スポーツを「投資を受けられる」ビジネスに育てる/琉球アスティーダ早川代表 × ACV唐澤・村上(2)

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を取り合い、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャスト・シリーズです。旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

ポッドキャストで語られたこと

  • 設立から3年「Tリーグ優勝」できたワケ
  • スポーツを「投資を受けられる」ビジネスに育てる
  • 圧倒的な多業種展開の秘訣
  • トークンコミュニティ運営に重要なこと
  • ファンタジースポーツへの期待と苦労
  • トークンホルダーを育てる努力

スポーツを「投資を受けられる」ビジネスに育てる

唐澤:スポーツは協賛対象にはなるんですけど、投資対象にならない。我々もお客さんと一緒にスポーツのビジネスを検討したり、新規事業として検討したりしたことがあるんですが、どうしても投資や事業の対象になりづらかったんですよね。

運もありますし、選手個人の事情に大きく影響される部分が大きいのかなと思っていたんですけど、早川さんのお話を伺っていると、それ以前にガバナンス(内部統制)だということですね。経理財務のディスクロジャー(情報開示)すらできていないので、それをやるだけでも、他のものと同じ評価判断の土俵に乗るでしょうし、これが大事ですよね。

早川:当たり前のことは当たり前にやって、しっかり適正な循環モデルでやっていれば、赤字とかも大局的にはどうでもいい話かなと僕は思っています。適正な成長性と適正なビジョンとミッション、またパーパスを持って我々は事業に取り組んでいます。

スタートアップと同じだと僕は思っていて、これだけ掘っていかないと当然高くジャンプできない。ビジネス感覚を持ったスポーツチームというのを増やしていく、それが僕は非常に重要かなと思って取り組みをしています。

唐澤:現状のままのステータスじゃなくて、掘るという話があったと思うんですが、アクセルを踏んで投資して、その後にリターンに繋げていくという考え方が多分普通のスポーツチームだとできないってことですもんね。協賛金だけでは。

早川:そうなんですよ。我々はスポーツ×飲食、スポーツ×ジムのような、たくさんのところで売り上げを少しずつ伸ばしていっています。何もしなければ黒字になるけれど、現状維持はつまらないと僕は思っていて。それだったらアグレッシブに動いて、スポーツ業界の歴史に残るような仕事をしたいと思ったので、我々は今さまざまな取り組みをさせていただいてます。

アスティーダのサイトにはコラボしている飲食店の情報が並ぶ(イメージクレジット:琉球アスティーダサイトより)

企業の組織とスポーツチーム、強くするための共通点

唐澤:1年目は負けまくっていたけれども、3年目、最後は勝っちゃった(国内リーグ優勝)ということですが、何か工夫されたことはありますか。

早川:最初、卓球のことを全く知らなかったので、他のチームの選手も含め、さまざまな方とごはんを食べに行って、本当に僕は日本一のクラブチームにしたいんだけど、卓球はどうやったら勝てるんだという話を聞きまくりました。

それでチーム構成や監督を2年目で大きく変えたんです。監督も変更しましたし、選手も大幅に入れ替わりました。これで2年目に2着(2位)になって、ファイナル(決勝)に進出したんですが、コロナで中止になって3シーズン目の選手を補強しました。

しかしながら僕が常日頃言っているのは、我々は卓球という日本人の体格ににあったもので世界を獲りに行くんだということ。「夢への道を拓き、明日を照らす光となる(ミッション)」「だれもが夢をあきらめない社会をつくる(ビジョン)」「夢に向かって共に闘い、実現する/面白くて、心を揺さぶる瞬間がある/志を胸に、逆境に立ち向かう力が湧く/人として魅力ある自分に成⻑できる(バリュー)」——これらを明確に選手に共有させていただいています。

世界を獲りに行くということをしっかりとミッション、ビジョン、バリューで示している中で、日本国内のリーグで優勝できないというのはあり得ない話であって、3年目で優勝したときは、相手側に私の大学の後輩でこの前引退した水谷隼選手、今はうちに来てくれている張本智和選手がいたんです。実は(試合相手の)東京のチームにいたんですよね。

唐澤:張本選手は琉球アスティーダのイメージが強すぎますが。

早川:実力的にいったら絶対に勝てないだろうという状態ではあったんです。しかしながら、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスが浸透していって圧倒的なチーム力で勝ったと言われていますし、そう思っています。

ある一定の団体戦の中で、「相手がどうであろうと絶対チームのためにやりきるんだ」「チームのために優勝するんだ」「絶対チームのメンバーとやりきるんだ」という思いが3シーズン目は全く違った形で取り組めました。

選手の実力というよりも、チーム戦であれば、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスの共有をして、自分がどうあるべきなのかということを常に選手に伝えていくというのは重要な気がします。

唐澤:そこが一つ一つの日々の行動とか、さらには試合のパフォーマンスにもじわじわと効いてきたってことですよね。

早川:ベンチの雰囲気とかも全然違うんですよ。点数が入るたびの表情とか、他のチームとも明るさが。我々「おもしろ楽しく……やりきり超MAX」というスピリットを挙げているんですが、リーグ戦が後半になってくると熾烈な競争になっていきます。レギュラー争いとかも熾烈になっていく中で、チーム一丸となっておもしろ楽しくチーム力で勝っていく。会社のマネジメントの当事者意識を持たせるというのと同じだと思いますね。

唐澤:我々も企業さんのお手伝いする上で、わかりやすく伸びている企業の社員というのは、先ほど早川さんがおっしゃったような雰囲気があって、力が発揮され、更にそれが成長に繋がっていく、ポジティブな循環が実現できているんですよね。だからそこは通ずるものがあるなと思いましたね。

早川:企業の組織を強くするというのと、チームを強くするというのは共通の部分があると思います。

唐澤:早川さんは、次はどこかの企業でやっていくみたいな話があるんですか。

早川:僕は力不足なので、さまざまな皆さんにお支えをいただいて、なんとか次の市場を目指して頑張っています。ぜひ御社のお力添えをいただければと思います。

次につづく:圧倒的な多業種展開の秘訣/琉球アスティーダ早川代表 × ACV唐澤・村上(3)

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