東急アライアンスプラットフォームが2022年度のデモデイを開催、スタートアップ5チームが共創事業をピッチ

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Image credit: Masaru Ikeda

東急(東証:9005)は14日、都内で同社のスタートアップ共創プログラム「東急アライアンスプラットフォーム(TAP)」2022年度の最終審査会を開催し、東急グループとの事業共創に至った5社が登壇した。

7年目を迎えた TAP は、東急グループのリソースを活用し、スタートアップにテストマーケティングの機会を提供するのが特徴。2018年度からは締切を設けない通年募集、適宜共創を検討するという体制となった。2020年度からは、東急グループとの事業共創を前提とせず、東急グループにとっての全くの新領域も採択の対象となった。グループ傘下29事業者(22社)17領域が参加している。

2021年には、東急アクセラレートプログラムから東急アライアンスプラットフォームにリブランドした。第1期からの通算での応募累計992社、うち PoC を実施した件数は累計103件、事業化や本格導入が36件、事業提携や資本提携を結んだのは7件に達した。2022年度に新たに追加された協業件数は20件。14日はその20件の中から共創内容が具体化した5社が登壇した。

最終審査会では、新規性、親和性、成長性、実現可能性の4つの観点での定量評価に加え、審査員のディスカッションによる定性評価も加え審査され、その結果、各賞が贈られた。今回の最終審査会で審査員を務めたのは以下の方々だ。

  • SBI インベストメント CVC 事業部長 加藤由紀子氏(外部審査員)
  • ポーラ・オルビス ホールディングス 総合企画室 コーポレートベンチャーキャピタル担当 岸裕一郎氏(外部審査員)
  • デロイトトーマツベンチャーサポート Morning Pitch 運営統括 永石和恵氏(外部審査員)
  • 東急 代表取締役社長 髙橋和夫氏(審査員長、社内審査員)
  • 東急 執行役員 フューチャー・デザイン・ラボ管掌 東浦亮典氏(社内審査員)

なお、YouTube でイベントを鑑賞した一般参加者の投票結果により、オーディエンス賞が贈られた。スタートアップとの取り組みが評価されるベストアライアンス賞は、東急モールズデベロップメントに贈られた。

【東急賞(最優秀賞)】【オーディエンス賞】クラダシ × 東急モールズデベロップメント

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賞金:109万円+20万円

クラダシでは、さまざまな理由により通常の流通ルートでの販売が困難な商品を協賛価格で買い取り、 「Kuradashi」上で販売することでフードロス問題に取り組む。Kuradashi のサイトには、各商品ごとに割引率と訳ありの理由が明示されており、社会貢献活動団体に寄付できるボタンも備えられている。

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これまでにユーザ44万人、食品を提供する企業パートナー1,200社を獲得。食品の EC 化率は3.77%(2021年現在)と低く、まだリアル店舗の存在感がある。クラダシでは東急プラザを含む東急沿線7カ所で、のべ62日間にわたりポップアップストアを展開した。5月下旬、Kuradashi の常設店舗をたまプラーザテラスにオープンする予定だ。

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【渋谷賞(優秀賞)】アジラ × 東急セキュリティ

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賞金:42万8,000円

アジラは、行動認識 AI による24時間365日モニタリング機能を提供する。すでに設置された防犯カメラにアジラの処理サーバを接続するだけで、喧嘩・暴力、転倒、ふらつき、長時間滞留、侵入などを検知し、人に通知することができる。普段の行動パターンから逸脱した行動を違和感行動として捉えられる技術を特許取得しており、事件や事故を未然に防ぐ仕組みとして活用可能だ。

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AI がこれらの状況を検出すると警備員に通知し、警備員はいち早く現場に駆けつけることができる。東急渋谷駅での試験導入を経て、今後、複数拠点に導入することが決まっている。小売業には万引き予兆を検出する機能をリリースする予定。今後、鉄道駅をはじめ公共施設向けに白杖・車いすや迷子の検知機能、小売業向けには動線分析や棚前分析などマーケティング機能も提案していく。

【二子玉川賞】ノウンズ × 東急エージェンシー

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賞金:25万円

ノウンズは、消費者ビッグデータ分析 SaaS を開発。データは多く収集しているものの、それを解析・活用できていない企業に対し、DaaS(Data as a Service)ソリューションを提供する。同社では「Knowns」アプリを通じて、消費者から月間4,000万件に及ぶさまざまな領域のアンケートデータを生成、企業は「Knowns Biz」で収集されたデータを元に簡単な操作で多彩な分析が実現できる。データを集めるよりも、扱えるようにすることに主眼を置いたサービスだ。

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東急エージェンシーは、クライアントのブランド成長を通して事業成長に並走する企業に進化したいとの狙いから、Knowns の導入により、クライアントに対し、より高度でインタラクティブな提案が可能なデータ分析サービスの開発を狙った。2022年12月から PoC を実施しており、協業して開発中の新サービスは今年5月〜6月にローンチする見込みだ。ノウンズでは、東急グループが持つ、リテール、交通、住生活などのデータを収集・分析することで、東急グループ企業各社のビジネスを進化させたいと意気込む。

ノウンズは、Incubate Camp 13th にも参加していた

【SOIL 賞】SUSHI TOP MARKETING × 東急電鉄

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賞金:10万円

SUSHI TOP MARKETING は、NFT を使ったマーケティングに特化したスタートアップだ。NFT を簡単に作成・配布・受け取りが可能な SaaS「NFT Shot」を展開している。東急社内では NFT を活用するプロジェクトが推進されており、3月18日に予定されている東急新横浜線の開業を記念し、NFT を発行・無償配布し新たな体験価値を提供する。

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具体的には、新横浜線開業にあたり、コアな乗客や鉄道ファンに対し、オンラインとオフラインの両方で4種の NFT を配布する。配布された NFT を持っているユーザは、東急電鉄の NFT 特設サイトで、9000系電車車両を回して遊んだり、アナウンスを楽しめたりする。東急沿線の回遊性を高める効果も期待する。

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【SOIL 賞】AXELL × 東急 社会インフラ事業部

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賞金:10万円

謎解きは、屋外を巡りながる謎解きする「周遊型」と、電車や廃病院から脱出するゲームを楽しむ「施設型」の2種類に大別される。国内だけで400億円市場、中国では2,000億円市場、そして、2023年度には5,000億円以上に成長する規模だ。AXELL では、AR や IoT を謎解きに活用した「TRIAD 謎解き」を開発・提供している。

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東急では創業100周年を記念して、謎解きをフックに新しい客層を獲得し、沿線回遊を促したい意図があった。今回の共創では謎解きを目的とした移動需要の創出に成功、東急グループの発展の歴史を伝えられたほか、地方自治体への提案や導入の事例も生まれた。デジタル乗車券との連携や顧客データのフル活用などにより、さらなる体験価値の提供を目指す。

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