IVSがシード特化ピッチイベント「LAUNCHPAD SEED」を開催、不動産特化電子契約からアバター制作まで10チームが登壇

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Image credit: Masaru Ikeda

IVS は、毎年2回の頻度で各地で「IVS」や「IVS Crypto」といったスタートアップカンファレンスを開催している。同社9日、そのスピンオフとして、シードスタートアップに特化したピッチイベント「IVS2023 LAUNCHPAD SEED」を都内で開催した。200以上の応募からファイナリスト10チームが選ばれ登壇、投資家およそ150名、CVC 担当者などがピッチを見守った。

IVS はこれまでにも、エンターテイメントに特化した「LaunchPad Entertainment」を開催したことがある。

通常の LAUNCHPAD では、「サービスのデモが可能であること」が応募条件に設定されている。一般的に、スタートアップはシード資金を調達前後からプロダクト開発をはじめ、プロダクトマーケットフィット(PMF)を経て、次のラウンドの調達に着手する傾向があるため、LAUNCHPAD では主にこのフェーズのスタートアップが登壇する傾向がある。

対して、LAUNCHPAD SEED では、スタートアップの応募条件を累積資金調達額5,000万円程度未満を目安にするとしている。登壇者も通常の LAUNCHPAD よりもアーリーのステージにあるスタートアップが対象になるとみられる。シードスタートアップへの投資を検討するシード特化ファンドやエンジェル投資家は多いため、多くの投資家が参加したのもうなづける。

LaunchPad の特別審査員を務めたのは、次の方々。

  • 本田謙氏 フリークアウト・ホールディングス 代表取締役社長
  • 高野秀敏氏 キープレイヤーズ 代表取締役
  • 宮本邦久氏 個人投資家
  • 相川真太郎氏 グリーベンチャーズ 代表取締役社長
  • 堀新一郎氏 Z Venture Capittal 代表取締役社長
  • 西條晋一氏 XTech Ventures 代表パートナー
  • 新和博氏 W fund 代表パートナー
  • 木下慶彦氏 Skyland Ventures General Partner & CEO
  • 笹原優子氏 NTT ドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長
  • 佐藤真希子氏 iSGS インベストメントワークス 取締役 代表パートナー
  • 赤浦徹氏 Incubate Fund 代表パートナー
  • 萩谷聡氏 ANOBAKA パートナー
  • Akira Ushioda Kenjiro Private Office
  • 鳥居真太郎氏 大和証券 執行役員 株式公開担当
  • 杉江陸氏 Paidy 代表取締役社長
  • 井上貴弘氏 松竹ベンチャーズ 代表取締役社長

また投資家を中心に、136名がオーディエンス審査員として参加した。特別審査員とオーディエンス審査員はそれぞれ、興味の有無で10点満点評価(1〜10点)する。特別審査員の評価合計の結果、最も得点の多かったチームには特別審査員賞が、オーディエンス審査員の評価合計の結果、最も得点の多かったチームにはオーディエンス審査員賞が贈られた。

登壇したのは以下の10社。

【特別審査員賞】【オーディエンス審査員賞】PICKFORM by PICK

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PICK は、宅建業法を遵守し、国土交通省の大臣認定を受けた不動産業界で唯一の電子契約サービス「PICKFORM」を開発している。不動産業界に独自の法律が絡む契約行為において、国土交通省の認定を受けたことで、ユーザは安心して利用できる。PICKFORM は、同時署名形式を採用しているため、署名の順番を気にすることなく、好きなタイミングで誰からでも署名できる。同時署名形式は業界唯一だという。

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電子契約サービスを利用した不動産取引において、宅地建物取引業法の遵守は取引業者である宅建業者側に一任されている。しかし、宅建業者側でも細かな業務フローの見落としが発生することがある。このような問題点に対して、PICKFORM では契約フローに関する詳細なサポートを行っている。PICKFORM を利用することで、宅地建物取引業法に適法な取引を簡単に実現することができる。

【東急不動産賞】molz by DENDOH

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molz(モルツ)」は、Unity や Blender 等の専門知識がなくても簡単に 3D アバターを制作できるサービスだ。作成したアバターの服の着せ替えなど自分好みにカスタマイズすることが可能だ。また、アバターは、対応する複数のメタバース空間で横断的に利用可能で、幅広い世代に支持されるデフォルメデザインのアバターを作成できる。

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DENDOH 創業者の押田大輝氏は、東京都立大学大学院でバーチャル空間でのUXを可視化する研究を行い、ホログラム技術を用いた学習支援システムで特許を取得した実績を持つ。これまでに自宅で家具や家電などをバーチャルに配置できる AR アプリ、実寸大のテントをバーチャル内覧できる AR サービスなどを提供している。昨年8月には、プレシードラウンドで6,030万円を調達した。

ヤルッキャ by Herazika

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Herazika は、家庭内で自習室を再現することができる Web サービス「ヤルッキャ」を開発している。子ども同士が刺激し合い、集中力を高めることができる。また、勉強を習慣化するための機能のほか、努力結果によって変動するポイント制度も充実している。ヤルッキャを通じて、子どもたちが自ら勉強する習慣を身につけることができるかもしれない。

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24時間の中から勉強する時間を設定し、時間になったらボタンを押して入室する。これは、図書館で待ち合わせる感覚に近い。顔と背景にボカシがかかり、マイク機能はないため、プライバシーは保護され、メンバー同士で会話はできない。勉強内容は自由で、宿題や受験勉強、読書なども可能だ。子どもの勉強の様子がメールで届くため、共働き家庭でも安心して利用できる。

subgrow by Bogunov

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スマホアプリの有料課金ユーザが解約をする理由は多岐にわたるが、その解約原因に基づいて適切なプロモーションを行い、ユーザの維持率を高く保つことが重要だ。Bogunov が開発したアプリ自動営業支援システム「subgrow」を使えば、有料課金ユーザの解約原因を把握し、最適なプロモーションを自動生成する。

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アプリデベロッパは、アプリを subgrow の SDK と連携することで、有料課金ユーザの行動やイベントに関する詳細な分析結果の収集が開始される。ユーザ情報は匿名 ID で管理されるため、個人情報は一切必要ない。得られた洞察を基に、アプリの改善も可能になる。有料課金ユーザを維持するために、ユーザの解約理由に応じて、最適な割引や特典などのインセンティブも提供できる。

LINDA PESA

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LINDA PESA は2022年3月、アフリカでキオスクのネットワーク化によって電力供給や生活支援サービスを提供する WASSHA や、ダイキンと WASSHA のジョイントベンチャーでエアコンのサブスクサービスを提供する Baridi Baridi で財務管理や経営管理に従事した山口亜祐氏により設立。

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同社は、手書きに依存するアフリカのスモールビジネスの経営管理のデジタル化を推進する。経営情報が手書きで記録されていると、情報が適切に蓄積できず利活用が難しく、それを元にした融資や投資を受けることができない。LINDA PESA では、アプリを使って経営管理してもらうことで、その信用情報をステークホルダーに提供し、ビジネスオーナーが金融市場にアクセスできるようにする。

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プレーリーカード by スタジオプレーリー

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プレーリーカード」は専用アプリもカメラも不要で、NFC 技術を用いてスマートフォンを名刺サイズの専用プラスチックカードにかざすだけで情報交換ができる NFC デジタル名刺サービスだ。Eight や Sansan などの既存の名刺管理サービスと連携可能となっている。同社は2020年7月に創業した。

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プレーリーカード購入者はスマホや PC からお気に入りの写真やイラストをアップロードするだけで、世界で一枚だけのオリジナルデザインの名刺を簡単に作成可能できる。またプロフィール写真、肩書き、各 SNS をはじめ、ポートフォリオサイト、公式サイト、過去の活動、最新のニュースなどを設定できるコミュニケーションを加速するためのプロフィールページも同時提供する。

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Qocolor by Color in Life

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Qocolor(クォカラー)」は、フリーランサーに対し、複数案件の最適なスケジュールを提案するプロジェクトマネジメントツールだ。Qocolor を使うことで、フリーランサーはワークライフバランスを保ちながらマネジメントできる案件の数を増やせる。アルゴリズムによるスケジューリング機能により、チームではなくフリーランサーのセルフマネジメントを前提としている点が特徴だ。

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クラウドソーシング大手 Upwork が行った調査によると、2022年のアメリカのフリーランス人口は約6,000万人で、全労働者人口の39%を占めた。少なからずこのトレンドは日本も追随することになるだろう。Qocolor では、月の平均案件数や1日あたりの稼働時間目標、新案件が入った際には納期や案件の種類、進行中の案件の忙しさ等を入力することで、新案件の納期が自動的に算出される。

ASUIKU by grow&partners

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grow&partners は、保護者向けの一時保育検索・予約システム「あすいく」を開発・提供している。保護者は、24時間いつでも一時保育の空き情報を検索し、予約、決済まで LINE で完了する。保育施設とのメッセージ機能や写真つき連絡帳もあり、保護者の不安を解消することを目的としている。長男を出産した創業者が、子育てストレスを減らし、親のひとり時間をつくり、子育てを楽しくするために開発した。

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保育園は一時保育を提供しており、休日でも使えたり、ベビーシッターよりも安価で保育を依頼できる。ただし、現在は検索サイトなどで一時保育を提供している保育所を探したり、希望する時間に使えるかどうかを電話して確かめたりする必要があった。一時保育で保育園は追加収入が得られるため、あすいくは送客時に保育園から手数料を受け取る。都市部の待機児童問題は解決しつつあり、保育園は売上アップを目指し競争するフェーズに入りつつあるそうだ。

Xaris by スタジオユリグラフ

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スタジオユリグラフは、OpenAI が提供する「GPT3」エンジンを活用し、SEO 記事制作をサポートする AI ライティング支援ツール「Xaris」を開発している。検索キーワードを入力すると、記事の見出し、タイトル、本文を提案してくれる。提案された内容は右側のエディタ画面に表示され、それを人間が修正することで、高品質な SEO 記事をより効率的に作成することができる。

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スタジオユリグラフは、ライター、動画メディアのディレクター、スタートアップでの事業立ち上げなどの経験がある森石豊氏により創業。2020年に沖縄に移住し、企業のオウンドメディアへのコンテンツ提供やゲストハウス、出版社などを経営。SF 作家としても活動している。昨年11月には、思い出の本の交換を通じたオフライン起点のSNS「思い出書店」をローンチしている。

コドマモ by スマートブックス

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近年、子どもたちがスマートフォンを通じて、わいせつな自撮り写真を撮影・送信するケースが増加している。被害防止策について愛知県警が起業家育成団体「Tongali」に相談、藤田医科大学の協力で開発が始まったのが「コドマモ」だ。最大の特徴は、AI が自動で画像の判定を行う点。子どもがスマートフォンで画像を撮影した場合、AI が問題のある画像を自動で判定し、保護者に通知する。

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子どもにはその画像を削除するよう促す機能も備えている。スマートフォンのカメラアプリの種類を問わず、すべての画像に対して検知を行う。また、モバイル端末上に AI がインストールされるため、画像のデータはアプリと共に端末上で完結し、サーバに送信されることはない。このため、子どもたちのプライバシーを守ることができる。

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