LinkedInが開発開始からわずか3ヶ月でChatGPTツールを公開できた理由

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via Flickr by “A Health Blog“. Licensed under CC BY-SA 2.0.

LinkedIn が最近リリースしたジェレネーティブ AI ツール群の開発は、わずか3ヶ月で完了したとエンジニアリング担当副社長兼データ・人工知能(AI)責任者の Ya Xu 氏が VentureBeat のインタビューで答えた。

ChatGPT や GPT-4 などの OpenAI の最新 GPT モデルや、いくつかのオープンソースモデルに基づいて、エンジニアリングチームや製品チームが多くの変更を実施したことを考えると、このタイムラインは LinkedIn のような大企業にとって「前例のない」ものであったと彼女は述べている。これらには、LinkedIn のプロフィールのためのジェレネーティブ AI による共同記事、仕事の説明、パーソナライズされた文章の提案などが含まれる。

例えば、彼女のチームはわずか1ヶ月で求人情報を自動生成し、ライブトラフィックを提供できるようになったと説明する。目標や目的を共有した機能横断的なチームがカギになると彼女は付け加えた。「1日20時間働くとか、遅くまでオフィスに残るのではなく、仕事を成し遂げるために重要なことに集中する」環境を作ったのだ。

LinkedIn は Microdsoft の傘下にあるため、Xu 氏は「このテクノロジーの未来を先取りして見ることができる最前列の席」を手に入れたという。そのため、LinkedIn の CEO Ryan Roslansky 氏や他の同僚とともに、Xu 氏は昨年秋、ChatGPT やその他の GPT モデルが Linkedin のメンバーや顧客により多くの経済機会をもたらすことができるかを想定して迅速に動き出していた。

LinkedIn が優先したのは、エンジニアリングの哲学

Ya Xu 氏

Xu 氏はチームが初期に優先したのは、「成熟した最終製品を作ることよりも、探求することに根ざしたエンジニアリング哲学」であったと語る。適切な機能や体験の成熟は時間をかけて行われるものだが、興味を持ったすべてのエンジニアやプロダクトマネージャーの手にジェネレーティブ AI 技術を渡すことで、探求を促したと彼女は説明する。

その探究心は、OpenAI モデルや Hugging Face のオープンソースモデルにアクセスできる LinkedIn Gateway を作り、さらにエンジニアが OpenAI などの高度なジェネレーティブ AI モデルを使って Linkedin データを探索できる LinkedIn の Generative AI Playground を提供することによって後押しされた。また、LinkedIn の過去最大規模の社内ハッカソンにはエンジニアは数千人集まった。

さらに、LinkedIn の全従業員は、プロンプトエンジニアリングの方法や、モデルが持つ潜在的な問題や限界など、大規模言語モデルの仕組みについて理解を深める必要があったと Xu 氏は述べる。

我々は、全社的なミーティング、ランチ&ラーンセッション、AI 開発や研究開発に深く関わる人へのより深い教育など、さまざまなレベルで教育を提供した。(Ya Xu 氏)

協調的であることも、ジェネレーティブAIの統合とサポートに大きな役割を果たした。

協調的な文化があるため、異なるチームがリソースを共有することを奨励した。(Ya Xu 氏)

特定のジェネレーティブ AI モデルにアクセスできる開発者の数がキャパシティ的に制限されていた時代に、彼女は迅速に開発できるようにした。

ノルマ、アクセス、プロンプトのパターン、その他のベストプラクティスについての学びをチームからチームへ伝え、より良い助け合いができるようにした。(Ya Xu 氏)

速く走ること、でも一緒に走ること

Xu 氏はまた、LinkedIn がジェネレーティブ AI のプロセスにおいて、一元的に行う必要がある領域があることを認識していることを強調した。速く走ることと一緒に走ることの間には常に緊張感があるが、同社は、特に責任ある AIに関しては、チェックとバランスを保とうとしていると彼女は説明した。

たとえこれがチームのスピードを少し落とすことになったとしても、我々は非常に思慮深くある必要がある。(Ya Xu 氏)

例えば、同社は AI が生成した記事を評価パイプラインにかける。人間がレビューしたアウトプットを反復し、自分たちが満足できるスコアが出るまでプロンプトエンジニアリングを変更するのである。LinkedIn は、どのようなリスクが OK で、何が NG なのかについて、非常に慎重であると Xu 氏は説明した。同社は悪いコンテンツには寛容であり、グレーゾーンのコンテンツにも寛容であり、それを削除するフラグを立てるのは人間の貢献者に依存している。

LinkedIn は、悪質で破壊的な情報を避け、安全で有益なコンテンツのみを許可したいと考えていると、彼女は付け加えた。例えば、彼女は、Microsoft の Bing チャットボットとのチャットの記録を含む Kevin Roose 氏の最近の New York Times の記事を指摘した。LinkedIn は、誰かが爆弾の作り方を教えてくれたら心配するだろうが、タスクを完了する方法について悪いアドバイスを与えるチャット、つまり Roose 氏の場合は彼の結婚についてコメントするチャットは、あまり心配する必要がない。

テクノロジーは研究室の中だけではダメで、人々の前に置かなければならない。そうして、研究室では思いもよらなかったような使い方ができるようになるのだ。しかし、私たちは正しいプロセスを確認する必要があった。(Ya Xu 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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