エンジニアのスキル情報を可視化するLAPRAS、韓国のHRテック大手「Wanted」運営と提携

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左から:Wanted Japan の代表取締役 CEO カン・チョルホ(姜哲浩、강철호)氏、LAPRAS 代表取締役 CEO の染谷健太郎氏
Image credit: WantedLab, LAPRAS

<29日午後3時更新> LAPRAS Freelance は今年8月にサービスを終了し、LAPRAS SCOUT にサービス統合されたため、該当箇所を削除。

エンジニアを中心としたスキル可視化ポートフォリオサービス「LAPRAS」などを展開する LAPRAS と、韓国で HR テックサービス「Wanted(원티드)」を展開する WantedLab(원티드랩、KOSDAQ:376980)は29日、日本における HR テック開発・提供で提携し協業することを明らかにした。両社はこの提携により、日本のデジタル人材の採用市場(2,000億円)のシェア1位を目指すとしている。

LAPRASは、web 上に公開されている SNS や GitHub などのオープンデータを活用したスキル情報の可視化プラットフォームを運営している。公開されているレポジトリやブログ記事、イベント参加状況や SNS プロフィールなどをもとにして、エンジニアのスキルや志向性、転職の可能性を判定したポートフォリオを自動生成する。

そのほかにも、同社はこれらの技術系人材のデータベースを元に、各種の採用に関するマッチングサービスとして、企業向けのヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」、フリーランス・副業エンジニア採用サービスの「LAPRAS Freelance」を展開している。現在、LAPRAS の登録ユーザ数は3万人、LAPRAS SCOUT の契約社数は累計700社超を超えている。

WantedLab が韓国で提供する「Wanted AI 面接コーチ」機能。過去の転職者からの情報などをもとに、想定される質問が提示される。
(韓国語の UI を Google 翻訳で日本語化したものです)

一方、WantedLab は2015年にサービスを開始した韓国スタートアップだ。当初はリファラル採用サービスで立ち上がったが、その後、AI などを活用した HR テック企業へと進化した。韓国でのユーザは350万人。転職者と転職先などの情報を収集・解析することで、適切な転職先の紹介、例えば、「この転職先に応募したら、あなたの職歴だと何%の確率で採用される」などを具体的に回答できる。

こうした HR テックのサービスが功を奏し、WantedLab が2021年8月に KOSDAQ に上場を果たした。本稿執筆時点で、同社の時価総額は1,136億ウォン(約130億円)に達している。WantedLab は2017年6月に、日本のオークファン(東証:3674)、ベクトル(東証:6058)、リスクモンスター(東証:3768)から資金調達し、日本への進出を本格化すると伝えたことがある

WantedLab の日本法人である Wanted Japan の代表取締役 CEO カン・チョルホ(姜哲浩、강철호)氏によれば、この当初の日本進出は、結論から言うと、あまりうまくはいかなかったようだ。韓国での成功体験をもとに、HR テックをローカライズし日本市場に投入することを試みたようだが、韓国と日本の人材採用市場の間には、テクノロジーだけでは解決できないさまざまな違いがあった。

「Wanted」
Image credit: WantedLab

最も顕著なのは、採用市場の事業者数だ。日本には1,000社以上がひしめき合っているが、韓国は大手3社による寡占状態にある。一生における転職回数も、日本人は平均2.5回に対し、韓国人は5回と約2倍だ。ここから導き出される人材採用ビジネスの環境は、想像に難くないと思われるが、転職エージェントが請求する手数料に如実に現れている。

世界的には転職エージェントの手数料は転職者の年収の15〜25%が相場とされるが、日本はそれよりも高めで35〜40%。それに対し、韓国はなんと7%だという。日本は労働人口が少ない割にエージェント同士の競争が激しいため、広告などマーケティングコストが嵩むことも影響しているようだ。一方、韓国では手数料が低いため、マッチングコストを極小化するため、HR テックが発達した経緯がある。

韓国は HR テックは発達しているものの、それをそのまま日本に投入したのではマーケットフィットは十分ではない。WantedLab と LAPRAS は、この点を互いに認識し「同じ考えを持っている者同士でパートナーシップを組むことにした(カン氏と、LAPRAS 代表取締役 CEO の染谷健太郎氏)」という。海外企業が日本に進出した時の、パートナーセールス戦略に近い。

「LAPRAS SCOUT」
Image credit: Lapras

LAPRAS が WantedLab と合意した、採用支援で実現したい考えとは次のとおりだ。

  1. グローバル水準に比べて 割高な日本の採用コストの是正
  2. 主体的にキャリア選択をする人材がより活躍できる社会
  3. 転職・採用活動をエンターテイメントのように楽しめる社会

WantedLab は韓国で、エンジニアを対象に始めた HR テックのビジネスを他職種にも拡大してきた。その経験から、職種によって業界のペインや市場の課題が全然違うことに気づいたという。そこで、WantedLab では培った HR テックのリソースをベースに、進出する市場・分野毎に、その道に長けたパートナーと組むことにしたのだという。

参考までに、WantedLab は韓国スタートアップの日本進出も支援しており、この分野では、日本では税理士法人スターシアと組むことを明らかにしている。エンジニアの採用支援分野では LAPRAS と組み、LAPRAS のユーザに新機能を提供していく。ダイレクトリクルーティングで、ユーザが自らのキャリアパスを考えながら応募するのを支援するサービスになるようだ。

手数料が極端に安い韓国のような状況を日本が目指すかどうかはさておき、日本の転職市場におけるエージェントの手数料は、少なくともグローバル水準程度まで下げるような風向きに向くことは十分に考えられる。そんな中で、エージェントが利益を圧縮するのではなく、人間の介在を減らし AI による自動化でコストを抑えることで、求人企業と求職者のより効率的なマッチングの実現が期待される。

WantedLab と LAPRAS は提携・協業関係を通じて、中長期的には、アジアなどから来る日本や韓国で働きたい人材と、日本や韓国の企業のマッチングなど対象を拡大していきたいと考えている。テクノロジーだけでなくビジネス開発でも協業し、ジョイントベンチャーなどはまだ考えていないものの、協業の結果として生まれる利益については、レベニューシェアの形を取るとしている。なお、この提携に伴う資本関係は存在しない。

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