフォームを運営。金融における資産運用、投資銀行、証券取引所に相当する機能を、公募型 REIT の分野で一気通貫で提供することを目指している。

提案された東急グループとの共創内容では、東急沿線の不動産プロジェクトへのクラウドファンディング導入により、沿線住民のシビックプライド(教授うちに誇りや愛着)の醸成や、沿線資産の流動化に貢献できるとしている。クラウドファンディングでは、通常の REIT では規模が小さ過ぎて対象とならない40億円以下の案件も扱えることから、東急グループが持つ東急リアル・エステート投資法人などとも補完関係が築けるのだそうだ。

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具体的には、今年11月開業予定の「中目黒駅高架下」開発プロジェクトへの適用や、再開発のためのたね地の証券化などが提案された。

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ライトニングトークに登壇したスタートアップ

ライトニングトークには6社が登壇した。うち、Vacan は NewWork 賞に入賞したので前述済。それ以外の5社については、以下の通り。

  • Hurray3……テンプレートを活用し、シナリオ動画を簡単に作成できる「1ROLL」を提供
  • 小児科オンライン……小児の疾患について、LINE・電話・Skype で医師に相談できるサービスを提供。事前に問診しておき、医師に15分間相談できる。Open Network Lab 第12期から輩出。<関連記事
  • Bornrex……子供がいる起業家も安心してビジネスできるように、スタートアップ向けの保育園事業を展開。
  • Samurai International……民泊オーナー向け運用管理クラウド「Air Profits」を開発。現在は Airbnb の運用一元管理に対応しており、今後、HomeAway など他社民泊サービスにも対応予定。
  • Flickfit……靴のバーチャルフィッター。店頭でのレコメンド 仮想試着し、自分に合う靴トップ20を探せる。TECH LAB PAAK 第4期から輩出。

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