メール作成から文章リライトまで——生産性向上アプリであふれ、パーティーさながらのジェネレーティブAI業界

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Microsoft の Bing ボットのデビューや Google の Bard のローンチなど、検索 AIチャットボットの盛況が一段落する中、ジェネレーティブ AI で最もホットでトレンディなパーティーがビジネス生産性アプリになるとは誰が予想できただろうか。

自動運転車やロボット犬、AI を活用したメタバースの未来が注目されてきた中で、何年もオタク的で仲間外れな AI に追いやられていたジェネレーティブ AI のメール作成、ブログ作成、コピーパワーが人気になっている。そして、スタートアップからビッグテックまでのトップ企業が、ジェネレイティブ AI パーティーに参加するためのツールを開発している。

GrammarlyGo が登場

Image credit: Grammarly

サンフランシスコに本社を置くGrammarly は、ジェネレーティブ AI の波に遅れて参入した。ブラウザ拡張機能を持つデジタルライティングアシスタントは、AI 分野の初心者とは言い難いが、同社は3月9日、GPT を搭載したチャットボット「GrammarlyGo」を発表した。新しいサービスは、4月上旬にベータ版として3,000万人の顧客と、Grammarly Business を使う50,000チームに展開される予定だ。

GrammarlyGo は、「エンタープライズ級」と呼ぶセキュリティ保護機能を売りにしており、ユーザが文章を作成したり、メールに返信したり、好みの文章調子を設定したり、アイデアを出したり、提案を得たりするのに役立つクイックプロンプト(AI への指示文パターン)を提供している。

Grammarly のグローバル製品責任者 Rahul Roy-Chowdhury 氏は、今週行われたデモで VentureBeat に「私たちはとても興奮している」と語った。

生産性向上アプリであふれるダンスフロア

しかし、GrammarlyGo はハイテンションな DJ が観客を盛り上げる、満員のジェネレーティブ AI ダンスフロアに足を踏み入れたことになる。そして多くの場合、パーティーの参加者は皆同じ服を着ており、ChatGPT のようなボット、愛らしい名前、最新で最もフレンドリーな UX だけを備えている。

例えば、サンフランシスコのスタートアップ Writer は、小さいながらも強大な存在感を示している。企業向けに特化し、UnitedHealthcare、Accenture、Intuit、Spotify などの顧客に恵まれている。ビジネス向けに構築されたフルスタックのジェネレーティブ AI プラットフォームだと自称する CEO の May Habib 氏は、Writer が2月に OpenAI の GPT-3 や ChatGPT といった LLM(大規模言語モデル)ではなく、エンタープライズ対応のジェネレーティブ AI 向けに設計された3つの独自の LLM を発表した主張する。

Image credit: Writer

Writer は、GrammarlyGo などと同様のジェネレーティブな AI 機能のほか、編集ルールを強制してメッセージをオンブランドに保つ(〜らしい、〜っぽい表現にすること)機能も備えている。さらにHabib 氏によると、Writer は最近、Uber をクライアントとして契約することで、Grammarly や、OpenAI や Jasper といった競合他社を「正々堂々と」打ち負かしたという。

チームメンバーにはこう話した。多くの点で我々が初になるだろう。Uber の CIO の行くところ、皆の行くところだから。(Habib 氏)

Jasper、HubSpot、Salesforce の動向

Jasper といえば、テキサス州オースティンを拠点とするジェネレーティブ AI の寵児で、先月、独自のジェネレーティブ AI パーティー(カンファレンスのこと)を開催したが、企業の生産性向上という栄誉に眠っているわけではない。数週間前に Jasper for Business をリリースし、深刻なダンス(おっと、アプリのこと)バトルに発展する可能性がある。

そして3月、2つのCRMリーダーが営業とマーケティングの側面からパーティを開始した。HubSpot は、HubSpot 独自の技術と OpenAI の ChatGPT、DALL-E 2、Google Sheets や Google Slides などの Google Docs アプリケーションを組み合わせた ChatSpot を発表した。Salesforce も負けじと、Einstein GPT を発表し、コンテンツの自動生成、メールへの返信、マーケティングメッセージの作成、ナレッジベース記事の作成などを支援し、顧客体験の向上に貢献している。

ビジネス生産性の分野では、他の多くのジェネレーティブAIのプレーヤーもその勢いに乗っている。AI21 Labsの人気製品「Wordtune」は、1月に発売された新バージョン「Spices」で12種類のキューを選択することで、文章を追加・強化するためのさまざまなテキストオプションが生成されるようになった。

パーティーはまだ終わらない。Canva は12月に新しいジェネレーティブ AI 搭載ツールを提供した。OpenAI のライバル Cohere AI を搭載した「Hyperwrite 」は、あなたのメールを乗っ取ろうとしている。スタートアップの Typeface は、ステルスから姿を現した。

口調の統一や内容を明瞭化のため、文章を書き直してくれる「GrammarlyGo」

ビッグテック各社の動向

Microsoft は、同社のエンタープライズ製品「Dynamics 365 Suite」向けに現在テスト段階にある Copilot を発表し、独自のジェネレーティブ AI CRM ソワレを展開した。Copilo は顧客サービス用のチャットボットを構築するほか、マーケティング担当者がキャンペーン用の新鮮なメールコンテンツを生成するのにも役立つ。

さらに、3月16日には、CEOの Satya Nadella 氏とモダンワーク&ビジネスアプリケーション担当コーポレートバイスプレジデントの Jared Spatar o氏が、顧客向けにバーチャルイベント「The Future of Work with AI」を開催し、「AI がすべての人と組織のために全く新しい働き方を実現する方法を共有する」と言葉にした。Bing のチャットボットが Word に登場するのか? Outlook か? PowerPoint?昔ながらの Clippyハンプティダンスをするのか?

Google はもちろん、ジェネレーティブ AI の祭の早い時間帯に眠りに落ちてしまった。しかし、Bloomberg は先ごろ、新しい社内指令により、Google では数カ月以内にジェネレーティブAI を同社の最大の製品すべてに組み込むことが求められていると報じた。Google Docs はどうだろうか? パーティーの始まりだ!

最後に、隅の方にいる OpenAI と ChatGPT である。このパーティーではクールすぎて、「API を見てみてください。来週末にハッカソンがありますよ」と、ニヤニヤしながら賞賛する人を振り払っている。

ジェネレーティブ AI のパーティーには、誰でも参加できる余地がある

Grammarly の Roy-Chowdhury 氏によると、ジェネレーティブ AI の生産性向上 パーティには、誰もが参加できる余地があるという。

私は、この分野への関心を歓迎するし、それは素晴らしいことだと思う。健全であり、消費者にとっても素晴らしいことであり、我々の気を引き締めてくれるものだと思う。

とはいえ、あらゆるアプリケーションで Grammarly にアクセスできるブラウザ拡張機能や、AI システムを責任を持って導入してきた歴史など、Grammarly が突出しているとする部分を指摘した。

最後に、多くのユーザが Grammarly を快適に使っているという事実もある。いわば、パーティーよりも「Netflix and chill(テレビを見ながらくつろぐ)」を好む人たちのためである。

いずれにせよ、ジェネレーティブ AI のビジネス生産性向上パーティーがしばらく盛り上がることは間違いない。しかし、専門家によれば、クールキッズたちはいずれ、企業における真のジェネレーティブ AI のキラーユースケースであるナレッジマネジメントに移行するという。

だから、今シーズン、最もホットな AI パーティーに飽きたとしても、心配しないでいただきたい。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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