スタートアップのM&Aで考えたい「失敗」のこと|日本型大企業とスタートアップ、協業成功のヒント #3

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本稿はコーポレートアクセラレーターを運営するゼロワンブースターが運営するオウンドメディア「01 Channel」からの転載記事

前回からのつづき)01Booster CONFERENCE 2022のラストセッションでは「日本の事業創造、次の世界へ」と題して、日揮代表取締役社長執行役員の山田昇司氏と、ストライク代表取締役社長の荒井邦彦氏の対談セッションをお送りしました。日本型CVCとはどうあるべきか、大企業とスタートアップの取り組みを語った前回に続き、話題はより具体的なM&Aの現実に移っていきます。

——荒井社長、スタートアップとのM&Aやスタートアップとの関連を広めるために、その他に必要なことはありますか?

荒井さん:マインドのあり方も大きな要素だと思います。つい、1つの出資、あるいは1つのM&Aで成功/失敗をジャッジしてしまいがちです。「あの出資、やったけど全然ぱっとしない間に減速してしまったじゃないか」とかね。1件で考えるのではなくて、集合体で考えることが必要です。例えばGAFAも数多くのM&Aを実施している反面、たくさん失敗もしていますが、それをものともしていないわけです。要は、失敗したものはそこで止めてしまえばいいだけですから、成功したもののみを伸ばせばいいと。1件1件で判断するのではなく、「全体として上手くいけばいい」という考え方に切り替えればいいんだと思います。

山田さん:なるほど、確かにそうです。

荒井さん:例えば、日揮さんが投資されている核融合発電なんかは、すごく夢がある話だし、我々の生活がものすごく変わる可能性を秘めていると思うんです。ただ、スタートアップが単体で成し遂げるのは至難の技で、日揮さんのような大資本が、技術と人材があるスタートアップとタッグを組んで初めて、育っていくような事業だという気がしますね。

——日揮さんはCVCを始めて2年目が経過したということで、ある意味「スタートアップ企業に対する目利き力」が培われたのではないでしょうか?

山田さん:これまでさまざまなスタートアップを見てきましたが、小さいながらも役割分担がしっかりしているスタートアップは、成功するべくして成功しているという印象です。お金を集めてくる人と、技術に特化している人、そうした人がペアになってやっているスタートアップ企業、これはやっぱり推進力がありますよね。目利き力が磨かれると同時に、スタートアップからも学んでいるといった感じです。それと、社内でCVCを運営するチームは次世代の経営者になれるような人たちを入れないとだめですね。規模は小さいとはいえ経営ですから。

——とはいえ、歴史の長い大企業であればなおさら、企業文化をがらっと変えることは難しいことだと思うのですが。

山田さん:失敗を認める文化は大切ですよね。大きな企業って簡単には失敗できないんです。GOサインを出すまでにたくさんの関門があって、それを通過してやっとスタートできるので、簡単に失敗はさせられない面もあるのですが。やっぱり、失敗を認める文化っていうのはスタートアップさんとは融合しなきゃいけないところだと思います。失敗を恐れたらチャレンジもしないということですから、ある程度は失敗を容認しないと、新しいことは起こらないような気がしますね。

荒井さん:M&Aの仲人の立場である我々からしてみれば、正直なところ、上手くいった場合は仲介業者として誇りになるけれども、失敗した事例は不名誉なんですよね。結果として上手くいくものにばっかり目がいくようになってしまう。「失敗してもいい」とは口が裂けても言えないのですが、失敗を恐れず「とりあえずやってみる」というのは必要なんじゃないかと思います。適当にやって失敗するのは咎められなくちゃいけないけども、一生懸命やった結果、失敗することは容認してもいい。そういう企業が1社、2社…と増えていけば、どんどんと他の企業が後を追って成功事例が増え、日本全体としてすごく大きな力になっていくと思うんです。

——ありがとうございます。では最後に、失敗を恐れずに挑戦する企業さんへ、ぜひメッセージをお願いします。

山田さん:日本の企業が変わるために何が必要か? 1つの手段として、スタートアップと上手く付き合って、彼らの持っている技術を自分たちに取り込んでいくのは重要な戦略です。特に大手企業が先導を切って実行すれば、日本全体がもっとイノベーティブになっていくだろうと思います。ですから当社も、これからもどんどんチャレンジしていきたいと思います。

荒井さん:ぜひ、失敗を恐れずに事業創造をしていく会社が増えていってほしいですね。私は日本の将来をそれほど悲観していないんですよ。1社、2社と成功すれば、みなさん追随していくんで、ぜひ皆様、山田社長のようにファーストペンギンとなっていただいて、未来に続く方を増やしていってほしいです。我々M&A業界でもそんな機会を増やしていくような活動もしていかなくては、と思っています。ありがとうございました。

——どんどんトライしていこうと、前向きな気持ちになりました。山田社長、荒井社長、本日は本当にありがとうございました。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
本セッションのフルバージョン動画は、以下にてご覧いただけます。

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