IVSがシード特化ピッチイベント「LAUNCHPAD SEED」を開催、配送ドライバーのマッチングからホテル修繕の効率化まで9チームが登壇 #LP23W

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Image credit: Masaru Ikeda

IVS は、毎年2回の頻度で各地で「IVS」や「IVS Crypto」といったスタートアップカンファレンスを開催している。同社は29日、シードスタートアップに特化したピッチイベント「LAUNCHPAD SEED 2023 Winter」を都内で開催した。ファイナリスト9チームが選ばれ登壇、投資家およそ200名、CVC 担当者などがピッチを見守った。

IVS はこれまでにも、エンターテイメントに特化した「LaunchPad Entertainment」を開催したことがある。LAUNCHPAD SEED としては、今年3月の第1回に続き、2回目の開催。

通常の LAUNCHPAD では、「サービスのデモが可能であること」が応募条件に設定されていて、次のラウンドの調達に着手する傾向があるため、LAUNCHPAD では主にこのフェーズのスタートアップが登壇する傾向があるが、対して、LAUNCHPAD SEED では、アーリーのステージにあるスタートアップが対象になっている。

LaunchPad の特別審査員を務めたのは、次の方々。

  • 相川真太郎氏 グリーベンチャーズ 代表取締役社長
  • 赤浦徹氏 インキュベイトファンド 代表パートナー
  • 岩崎由夏氏 YOUTRUST 代表取締役 CEO
  • 太田明日美氏 D4V Partner
  • 金子剛士氏 East Ventures Partner
  • 久保田雅也氏 WiL Partner
  • 木暮圭佑氏 mint General Partner
  • 杉山全功氏 ROXX 社外取締役/エンジェル投資家
  • 高野秀敏氏 キープレイヤーズ 代表取締役
  • 宮本邦久氏 エンジェル投資家
  • 山本正喜氏 Chatwork 代表取締役 CEO
  • Chiamin Lai(頼嘉満)氏 UB Ventures マネージングパートナー
  • 渡部志保氏 渋谷スタートアップス CEO 代表取締役社長

また投資家を中心に、450名がオーディエンス審査員として参加した。特別審査員とオーディエンス審査員はそれぞれ、興味の有無で10点満点評価(1〜10点)する。特別審査員の評価合計の結果、最も得点の多かったチームには特別審査員賞が、オーディエンス審査員の評価合計の結果、最も得点の多かったチームにはオーディエンス審査員賞が贈られた。

登壇したのは以下の9社。

【第1位】ドライバーダイレクト by Driver Technologies

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Driver Technologies は、以前はカーニバルグループという名前だったが、2023年9月に改称した。物流業界において、配送案件と配送リソースに関するマッチングプラットフォーム「ドライバーダイレクト」を展開している。トラック運送業回に加え、小売、プロパンガス・石油配送、バス・タクシー・ハイヤー業界と、フリーランスの登録ドライバーやアライアンスを組んでいる業界のドライバーをニーズに合わせてマッチングする。

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配送業界は、今まで 3K(きつい、厳しい、汚い)イメージが付き纏っていたが、実際には、人材を確保するため、手積み→カゴ積みにするなど各所で改善が見られる。そんないい運送会社を比較し探せるよう、全国のさまざまなドライバー職を検索できるようにしている。仕事を探している人は、手積みがあるか、積荷が何か、年収がいくらかを尋ねながら、仕事を探すことも可能だ。クラウドロジスティクスプラットフォーマーを目指す。

【第2位】【東急不動産賞】【オーディエンス賞】HoteKan by FRINGE

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FRINGE は、宿泊施設の設備修繕管理アプリ「HoteKan」を開発している。宿泊施設内で起こる水漏れ・汚れ、傷・故障に気づいた瞬間に撮影・登録、協力業者にすぐに内容を共有することができる。状況写真の共有はもとより、チャット機能を使って、現地調査の日程、見積りまでをすぐにやり取りすることが可能だ。状況が悪化する前に素早く修繕することができ、対応履歴が残るので、過去の修繕履歴が確認できたり、それを新たな修繕の参考にしたりすることができる。

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ホテルでは、設備に故障や不具合が発生した場合、清掃責任者→フロント→支配人→修繕事業者と同じ内容が伝言ゲームになるため、修理が完了するまでに最低でも5日間を要する。修理が完了するまでは部屋を貸し出せない売り止めの状態となり、損失は大きなものになる。HoteKan を導入することで、売り止め状態を75%改善できたという。これまでに50施設で導入されている。また、監督行政機関に提出するペーパーワークのデジタル化にも貢献する。

【3位】Photolize by codeless technology

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codeless technology は、スマホステーションの創業者がイグジットし、その時のペインを解決すべく設立したスタートアップだ。同社は、スマートフォンで撮影するだけで、元の書類と同じ見た目の入力フォームを作成し、データベースを構築できる「Photolize(フォトライズ)」を提供している。書類の画像を送信するだけで、AI と人が確認し最短1時間で入力フォームが作成される。ノンデスクワーカーが、現場の判断で業務に合ったシステムをノーコードで構築できるようにした。使えるようにした。

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紙で実施していたチェックシートの記入に60分かかっていたのを、タブレットなどでタッチ処理するだけ入力が完了するので、5分で完了するという。JT では、ploom の故障受付などで利用されている。これまでに61社が導入している。今後は、SaaS などを中心に300以上の情報サービスと連携を図る。また、バックグラウンドの差し替えだけで容易に多言語環境にも対応できるため、世界展開も計画している。

Chapters by MISSION ROMANTIC

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MISSION ROMANTIC は、月額サブスク型のオンライン書店「Chapters」を提供している。Chapters では、季節性やトレンドを踏まえて毎月設定される独自の選書テーマのもと、現役の出版社・書店員がセレクトした文庫本4冊のみを月替りで取り扱う。
毎月紹介される4冊の中から1冊を選び読書をすると、同じ季節に同じ本を読んだ者同士が繋がって本の感想を共有できるビデオチャット「アペロ」に参加することができる。

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従来のマッチングアプリに疲れた人々が主な対象だ。ローンチから2年4ヶ月が経過し、ユーザ数は5,000人を超えた。ユーザの平均年齢は31歳で、マッチングアプリをもう使っていなかったり、日常的に読書しなかったりする人も少なくない。来年春には、リアルイベントが開催できる常設ネのイベントスペース兼ねるリアル店舗を開設する。e コマースに加え、気の合う相手に出会えるというメリットを複合的に組み合わせたことで、ビジネス特許も出願している。

Flip by Flip

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Flip は、プロダクトの分析を AI を用いて自動化するツール「Flip」を開発している。多くの企業では、Google Analytics で取得したデータを、データウェアハウスに送り、そこから集中した結果を BI ツールで分析している。このプロセスには SQL 文を書く必要があり、それを操作できる人材が必須となるが、Flip であれば、AI に質問するだけで、5秒で分析からデータの可視化までを実現する。基本的な集計からファネル分析やリテンション分析のような高度な分析まで、幅広いプロダクト分析を自動化する。

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Web サービス、モバイル、ゲームエンジン、サーバ言語などにも対応する。日本では7割以上の企業がプロダクト分析ツールを導入しているが、日本では4.5%しか導入されていない。Flip ではこのギャップに着目し、日本でにマーケットシェア獲得を目指す。最終的には、ダッシュボードの作成、データウェアハウスの整備、データの分析、インサイトの共有、アラートの通知などすべての分析業務を AI で自動化することを目指す。

Qlay by Qlay Technologies

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Qlay」は、消費財メーカーの商品開発やマーケティング担当者向けの大規模言語モデル(LLM)を活用した消費者リサーチツールだ。オンライン上の口コミや SNS の投稿から消費者インサイトを抽出し、それらの分析結果をダッシュボードに一括表示し可視化する。膨大な数の口コミや SNS のデータの読み解き作業がわずかな時間で完了するのが特徴だ。ユーザ対象は主にマーケティングやリサーチ担当者で、商品企画やマーケティング業務の効率化を支援する。

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消費者分析においては、デスクリサーチ、定量分析、定性分析の3つが存在する。デスクリサーチや定量分析についてはすでにツールが紹介されているが、消費者分析の6割を占める定性分析については有用なツールがなく、多くは担当者が手作業で処理している。Qlay を使えば、分析に1ヶ月かかっていたような作業を数分で完了できるようになる。現在、ビューティー系の消費財メーカーなどと PoC を実施しており、来年初旬のローンチを目指す。

タンソーマン by medidas

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medidas は、中小企業をターゲットに GX(グリーントランスフォーメーション)を推進する「タンソーマン」を展開している。フリーミアムモデルで利用できることが特徴の一つだ。同社が開発する排出量可視化 SaaS「タンソチェック」を使えば、補助金申請、書類管理、拠点単位にあ集計したデータなどをクラウド上で集約できる。また、社内外向けのレポートなども容易に作成すること可能だ。

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ユーザの中には、作業が90%削減できる事業所もあったという。タンソチェックはβローンチから1ヶ月経過し、80社がサインアップしている。日本企業の99%を占める中小企業をターゲットとし、まだ1割しか使用されていない GX 関連補助金の申請を簡素化することで、GX を加速させたいとしている。

PIAMY by Artreoss

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Artreoss は、レズビアンやセクシャルマイノリティの女性のための共感型マッチングアプリ「PIAMY」を開発している。2021年3月に Android 版を公開した。ユーザは投稿に、ピアリングという興味関心を示す目印をつけることが求められる。また、ユーザ登録の段階では、自分のプロフィールに興味関心を示すマイピアリングを設定しておく。こうすることで、自分と興味関心が合いそうなユーザを見つけやすく、マッチングしやすくなる。

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日本の女性人口のうち約1割に相当する800万人が潜在ユーザで、女性視点の自然な出会いを実現したことで、これまでにダウンロード数は2.2万件に達している。今後は、レズビアンの他、A セクシャルやバイナリーの人々も対象として拡大するほか、来年には iOS アプリをローンチし、ユーザ30万人の獲得を目指す。また、LGBTQ+ と企業をマッチングする B2B ビジネスにも着手する計画だ。

循環葬 by RETURN TO NATURE by at FOREST

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at FOREST は、日本全国の寺院所有の森(墓地)に、墓標も何も残さず埋蔵するサービス「RETURN TO NATURE 循環葬」を提供している。遺骨を土に還りやすく加工し、自然との循環を促す方法で埋蔵する。売上の一部は、RETURN TO NATURE を通じて拠点となる森の保全活動に充て、また、森林保全団体にも寄付する。2040年に年間死亡者数が160万人(約4,600人/日)になると見込まれる多死社会に向け、新しい埋蔵の形を提案する。

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家制度の崩壊、核家族化、独身者の増加などを背景に従来の墓地を持つことに不安を覚える人は増えており、最近では、石でできた一般墓を選ぶ人は全体の2割以下だという。従来の代替として選ばれるのは樹木葬だが、樹木葬とはいえ、遺骨は石函の中に納骨され、そのままでは自然に還らない。at FOREST は大学教授が考案した応報により遺骨をパウダー状にすることで自然循環を促す。遺骨の主成分はリン酸カルシウムであるため、埋蔵後は樹木の養分にもなる。

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