WalmartもChatGPTで加速ーー副社長曰くジェネレーティブAIは「モバイルと同様のパラダイムシフト」

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Image credit:Walmart Text to Shop

Walmart Global Techの新興技術担当副社長であるDesirée Gosby氏によると、Walmartがウェブサイトとモバイルアプリの新しいインターフェースを展開する中で、この世界最大の小売業者はOpenAIのGPT-4を使った対話型AIを進化させていると本誌VentureBeatの取材に答えた。

VentureBeatとのインタビューで、Gosby氏はGPT-4のようなジェネレーティブAIは、「顧客が我々との対話を期待する方法という点で、モバイルと同じくらい大きなシフトになる」と述べている。

Walmartの支配力を考えれば、同社が世界で最も話題になっている大規模言語モデルを採用することは驚くことではない。VentureBeatは昨年、アーカンソー州ベントンビルに本社を置く同社では、サプライチェーン管理、バーチャルショッピング、検索など、あらゆるところにAIが組み込まれていると報じた

そして今、WalmartはGPT-4を使って、自然言語理解の分野で、これまで以上に大規模な取り組みを進めている。これには、顧客が必要な商品の名前をテキストで入力するか話すことで、Walmartの商品をカートに追加できる「Text to Shop」などの既存のサービスを強化することも含まれている。Gosby氏はVentureBeatに、「私たちは5年ほど前から、Walmartの各チームがチャット体験を構築できるようなプラットフォームを運用しています。私たちは、小売業に特化した自然言語理解能力を構築することに注力しているのです」と語っている。

大規模言語モデルが土台となり、その上にWalmartが商品に関する情報や顧客がどのように対話したいかという知識を用いてモデルを構築していく、と彼女は説明した。

約二十種類のチャット型AI体験

同社は現在、100万人のWalmart社員が顧客ケアのためにやり取りするチャットボットを含め、自然言語理解機能のプラットフォームを使用して、20種類近い体験を提供している。GPT-3やGPT-4のような大規模な言語モデルによって、Walmartはタスクベースのチャットボット(オンラインショッピングカートに商品を追加すること)を超えて、自然言語で必要なことを表現できる質問ベースのチャットボットに移行し始めている。

対話型AIに関して、Walmartの目指すべきところはChatGPTのような経験やモデルを活用して、顧客が求めているものを予測できるようになることだとGosby氏は言う。ただ一方でGosby氏はこのアイデアが「不気味の谷」にあることを認めており、そのためWalmartは安全かつ責任を持って実装する方法を考えなければならないだろうとしている。

「もし、あなたの息子さんがこの夏キャンプに行くことになっていて、アレルギーがあることがわかれば、このアレルギーの薬をあなたのカートに追加することができます。あるいは、キャンプに備えるためにお勧めしたいものはこちらですと勧めることができるようにしたいのです」。

GPT-4以外の大型言語モデルも使用

また彼女はWalmartがGPT-4だけでなく、他の大規模言語モデルも使用していると指摘する。(Walmartの取り組みは、2018年にリリースされたGoogleのBERTモデルを使用することから始まったとGosby氏は述べている)「急速に変化しているので不必要に自分たちを閉じ込めたくはないのです」と、彼女は言う。しかし、ChatGPTの最大のイノベーションとシフトは、消費者に提供する体験だと彼女は説明した。つまり質問をすると、会話のような感覚で生成された答えが返ってくるのである。

「このような経験を構築するチームの手にそのようなツールが渡ることは、非常にエキサイティングなことです。何が可能なのかを知ることができれば、お客様にとって飛躍的なことにつながると考えています」。

ジェネレーティブ(生成)AIが切り開く可能性

Gosby氏は、ジェネレーティブAIが、新たな顧客体験の提供や改善、社内プロセスや生産性の向上など、さまざまな可能性をもたらすと指摘する。

「画像のジェネレーティブAIのようなもので、それを使って商品の3Dバージョンを生成したり、少なくともその道の一部を切り開いて、手動プロセスの一部を取り除くことができるかもしれません」と彼女は可能性を語りつつ、一方でWalmartは著作権データに関する問題には細心の注意を払う必要があるとも付け加える。

「しかし、Walmartは多くのデータに恵まれており、それを使って学習し、これらのモデルを活用し始めることができるわけです。また、ジェネレーティブAIのマルチモーダルな可能性(テキストとイメージの両方に対応)は、心躍るものだ」とGosby氏は言う。その上で「私にとってエキサイティングなのは、これらのものをすべて一緒に使うこと、どのように変幻自在の体験を作り出せるか、ということです。これらの異なるモダリティを組み合わせることなのです」と語った。

WalmartがChatGPTのプラグインを作るかどうかという質問に対してGosby氏は「何も考えていないわけではない」としつつ、適切な種類の体験を、適切な方法で実行するとだけと答え、「最終的にはお客さまが何を望んでいるのかです。もしそれがお客様にとって有益であれば、Walmartにとっても良いことだと思います」と締め括った。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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