#WebSummit 2023のピッチは、訴訟が多いブラジルで弁護士を業務支援するAIコパイロット「Inspira」が優勝

SHARE:
優勝した Inspira のチーム
Image credit: Masaru Ikeda

本稿は、Web Summit 2023 の取材の一部である。

リスボンで開催されていた Web Summit 2023 で、3日間に及ぶイベントのクライマックスとなるピッチ・コンペティション「PITCH」で、訴訟の多いブラジルで弁護士の業務を支援する AI コパイロット「Inspira」を開発するサンパウロのリーガルスタートアップ Inspira Legal が優勝した。本稿では優勝した Inspira を含む、ファイナリスト3チームを紹介する。

Web Summit 2023 には、世界中から2,500社に及ぶスタートアップが出展し、その中から一部が PITCH にエントリし、準決勝を経て決勝では勝ち残った3社が戦いに挑んだ。ピッチの審査条件は、プロダクトの可能性、ディスラプティブかどうか、財務面での評価、チーム構成、ピッチの品質の5点。聴衆の投票も25%の割合で(つまり4人目の審査員として)加算された。決勝の審査員を務めたのは次の方々だ。

Image credit: Masaru Ikeda
  • Christina Fonseca 氏 —— Managing Partner, Indico Capital Partners
  • Rebecca Parsons 氏 —— CTO, Thoughworks
  • Jua Pablo Orgega 氏 —— CO-founder & CEO, Yuno

Inspira(ブラジル)

Image credit: Masaru Ikeda

ブラジルは訴訟の多い国だ。サッカーの世界チャンピオンであると同時に、訴訟のチャンピオンでもある。ブラジルには150万人の弁護士がいるが、その多くが週に20時間以上を法的事務に費やしており、ブラジルの GDP の1.5%が司法制度に費やされているという。業務の自動化が求められる中、Inspira は法務の自動化を進め、2022年にリーガルリサーチエンジンとナレッジマネジメントシステムをローンチした。

Image credit: Inspira

Inspira はコパイロットを活用することで、弁護士の仕事のうち、自動化可能なタスクを受け持ち、弁護士の仕事の効率を10倍向上させるロードマップを描いている。法律事務所や企業など、B2B セグメントをターゲットとし、法曹界と強固な関係のある法科大学院の協力により、大手法律事務所の75%や大手銀行の40%が既に Inspira の顧客となっている。顧客数は100社以上で、NPSは91、プラットフォーム上でアクティブなユーザ数は4,000人以上に上る。南米初のリーガル・ユニコーンを目指す。

Kinderpedia(ルーマニア)

Image credit: Masaru Ikeda

Kinderpedia は、学校と保育所向けのコミュニケーションと管理のためのデジタルツールを提供し、保護者の教育への関与を向上させ、学校と家庭の信頼関係を築くことに焦点を当てている。教師の管理時間を削減し、学校管理者が全体の活動を把握できるようにする。すでに500以上の有料教育機関が利用しており、年間経常収益は100万ユーロに達している。教師はモバイルで出席を取り、生徒を採点し、課題をスケジューリングし、必要に応じてビデオ会議を行うことができる。

Image credit: Kinderpedia

低学年の生徒に関しては、数回のタップで最新情報を保護者と共有することができ、保護者は子供の活動を把握できる。保護者にとっては、学校からの請求書もワンタップで支払い可能だ。また、アプリには学習進捗管理モジュールを備わっており、教師は子供たちの発達を評価し、独自のカリキュラムに基づいてレッスンプランを立てることもできる。Kinderpedia は現在、ヨーロッパと中東でのプレゼンス拡大に向け資金調達しており、ユーザフィードバックを重視して日々の活動を向上させている。

Cognimate(アラブ首長国連邦)

Image credit: Masaru Ikeda

脳卒中は世界的な問題で、WHO(世界保健機関)によれば4人に1人が一生のうちに一度はかかるとされている。しかし、従来のリハビリシステムは崩壊している。高額な治療費、臨床医の元に通う手間、効果があるかどうかわからない自宅での反復練習などが主な原因だ。Cognimate は、特別に開発した IoT グローブと、それが連携するゲームを開発し、人々がやる気を維持しながら自宅でリハビリし続けられる方法を開発した。

Image credit: Cognimate

世界中の多くの病院で臨床実験したところ、従来の治療法に比べ、はるかに効率的で人件費を節約できることがわかった。また、理学療法士の不足により、患者は本来必要な200回のリハビリのうち10回しか受けられないのが現状だが、Cognimate の導入により、一人の理学療法士が同時に8人の患者に対応できるようになり効率も向上した。脳卒中患者以外にも、小児脳性麻痺、アルツハイマー病、パーキンソン病、他の身体的外傷からの回復を目指すリハビリにも導入され始めた。

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する